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ドクターマルスと365日 第7話 神

 そこは薄暗いどこかの地下。
 怪しい薬品、怪しい機材が大量に置かれたどこかの研究室。
 そこにひとりの男性と少女がいる。

「おーい、ドクター……ドクター?」

「ああ、パパ、いらっしゃいロボ」

「ああ、アリサ。優香は?」

 いつものようにドクターマルスこと丸栖優香の研究室にもぐりこんできたのは作者だった。
 すでに日常的にやってくるようになった作者はいつものようにドクターをからかうのだろう。
 だが、今回に限ってはそのドクター姿が見えない。
 一体ドクターはどこへ言ったのか、キョロキョロと薄暗い研究室の中を作者が眺めていると。

「ママなら、今は出かけているロボ」

「出かけている? どこに?」

「ダークプリズンの心臓部ロボ」

「心臓?」








 アークスシティのずっと地下深く。
 アンダーグラウンド世界とも言うべきそこにダークプリズンの本拠地はある。
 光の届かぬその世界、蝋燭の光が薄暗くその場を照らす。
 ドーム状の部屋、その中央に玉座があり、そこにひとりの青年が座る。
 そして、その隣には仕立てのよいスーツを来たガタイの良い初老の男性。

 そこは、ダークプリズンの玉座の間……通称『闇の心臓』。

「ドクターマルス、呼ばれた理由はわかっていような?」

 低い重厚感のある男の声が密閉された空間に響き渡る。
 玉座の隣に佇む男、ダークプリズン最高幹部にして神の右腕『オーギュスト』、その人だ。
 玉座には非常につまらなさそうに自分髪を指で弄る神の姿がある。
 ダークプリズンの現人神マスタープリズンだ。

 そして玉座に対面するように一人のか細い女性が立っている。
 丸栖優香こと、ドクターマルス、その人だ。

「デーランから報告を聞いているぞぉ? 貴様何故ダークプリズンの作戦を妨害した?」
 オーギュストの鋭い眼光はまるで突き刺すようであり、ドクターマルスに憤怒の感情を向けていた。
 だが、ドクターマルスもその程度では怯まない。
 まるでばかにするようにその視線を受け流し、神へと進言を行った。

「私はプレートを回収を行っただけである、それを咎めるのならば詳細な情報を知らせなかったデーランに言ってほしいであるな」

 それは海での出来事だった。
 デーランは一切の妨害も援助も許さないことを予めドクターマルスに言っていたが、結果的には彼女はデーランの作戦を邪魔する形となってしまった。

 オーギュストはドクターマルスの言葉を聞くとキッと目付きを細め、ドクターを睨みつけた。

「ドクターマルス……」

「!?」

 不意に神が口を開いた。
 たったそれだけのことなのに隣にいたオーギュストもドクターマルスもまるで心の臓を鷲掴みにされたかの如く顔を青くして固まってしまう。
 神のプレッシャー、それは神気とでもいおうものか、神の言葉を聞くだけでドクターマルスの身を震え上がり、恐怖で体が動けなくなる。

 ゆっくりと……ゆっくりと神は玉座から腰を上げた。
 ゆらり……ゆらりと長い髪を揺らしてドクターマルスの前へと歩み寄る。
 ドクターは動けなかった。
 やがてマスタープリズンの指がドクターの頬に触れる。そのままなぞるようにマスタープリズンは指を動かし後ろ髪へと触れた。
 まるで絶望に打ち砕かれたかのようにドクターマルスは顔を青くしている。
 対してマスタープリズンは虚無感に包まれたかのようだ。

「ドクターマルス、僕は君の実力を高く評価しているよ」
「今回の件……きにしなくていい」

「ッ!?」

 それはある意味不意打ちだった。
 マスタープリズンはゆっくりと腕をドクターマルスの背中へとなぞるように移動させると突然強引にドクターの体を自身に引き寄せたのだ。
 そこからの手際は鮮やかだった。
 開いた片方の手でドクターの首をクイッと上に上げさせると、あとはゆっくりと重なりあう。
 唇と唇が重なりあった。

「……ッン!」

 ドクターから息が溢れる。
 甘い喘ぎ声が密閉された空間に響き、ドクターは身を捩った。
 やがて、マスタープリズンが体を離すと、ドクターは崩れ落ちるように地面に跪いた。
「……っはぁ、はぁ……」

 ドクターの口から神と混ざり合った唾液が口がだらしなくこぼれ落ちた。
 体に力が入らないのだ、まるで生気をうばわれたかのように全身から力が抜け落ちた。 失禁しているのか床が濡れており、腰が抜けているのも分かる。

 まるでゆっくりと犯されたかのようにドクターの顔は女として火照り、紅潮していた。 神の濃厚なくちづけは、どれほど甘美だったというのか、ドクターはわずかに残った理性をなんとか保ちながらゆっくりと立ち上がる。
 だが、その口からはドクターらしからぬ喘ぎ声がうっすらこぼれていた。

「もうよい、ドクターマルスよ、下がれ」

「……はぁ……はぁ……は、はい」

 非常につまらなさそう、そう神は虚無感に包まれている。
 ドクターは必死に体を動かしてなんとか闇の心臓から出るのだった。




「御大将……よいのですか?」

 そう言ったオーギュストだ。
 変わらず玉座の横でそびえ立つ強面の男は、先程の処罰に疑問をいだいていた。

「ドクターマルスはたしかに非常に優秀な科学者ではありますが……それゆえに、制御が効かない」

「気にする必要はないよオーギュスト、それに彼女の頭脳は我々ダークプリズンには必要不可欠……そうだろう?」

「……はっ、その通りであります」

「……ふふ、それに彼女しっかりと働いてくれるよ……そう、しっかりとね」

 ふと、神が微笑を浮かべた。
 神は何を求めているのか? それは誰にも分からない。



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テーマ : ポケモン
ジャンル : ゲーム

ドクターマルスと365日 第6話 ドクターとユウキ

「う~……なんだか頭痛いあるね」

 海へ来て二日目のドクターマルスご一行。
 ドクターは海辺のテラスで潮風に当てられながらぐったりとしていた。
 まぁ、二日酔いという奴だろう。

「はい、ママ酔い止めロボ」

 心配そうに眺めていたアリサは酔い止めの薬と水を持ってくると、ドクターはそれを受け取り水と一緒に薬を飲み込んだ。
 少し気が楽になった気がする、あくまで気がだが。

「ありがとうであるアリサ、でもあんまり人前でママっていうのは勘弁ある」

 アリサにママと言われるのはドクターは別に嫌ではない。
 ただ、人前でそう言われるとどんだけ若作りなんだと思われそうで嫌だった。

「でも、パパは嫌がらないロボよ?」

「それは私が嫌である、ていうかあいつはどこ行ったである?」

 今朝ホテルで目を覚ますと、自室にいた。
 前日はこっそり教会ご一行の部屋に侵入して気がついたらどんちゃん騒ぎに巻き込まれて……そこから記憶は朝まで飛んだ。
 作者とユウキはこの時点で姿がなく、元々神出鬼没なふたりだけに探しはしなかったが正午まで全く姿を現さないのでさすがに少し気になっていた。

「やぁ、やぁやぁやぁ、ドクターマルス君、お久しぶりだね、だね?」

「う……この特徴的な喋り方は」

 ドクターマルスに冷や汗が走る。
 大体においてドクターマルスは人付き合いが悪く、どんな人間相手でも嫌な顔をするところがあるが、今回の相手は特別だ。

「おっ、お~? ドクター、この娘は誰かな、かな?」

 赤い燕尾服を着て、その上からマントを羽織った40代後半の初老男性。
 喋り方が異様に特徴的で、見た目も相まって一度見たら絶対に忘れられない。

「博士、この人だれロボ?」

「あ、これはこれは失礼、吾輩はデーラルと言う、そこにいるドクターマルスと同じダークプリズンの者だよ」

 そう言えばこの男とアリサは初対面だった。
 そう思うと説明するのも面倒だが、ドクターはこのデーラルの説明を始めた。

「ダークプリズンの幹部の一人、通称雷神のデーラル」

「ご説明ありがとう、ちなみにイスパニア出身だ」

「てめー英語使えるんだからスペイン語で言うなである、普通にスペインでいい」

「いや、しかし君とて母国をジャパンとはいわんだろう? 母国は母国の言葉で言うだろう? ろう?」

「はぁ……」

 だからめんどくさい、ドクターはただでさえ深い酔いの後遺症もありこんな面倒な性格の奴を相手するのはめんどうだと頭をテーブルに擦りつけてうなだれていた。

「む? 妙に疲れているね、るね?」

 疲れている……といえば疲れているだろう。
 ぶっちゃけ二日酔に加えて面倒な相手の応対だ、疲れがないといえば嘘になる。

「たまたま遊びにきたわけであるまい? さっさと要件言いやがれであーる」

 ドクターが素っ気無くそう言うと、突然ドクターのもたれるテーブルに書類の束が投げられる。
 疑問に思いながらも、重い腰を持ち上げて書類を手に取るとその内容をパラパラと確認した。
 気になったのかアリサも横から覗いてきた。

「……ほぉ、ダークプリズンの行動予定表であるか」

 それは最初のページでは今年下半期のダークプリズンの行動予定表であった。
 つまらないが一応確認しないわけにはいかないのでひとつひとつ確認するが特に内容の変化は上半期報告書の時点と違いはない。

「まぁ、要点としては二つほどあるがその両方それに書いてある、ある。では、吾輩は忙しいので行かせていただくよ、くよ?」

「さっさといきやがれである」

 オーデンはそう言うと踵を返して海辺の方へと向かっていった。
 姿が見えなくなるとドクターは陰険な顔をして。

「あの野郎こんな糞暑いところで燕尾服とはナンセンスなやろうである」

「博士に言えた義理じゃないロボ」

 たしかにオーデンの格好も真夏の太陽の上では暑苦しくて仕方がないが、ドクターもドクターでいつものように白衣を着ているので十分暑そうだ。

「……ん? 私とオーデンの野郎の作戦内容?」

 ドクターは1ページ1ページをしっかり確認していると、指令書の中頃に興味深い物を見つけた。

「どうしたロボ?」

「オーデンの野郎が今日このバーバラシティで作戦があるらしいである」

 その詳しい作戦内容は機密事項扱いであり、ドクタークラスの幹部格では閲覧不可の内容だった。
 元々ドクターもダークプリズンの幹部ではあるが、各位はオーデンの方が上位であるためこれは仕方がなかった。

(ふむ、バーバラシティはそれほど重要な場所ではないはずだが……まぁいいである)

 ただ、この指令書に書いてあったのはバーバラシティでオーデンの作戦行動に対するあらゆる手助け妨害を禁ずるものだった。
 つまり孤立させて放っておけということ。
 よほどセキュリティの高いミッションなのだとわかる。

「私たちはどうすればいいんですます?」

「アルセウスのプレートの回収が書いてあるあるな」

 アルセウスのプレート、数ヶ月前地球上空でダークプリズンの現人神マスタープリズンとアルセウスの戦いの際、敗れたアルセウスはプレートとともにミレリア地方アークスシティへと降下、プレートをすべて失い現在に至る。

「プレートの回収がダークプリズンに必要なのであるか?」

 気がつけば自身が深酔いだというのも忘れてドクターは真剣な面持ちで書類と面向かっていた。
 プレートの効力はすでに報告されているし、もちろんそれそのものが与える恩恵は大きい。
 しかし、アルセウスのプレートの影響力が大きすぎて、その周囲にまで影響を与えてしまう。
 正直、ダークプリズンが保持するにしても危険性は高いと言えた。
 とはいえ、たしかにアルセウスのこれ以上のパワーアップは危険極まりないといえる。
 しかし一度はあの現人神はアルセウスを倒している、それならば捨ておいても大した問題はないのではないのか?
 ふと、そんな風に考えていると、聞いたことのある声が突然響いてくる。

「絶対反対!! なんであいつらに頼まないと行けないんだ!!」

 ドクターはその声を聞いた瞬間、不機嫌さを顕にした。
 どうしてこういうタイミングで奴らは現れるのか、頭痛が痛くて仕方がないと言う様子でドクターはその声の主達を睨みつけた。

「おめーらうるせーである、つーか何しに来た?」

 その声の主達はトモエとアルセウスだった。
 そう、ついさっきまで考えていた相手だ。
 敵を目の前にして平然としていられる奴はいない、奴は敵……宿敵なのだ。
 だからこそドクターは険しい顔で彼らを迎えた。

「ダーリン、どうしたんだロボ?」

「ああ、今日はちょっとドクターたちに頼みがあってな」

 となりのアリサは気軽に話しかけるが、この関係はなにか間違っている。
 ドクターはさらに目を細めた。
 昨日の時点ならば怒り狂ってトモエに襲いかかっていただろうか?
 だが彼女も馬鹿じゃない、こんな場所で暴れることの無粋さも十分知っている。

「トモエ~、ついに頭が壊れたあーるか? なーんで、敵であるお前らの頼みなんぞ聞かないといけないんである?」

 ドクターはあえて嘲笑った。
 トモエたちの目的は分からないが、所詮は自分もダークプリズンの一員、あえて害なす者に対して義理を立てるつもりはない。

「トモエ、ドクター共に頼む必要などない! 行くぞ!」

 アルセウスも意見はあうのか、トモエの半袖の裾を口に咥えると引っ張っていた。

「まぁまぁ、聞けよドクター。これはドクターにも損な話ではないぜ?」

 しかし、トモエもまた中々に食い下がってくる。
 損な話ではない……という言葉を聞くとピクリとドクターの眉が動いた。
 利害関係を求めてきたか……中々面白い、ドクターはそう考えると少し聞く気になるのだった。
 その様子を見てか、トモエもドクターの表情から何かを感じ取り、更に言葉を続ける。
 「プレートが見つかったんだが取りに行けない。場所を教えるという報酬の代わりに、代価としてドクターの天才的科学力を貸して欲しい」

「ん? おいトモエプレートは……!」

 アルセウスが一瞬なにかを言おうとしたが、途中で口をふさいだ。

「……プレート、ねぇ」

 ……プレート、ついさっき与えられた自分の任務。
 これは好機なり、そう思えるが…。

「……断るある」

「ママ、どうしてロボ?」

 ドクターは手のひらを返して断った。
 さっき指令を効いていただけにアリサはどうしてなのか気になった。

「理由は簡単、誰が好きでトモエとアルセウスに力を貸すかであーる!」

 理由としては当然であった。
 だが、本質としてはあっているものの、細かいことを言えばもっと差異はあるだろう。
 まずひとつにドクターはオーデンが気にかかった。あいつに協力するのは癪だが今回ドクターたちはバカンスできたのだし、下手なことしたくはなかった。
 トモエたちにも積年の恨みはある、これも一因。

「ふん、こちらとしても頼りたくなど無いわ!」

 アルセウスも心底嫌と言う顔だ、よほどドクターたちに頼りたくないのかさっき以上に力を込めてトモエを引っ張った。

「第一、私がプレートを集めるのはお前らにパワーアップされると厄介だからであーる、お前らが集められないのならそれで結構!」

「え……でも指令書には……むぐっ!」

 ドクターは慌ててアリサの口をふさいだ。
 さすがに敵のトモエたちにこちらの作戦概要を伝えるわけには行かない。
 見ると、トモエはドクターの持っている書類に気づいたようで、なにかと覗こうとしている。
 ドクターは慌てて書類を裏返してテーブルに置いた。

「ほらほら、さっさとどっか行けであーる! 今日は見逃してやる!」

「ふん! 言われなくとて! いくぞトモエ」

「……仕方ない」

 ようやくトモエも諦めたようで、アルセウスに引っ張られてトモエはその場を去っていった。

「――ぷはぁ! ドクター本当にいいロボ?」

「癪である……なんか協力するのは癪である」

「……なんというか相変わらず天邪鬼だな」

 アリサの口から手を離すと、突然トモエたちが現れた方とは逆の方から聞き慣れた声が聞こえてきた。
 作者の片割れ、ユウキだ。

 結局のところはドクターの天邪鬼が原因なのは確かだろう。
 利害云々よりドクターにはそちらの方が大切であり、なんというか今は誰にも協力したくないという気分だった。

「ユウキさんはどこ行っていたロボ?」

「ん~、野暮用、ちなみに作者は今日一日は帰ってこれないかもしれないとさ」

「あいつ何やっているあるか」

 どうやら作者は出かけたらしい。
 どうでもいい相手だが、いざいないとなんだか寂しい気がして頭をポリポリ掻きながら空を見上げた。

「ふーん指令書ね」

 ユウキは、若干興味を持ったようでドクターがテーブルに置いた書類を覗き込んだ。

「お前でもみせられないあーるよ」

「そこまで野暮じゃないさ、で……今日はどうするんだい?」

「どうする……あるか」

 二日酔いもあり、あまり物事を考えたくなかった。
 大分気は楽になってきたけど、それでも考えたくないことはある。

「ママ、任務はどうするんですます?」

「かったりぃ~あるなぁ~……」

 本当にかったるそうであった。
 とはいえ、任務はこなさないと自分の居場所がない。

(ふぅん……)

 あまりに面倒そうな姿を見るとユウキはにやりと笑った。
 なにやら、このライアーキングよからぬことを思いついたらしく、早速頭を高速回転させる。

「やめとけやめとけ、俺らバカンスに来てんだし、お前が任務についてもどうせ失敗だ」
「なんであると?」

 ドクターがユウキに食いつく。
 あまりの予想通り反応にユウキは演技含めながらも微笑した。
 そのあまりに人を馬鹿にしたような顔にはドクターもムッとしてしまう。

「おめー本当にムカつくガキだなぁ」

「どうぞどうぞ♪ そんな言葉では痛くも痒くもないし♪」

「アリサ! スパロボ四号機の準備を! 吾輩任務につくある!」

 わかりやすいというかなんというか、ドクターは自分馬鹿にされるとすぐに行動に出た。
 ユウキもユウキだが、ドクターもドクターであるというところだろう。
 だが、アリサは嬉しそうに敬礼して直ぐ様海へと向かった。

「ユウキ! 私が出来る女だということ教えてやるである!」

 ビシッ! と人差し指をユウキにつきつけるとドクターはトモエを探して歩き出すのだった。




「さて……トモエは……いたであるな」

 トモエを探して10数分、ドクターはすぐにトモエたちを見つけた。
 もとよりテラスにはでかすぎるアルセウスの姿を探せばすぐに見つかる。
 ドクターはモンスターボールからむてきんぐを繰り出すと、足を止めてしばし考える。
 最初は普通に声をかけようかと思ったが、それは癪だとムテキングを出し、いやしかしこれはいくらなんでもと否定的に考えながら結局答えはやっちゃう方向に向くのだ。

「むてきんぐ、『でんじほう』」

「ポリ~」

 むてきんぐに『でんじほう』を命令するとそれはトモエたちに向けて放たれた。
 トモエたちは直ぐ様ドクターたちの攻撃に気づいて立ち上がり、回避する。

 そのまま一人と一匹は戦闘態勢を整えながらドクターマルス立ちを睨みつけた。

「不意打ちとはやる気らしいな……昨日は決着がつかずうやむやだったが、ここで決着をつけたいのか?」

 トモエはニヤリと笑った。
 八方塞がりの状態にどんどんとストレスはたまり、イラついていたのだろう、因縁掛けられたと思い少し気が紛らわせそうだと喜んでいるようにも見える。
 だが、ドクターマルスは戦う気など無い、そのため非常に面倒くさそうにトモエたちを見た。

「落ち着け、これはいわゆる挨拶代わりというやつであーる」

「挨拶だと? ふん……一体何を考えているんだドクター?」

 アルセウスは鼻で笑いドクターの様子をみる。
 ドクターとしては敵に素直にあいさつすることが出来なかっただけで、後は普段どおりだった。
 だが、それだけに殺気のないドクター達の様子にはトモエたちも違和感を感じてしまう。

「……協力してやるである」

「は?」

 それはとても小さな呟きだった。
 あまりにも今更協力するなどと言うのが気恥ずかしくドクターも声量が小さかったのだ。
 思わずトモエが聞き返すと、ドクターは顔を真赤に染めて叫んだ。

「だから! 協力してやると言っているであーる!」

「協力? そいつぁありがたいが一体どういう風の吹き回しだ?」

 トモエたちからすれば、急に掌を返したのだ、信じられないのも無理はない。
 だが、ユウキに馬鹿にされたドクターとしては絶対に見返してやりたい。
 しかし海底洞窟の場所は分からないのだからここはトモエに協力するしか無かった。

「……ふん、お前らには関係の無いことであーる。ほれ、こちらの気が変わらないウチに付いて来いである」

 ドクターは一瞬目を細めると、すぐに踵を返してトモエたちに背中を向け、歩き出した。
 今更ながらトモエたちに協力するのは気がひける。
 だが任務もあるのでそうは言ってられないのだ。

 トモエたちは訝しげにしながらも素直にその後ろを付いていくのだった。



「あ、ダーリーン! こっちロボーッ!」

 予定通り海岸へと行くと、準備を終えたアリサがドクターたちを見つけて手を振っていた。
 最初に声を掛けたのがトモエだというのはドクターにも癪に触ったがいちいち起こっていられない。
 とりあえず積年の恨みはまた今度果たせばいいとして巨大ロボットの前に立つと振り返り説明を行った。

「スーパーウルトラデラックスハイパーメガトンロボ四号機、別名水陸両用スバロボ、であーる」

 ドクターマルス自慢の巨大ロボットだ。
 その姿は一見愛嬌もありそうなバケツのようなデザイン。
 足は細いが走行面では問題はない、さらに腹部には大量の砲門を持ち、両腕は巨大ドリルとなっていた。

「こいつで行けば海の底どころか地球のコアまで到達してやるであーる」

「おい、ドクター……たしかにこいつなら海底に行けるだろうが洞窟はこんな巨体入らないぞ?」

 ドクターはそう聞くと、まぁ当然かと思った。
 さすがに今回の巨大ロボットは50メートルもあるサイズだ、そんな大きな洞窟があったら洞窟だと認識もしないだろう。

 万が一と思い、仕入れてきた酸素ボンベを懐から取り出すとそれをトモエたちに渡した。

「ふむ、ポケモンレンジャーも使っている小型ボンベ貸してやるである、入口付近に着いたら勝手にしやがれ」

「でも、ドクターたちはどうするんだ? 俺たちだけじゃプレートをゲットしちゃうぜ?」

「ふん、アリサとむてきんぐに向かわすである」

 ドクターはそう言うとコクピットへと乗り込む。
 機体の電源を入れて、ロボットを立ち上げようとすると。

「あ!おい! 俺達はどうすれば!?」

 どうすれば、というのはどうやって洞窟へ迎ということだろう。
 ドクターは上部ハッチを閉めながら。

「足にでもしがみついてろである!」

 ドクターはそう言うと巨大ロボットを動かして海へと向かった。
 ロボットは海へと入ると足を使うのをやめて、背中に背負ったバックアップのスラスターで水中を進んでいく。
 ほどなくして、洞窟らしきものは見つかった。

(ここで当たっているあるか?)

 ドクターは機体を止めてトモエたちの様子をみると、トモエたちは洞窟に向けて泳ぎだした。
 どうやら当たっているらしい。
 ドクターはアリサたちを見送るとさっさと帰投しようと思ったが、そんな時に限って。
 ビー! ビー ビー!

 突然警報が巨大ロボットのコクピット内に鳴り響く。
 何が起こったのかと思うと、機体が後ろからなにかに絡みつかれて動けなくなるのだった。

「い、一体なにが起こっているあーる!?」

 警報がうるさくなく、足の一本が折られた。
 絶体絶命かと思っていると、突然機体の後ろ側から大量のテッポウオの集団が泳いできてアリサたちを飲み込んで洞窟へと入っていった。

「あ、アリサ!? こ、このぉ!」

 ドクターは機体を激しく動かして後ろにいるなにかを引き剥がした。
 するとそこにはあまりに巨大なオクタンがいたのだ。
 一体何事かと思ったが、オクタンが絡み付いていたとは予想外。
 というより、これほど大きなオクタンそのものが予想外だろう。

 なんせそのオクタン、50メートルちかくの超巨大オクタンなのだから。

(一刻も早くアリサを救いたいであるが……くっ!)

 ドクターはオクタンに向けて火器類のセーフティロックを解除した。
 操縦桿のトリガーに手をかけて、スイッチを押し込むと、腹部に備えられた砲門が火を吹いた。
 大量のナパーム弾、魚雷、サブロック。
 大量の火器が巨大オクタンを襲う。
 だが、巨大オクタンはまるで必死にあがくドクターをあざ笑うように高速で泳いでそれらを回避してみせた。
 
 深く沈みこみ、オクタンは何かを狙う。
 何を狙おうと今度は後ろはとらせない、接近してくるのならこの巨大ドリルで一撃粉砕するのみ。
 ドクターは息を飲んだ。

 一拍静かな空気が流れた中、オクタンはドクターの巨大ロボットに急速接近した。

「こんのぉ! やらせはせんである!」

 瞬時に反応したドクターはその巨大ドリルを振りかぶった。

 次の瞬間、オクタンは黒い塊を吐いた。
 オクタンの『オクタンほう』だ、ダメージは大きくないがドクターの巨大ロボが揺れた。

「ちぃ! 目くらましなどぉっ!」

 『オクタンほう』はまるで煙幕なって水中を黒く染め上げる。
 何も見えないが、ドクターはドリルを振りかぶった。
 高速回転するドリルは水流を生み、渦潮を起こす。
 一瞬で墨は払われ、視界は確保されたがその先にはオクタンはいない。

 直後、またもやドクターの巨大ロボットが揺れた。

「しまった!? また後ろ!?」

 オクタンに一瞬の隙を突かれてまた背後を取られてしまった。
 身動きがとれず、ドクターは必死に操縦桿を動かそうとするが、あまりに強靭な力に巨大ロボットの体はビクともしない。

「動け! 動けであーる!!」

 必死に動かし、抗おうとする。
 だが、突如ロボットの右腕が折られた。
 柔らかい関節部分を攻撃されると、頑丈な鋼鉄の体もあまりに脆い。

 直後爆発、どうやらオクタンの放った『はかいこうせん』がゼロ距離で放たれたようだった。

 ビー! ビー! ビー!

 激しく警告音がなる。
 さっきの爆発のダメージで機体の電力が不足して大半の機能を停止しようとしていた。
 やばい、おまけにコクピット内に海水が侵入を初めていた。

「や、やばいである!? このままでは!?」

 あまりに絶体絶命の事態についにドクターも生命に危機を感じた。
 そんな時、突然頭に声が響いてくる。

『ドクター、そのまま機体を出ろ』

「ユウキ!? どこから!?」

 突然ユウキの声が響いてきたのだ。
 どんな原理かはわからないが、ドクターは根っからの性分か今の状態も考えずに考察を始めてしまう。
 だが、そんな様子をユウキも感じてか。

『生きてりゃ後で説明してやる、だから早く外に出ろ!』

「くっ! 何をする気か知らないあるが、ちゃんと責任とれあるよ!」

 ドクターはそう言うとコクピットハッチを開けて、海の中に出た。
 口を手で多い、目を細めて海中に出ると、そこには見たこともないポケモンがいた。
 いや、資料で見たことがある……そうそれは。

(海の王者……カイオーガ!?)

 なんと、目の前にカイオーガがいた。
 オクタンと比べるとずいぶん小さく見えるカイオーガだが、ドクターから見れば遥かに大きい、そしてこのカイオーガいいも知れぬプレッシャーを放っていた。

 カイオーガはゆっくりとドクターの真下に潜ると一気に浮上を始めた。

 バッシャァァン! と音を立てて海面から飛び上がると、そこはさっきまでの晴れ模様は嘘のようだと嵐が起きていた。
 ふいに、ドクターの体が浮遊感を覚える。

 当然だろう、カイオーガにドクターの体ははね上げられたのだから。

「て……うそぉぉって!?」

 すぐに自由落下を始めるドクター、空中では為す術がないがじたばたと暴れていると突然なにか自分の体を持ち上げられた。

「タリ~」

 チルタリスだった、ユウキのポケモンだろうか?
 チルタリスが足にドクターの服をひっかけて嵐の空を飛ぶ。

 その様は、街の中に佇むユウキも見ていた。

「よし……ドクターは救えたな……しかし、あんなオクタンがいるとは世の中広いな」

「まるでダイオウイカですねマスター」

 ユウキの隣にはサーナイトが佇んでいた。
 メスのような風貌だがオスのサーナイトは静かにその超エネルギーを使う。

「カイオーガ、あんなのに暴れられたら面倒だ、叩き伏せろ」

 ユウキがそう言うと、サーナイトを介して遠くのカイオーガにテレパシーが送られた。
『よかろう! 眷属ごときに遅れはとらん!』

 宙を浮いたカイオーガはそのまま頭から水中へと潜る。
 そこには邪魔をされたというような表情のオクタンが待ち構えていた。
 カイオーガと比べて五倍近い巨体……だが、その戦闘は一方的だろう。

 オクタンはその柔軟な体をつかってカイオーガに絡みつこうとするが、カイオーガは海流を操りオクタンの自由を奪って足の一本に噛み付いた。
 まるで引きちぎりそうな強靭な顎で噛み付かれるとオクタンも痛みを感じて激しく暴れた。
 そのままカイオーガは噛み付いたまま海面へと上がるとオクタンを空中へとぶん投げる。
 巨大オクタンの体が宙を舞った。
 そこに繰り出されるのは。

 ピッシャァァン!!

「オーークーーーッ!?!?!?」

 カイオーガの操る『かみなり』だ。
 『かみなり』がオクタンを直撃する。
 一瞬して何億ボルトもの凶悪な電圧をその体に帯びたオクタンは気を失ったのかダラリとして海中へと沈んでいった。

 その様はユウキも見ていた。
 グッジョブと回収へと向かおうとするが、直後ユウキの体が動かなくなる。

「……昼行灯のくせにどういうつもりだ?」

「……かったる、なんの真似だ」

 動けないユウキの後ろに一人の男が立った。
 作者だ、いなくなっていた作者は険しい顔をしてユウキの後ろにたったのだ。

「俺達はNPCだ、余計な手出しは無用」

「……知ったこっちゃ無いね、あのままじゃドクターは死んでいた、それを助けて何が悪い」

「うぬぼれるなユウキ! お前の行為はNPCの権限を超えている!」

「ち……」

 ユウキは舌打ちした。
 本来ユウキも作者もこの世界にいていい存在じゃない。
 だからこそ、この世界の調和と秩序を護るために不干渉で無ければならないのだ。
 だが、ユウキには納得できないこともある。
 少なくとも、彼には救える命を見捨てるなんてことは絶対にできない。

「もどるぞユウキ、これ以上は調和のバランスを崩す」

 作者がそう言うと、ユウキと作者の姿がすけ始めた。
 ユウキの連れてきたポケモンたちも体はゆっくりと解けるようにその世界から姿を消してしまう。


「……なんだったであるか?」

 チルタリスに釣れられて、陸地へと下ろされたドクターはカイオーガと巨大オクタンの戦いを呆然としながらみていた。
 気がつくと空は晴れて、戦いは終わった。
 そういえば、ユウキはどうしたのだろうか?

 ドクターは海岸を走りまわり、ユウキの姿を探したがユウキの姿は見つからなかった。
 当然だ、ユウキはもうこの世界にはいないのだから。

「……アリサ、無事であるか?」

 やがてユウキをさがすのに諦めたドクターはアリサとむてきんぐの身を案じた。
 祈るなんて真似はしたくなかったが、今回ばかりは神に祈らざるをえない。

 ……やがて、トモエたちは帰ってくるだろう。
 だがその姿はきっと満身創痍だろう。
 彼女はただ、待つことしかできなかった。

テーマ : ポケモン
ジャンル : ゲーム

ドクターマルスと365日 第5話 ドクター一行、海へ行くの巻き

「おーい、海行くぞ海!」

 それはあまりに突然過ぎた。
 薄暗く陰湿な雰囲気の漂う地下の研究室には似つかわしくない陽気な声。
 それは最近入り浸っているいつもの男の声だった。

「海ってなにを突然?」

「海でありますですか?」

 その突然の作者の言葉にドクターとアリサはぽかんとしている。
 この内陸部のアークスシティには当然海など無い、となるとこの地方で海があるとしたら西海岸側になるだろう。

「海……天体の表面、及び表面の付近を覆う液体の層。濃度3%前後の塩を含むほか、マグネシウム、ヨウ素、アルミニウムなど多分な元素物質が溶け込み、地球の表面70%覆う……」

 アリサにとって海とは一体どんな壮大な想像をしているのだろうか?
 生命溢れる豊かな海? それとも光さえ届かない深海?
 いずれにせよアリサが海に心踊らせるのは確かであろう。

「アリサは海、行きたいよな?」

「はいでありますです♪ アリサは海へ行きたいでありますです!」

 アリサにとって海は未開の地、聞きはすれど見たことのない物にはなんにでも興味を示す彼女は直ぐ様、ニッコリうんと頷いた。

「ドクターはどうだ?」

「海であるか……もう何年も行ってない気がするあーるな……まぁ、たまには海へバカンスに行くのも一興あーるな」

 頬と突き、悩む仕草をするドクターマルスであったが、出てきた答えは意外に良好な物であった。
 ドクターマルスこと、丸栖優香にとって海に行ったのはもう昔の話。
 かつて大学に通っていた際に友人数名と行ったきりであったし、海というものが好きという程でもないが、たまには休みたいという本音もあった。

「おーし、それじゃ用意が済んだらさっさと行くぞ!」

「でも、どこに行くんだロボ?」

 作者が意気揚々と準備にかかると、アリサはふとした疑問を突きつけた。
 先程も言ったとおり、アークスシティに海など無い。海とはアークスシティから遥か西へと言った所にある巨大な西海岸だけだ。
 最も、ミレリア地方それ単体で日本の本州よりも大きな大陸は言葉だけ聞けば近そうでも実際には遥か遠くにある。

「バーバラシティだな、ドクターは知ってるだろ?」

「無論である」

 バーバラシティはアークスシティから北西へ200マイル進んだところにあるミレリア最大のリゾート地だ。
 かつては戦艦が立ち入る軍港であったが、50年前に戦争が終り、今や軍需が無いということもあり海を整備して、リゾート地としたのが始まりだ。

「しかし遠いあるなぁ……移動手段は確保しているのであるか?」

 移動手段がなければアークスからバーバラシティなど当然行けない。
 ドクターとしてはバイクの免許こそもっているが、車は運転できないので当然運べない。
 第一、ガソリン代を考えるとなんとも必要経費の多い手段であるためドクターとしてはオススメできない。
 とはいえ、歩いていけば何ヶ月かかるかもわからないだけにここは作者任せであった。

「ふ、この作者に抜かりはない。カモンユウキ!」

「……かったる」

 突然空間に裂け目が生じると、そこから登場するのは最近出番のなかったユウキだった。
 彼としては本当にかったるいのだろう、言葉だけでは飽きたらず表情も非常にかったるそうであった。
 
「久しぶりであーるな、ユウキよ」

「ああお久――」

「初めましてロボ♪」

「!? え……あ……えと、は、初めまして」

 普段表情も変えず、かったるいかったるいとばかりいう少年にも少年らしさはあるのだろうか?
 アリサににっこりと微笑掛けられたユウキは物珍しくもうろたえた様子であり、ぎこちない喋り方でアリサにあいさつをした。

 あまりに珍しい光景、作者には何度か見たこともあるがまだ付き合いの浅いドクターマルスにはあまりに意外な光景であった。

「ほお、ユウキにも少年らしさが残っていたあるか」

「相変わらずお前は美少女耐性が少ないな」

 そうなのである。ユウキは普段かったるいと言い何事にも興味を示さない無感動人間であるが、可愛い女の子を前にするとドキッとして調子が崩れることがあるのだ。
 特に初回のアリサの印象は可愛いだけでなく落としやかそうなイメージを受け、ユウキとしてはどストライクの女の子だけに、ドキドキ感はひとしおである。

「か、かったる……馬鹿言うなよ、初めて見る娘がいたから驚いただけだ」

「それにしては驚きすぎであーるな……ふっはっは」

 ドクターマルスはその様子を見て、何が面白いのか大笑いをしていた。
 よほどドクターもユウキに対するこれまでの先入観からもっと大人びた印象を受けていたのだろう。
 だが、実際にはそこらにいる15歳の少年たちとそんな大差のない感受性を持っているユウキは子供らしさだってもちろんある。
 普段はそれを隠してはいるが、こうやって時たま出してしまうところが、大人になりきれない少年だということだろう。

「バーバラシティにはユウキに送ってもらう、お前ら、準備だ準備!」

 パンッ! と手をたたき、作者はドクターたちに準備を急がせると、ドクターとアリサは困ったようにその場で考え込んだ。
 両者何を考えているかは別々だが、その疑問はある種問題だった。

「うーむ、水着なんてとうの昔に捨てちまったであーるからな」

「そもそもアリサは水着なんて持ってないロボよ?」

 海へ行っても水着なし……それは由々しき問題だった。
 アリサはともかくとしてもドクターなんかは白衣(夏物)を着ているだけに海には全く似つかわしくはない。
 これは困った問題だと作者もうーんと頭を捻らせていると、当たり前のようにユウキがツッコミを入れた。

「いや、海水浴場だったら当たり前に水着屋位あるだろう? 向こうで買えば?」

 その発言に皆ポンッ! と感心したように手を叩いた。
 いや、普通に気づこうよとユウキは心の中で思ったが、人というのはどういうものかひとつの問題を目の前に出されるとそれに集中して周りが見えなくなるらしい。

「それじゃ、手ぶらでもいいわけか」

「そうであるな、向こうで買うある」

「アリサ、海初めてロボ♪」

 そのいう方針で決まると一行はユウキが作った次元トンネルの先へと進み、一行バーバラ入りをするのだった。





「……暑ぅ」

 最初に夏定番の言葉を言ったのはユウキだった。
 それもその筈彼の格好はいわゆるルビサファ男主人公の仕様。
 露出度の極めて少ない格好であり、暑苦しいことこの上なかった。

「……そんな格好していれば当たり前である、さっさと着替えろである」

「無駄だ、ユウキはポケサファの主人公故にある呪いがかかっている」

「呪いロボか?」

 それはまた物騒なと思うドクターだったが、作者の次の言葉を聞いたときにはなんともどうでもいいことだと思うことだろう。

「ユウキはポケサファ主人公だから、ルビサファ時代の主人公の格好以外できない呪いがかかっているのだ!」

「はぁ……エメラルドの俺が羨ましい」

 そうなのである、エメラルドとの差別のためなのか、ユウキは暑苦しいルビサファ男主人公の格好以外できないのだ!
 それゆえに軽装の格好にはひどく憧れる物がある。
 まぁ、そこはかとなく主人公の宿命であろう。

「まぁ、気にするなユウキ、これからパールのヒカリも同様に辛い目にあう」

「キッサキにあのミニスカでいくのか……ご愁傷さまだな」

 ユウキは大量の汗を流しながら首をふるしか出来なかった。
 とりあえず、道端に立っているのは暑すぎるので一行は水着の売っている量販店に入るのだった。

「あ~、クーラーが涼しい」

「さて、水着を見てくるあーるか」

 店に入るとまず感じたのは異様な涼しさだった。
 外の暑さなどまるで嘘のよう、そう感じるほどに中と外の温度差は激しくユウキも思わずゆるい顔をしてしまう。
 ドクターはアリサを連れて行くと直ぐ様女性用水着のコーナーへと向かった。

「……作者は買いにいかないのか?」

「男の水着選びに喜ぶ読者がどこにいる?」

 ……かったる、と本日何度目かの愚痴をこぼしたユウキは確かにと考えた。
 誰も男の着替えシーンなど興味もなければみたくもないだろう。
 そういう意味では女性シーンを写せと批判もくいそうだが、そこはしばらく待っていて欲しい。


 ……そして30分後。

「お待たせロボ~♪」

 30分後、休憩室で休んでいた作者たちの前にドクターたちが帰ってくる。
 初めていつもの召し物以外を着たことに上機嫌のアリサに対して、ドクターマルスは気恥ずかしいのかもじもじしながらアリサの後ろをぎこちなく歩く。
 どうやらふたりとも水着に着替えてやってきたようで、その様子に思わず作者も「おおっ」と唸った。
 ここら辺はFantasyのトモエで味わうことのできない役得だろう。
 最も向こうでは同一時間軸で羨ましい光景に会っているわけだが。

「パパ、似合うロボか?」

 アリサは水着をよほど見せびらかしたいのかその場で踊ろうように一回転、初めて着る別の召し物に気分は上々だ。

「……スクール水着?」

「ワンピースだな、日本ではスク水というの方が浸透しているが、こっちじゃこれも水着の一種だな」
「ちなみにここで作者のくだらない無駄知識、現在スクール水着と言う名前で日本に浸透している紺色のあの水着は1907年オーストラリアのアネット・ケラーマンにより考案された。彼女は当時の常識を打ち破りトップとボトムを一体化させ、余計な装飾を徹底的に省いた現在のワンピース型水着を考案。彼女はこれにより英仏海峡の横断に成功した。なお、肩周りや太ももが完全に露出したこのデザインは当時アメリカのボストンビーチで着用した際公然わいせつ罪として逮捕されるという事件もあった。これは当時女性のあり方には確かに非反するものであり、また男尊女卑の真っ只中であったということも関与する。しかし、この一見によりアメリカでの女性の立場上昇に対する貢献にも成り得た、現在では日本などでは学校などで正式採用される一般的な水着である、世界的にみればこれもファッションの一種であるということを熟知していただきたい」

 いじょ、と付け加えて説明を終える作者。
 正直今回はスマンと思っている、見づらいと思うが今回は我慢してくれ。
 作者の無駄知識シリーズはこれからも続きますので、また次回も生暖かい目で見てください。

「相変わらずオメーは無駄知識の塊だな」

「アメリカのSF作家アイザック・アシモフも言っている。人は無用な知識が増えることで快感を覚えることの出来る唯一の生き物だとな」

 呆れながらようやく前に出てきたドクターの格好は女性としては少々可愛らしすぎるというか、露出は少ないがデザインは派手な花柄のパレオだった。

「み、見るなである……はずかしいではないか」

「……無難な選択だな」

 ドクターらしいといえばそれまでだろうか。
 ドクターはやっぱり見られるのを感じると恥ずかしそうにもじもじとした。
 ドクターもやはり女性としての意識があるのか男性に見られると気になって仕方がない。
 正直水着を着ることも抵抗があり、本人は店の店員にもっと派手なビキニを推奨されたが作者に見られることを想像したさい、真っ赤になりパレオを選択したという。

「しかし、花柄のパレオはちょっと子供っぽくないか?」

 しかもそれよく見ると花は花でもチェリムの印刷されたパレオで余計に子供っぽかった。
 自覚しているのかドクターも恥ずかしそうであったが、仕方がないという顔でそっぽを向いてしまう。

「まぁいいや、それじゃ砂浜に行きましょうか」

 そういうわけなので、一行はいざバーバラシティの海へと直行する。



「海……懐かしいあるなぁ」

「そう言えばドクターマルスはどこの出身なんだ?」

「ん? フォルシティの出身であるが?」

「フォルシティってどこだ?」

 海に懐かしさを覚えたドクターはボソッと呟いたとき、気になったユウキがドクターマルスの出身を聞いた。
 すると出てきた言葉はフォルシティという作者も聞いたことのない地域が出てきたのだ。

「作者が忘れるなよ、フィオレ地方の一都市だ」

 思わず突っ込んだのはユウキだった。
 「ああ、忘れていた」とポンと叩く作者は実にどうでも良さそう。
 まぁ、実際にドクターマルスの出身地なんてこの作品には関係ないし、どうでもいいのは確かなのだが。

「フィオレってレンジャーユニオンがあるところだよな?」

「うむ、ポケモンレンジャーの総本山である」

 フィオレ地方は日本の一部であり、レンジャーユニオンが存在する地域だ。
 フィオレにはポケモンをモンスターボールに入れる風習がないためか、ポケモンバトルを行う風習もなく、ポケモンセンターもない。
 そういった少し特殊な環境で育ったためか、ドクターはこれまでポケモンに対して興味を示さなかったのだろう。

「お、そういえばむてきんぐは?」

 ふと、気づいたのは作者だった。
 そういえばむてきんぐことポリゴン2がいない。
 それを聞いたドクターは思い出したようにモンスターボールを取り出した。

「忘れていたである、でてこいむてきんぐ!」

「ポリ?」

 ポンッ! とボールから出てくるポリゴン2は実に久しぶりに外の空気を吸った。
 最近アリサの登場によりめっきり出番が少なくなっているむてきんぐは今日もボールの中で一休み……かと思っていたらまさかの登場に一体どうしたのかと周囲を伺った。

 だが、状況はいつものようにバトルの様子はなく、異様な程多い人混みで不思議に思った。

「おーし、むてきんぐ。しっかりと楽しもうぜ!」

「ポリ?」

 作者はむてきんぐを抱き抱えると海へと走った。

「ああっ! こらポケモンさらいーっ!」

「なんのかんのでパパもむてきんぐが好きロボね」




 ……時間というのはあまりに過ぎるのが早く、そして残酷であろう。
 遊び初めて一時間、ナンパされたりナンパされたり、ナンパされたりのドクターとアリサ。
 かったるいとつぶやいてばっかりの汗だく少年ユウキ。
 そして海辺で涼しみまくる作者とむてきんぐ。
 それはそれは幸せな時間だろう、だが幸せな時間というものにも終わりはやってくる。

「おーし! いくぞ優香!」

「だから優香言うな!」

「トース! ロボ!」

 砂浜で打ち上げられる水玉模様のビーチボール。
 サッとジャンプする作者、待ち構えるのは緊張した面持ちのドクターとむてきんぐ。

「必殺! ただのアタック!」

 アリサの打ち上げたビーチボールを見事に相手のネットの先に打ち込む作者。
 反応が間に合わず惜しくもボールは砂浜に突き刺さった。

「14-10! マッチポイント!」

 そしてそれを見守るのは審判しかやることのないユウキだった。
 そう、彼らがやっているのはビーチバレー、中々白熱したバトルを繰り広げていた。

「ふっふっふ、むてきんぐは中々厄介だがドクターは所詮頭脳派、敵ではないわ」

「でも、パパも十分どんくさいロボ」

「ふはははは! 優香に比べればマシよぉ!」

「だから優香言うな!!」

 すでに勝ち気の作者は平然とドクターの挑発を行う。
 イライラするドクターだが、これでも彼女もしっかりと楽しんでいる方だ。
 なんだかんだで、ドクターも変わってきたのだろう。

 ダークプリズンという組織の中では友人などおらず、彼女はいつも位地下の研究室に入り浸っていた。
 時折、完成させた試作ロボットを使い、街で破壊工作をする日々。
 このように楽しむ時間などあるはずもなかった。

 だが、トモエに敗れ、そして作者と出会ってから彼女の運命は一変した。
 今は毎日が充実している、それは確かだった。

「行くロボ!」

 アリサの美しい流線美は宙を舞い海老反ると太陽の光が反射して光のラインが浮き上がる。
 洗礼された動きから繰り出されるアリサの一撃は強力で、サーブでさえ取るのは難しい。
 必死で喰らいつくドクター、だがボールはドクターの腕に弾かれビーチコートの外へと飛び去る。

「あっ! やっちまったか!」

 ボールはそのまま海辺へと向かい、ある人物の頭にぶつかってしまった。

「あ、すまないであーる! ボール……を……?」

 慌ててボールの回収に行ったとき、ドクターは突然固まってしまう。
 それもその筈であろう、その人物は本来ならこの場にいるはずのない男なのだから。

「ああ大丈夫、今かえ……す……?」

 ボールを広い、笑顔で振り替えった男も固まった。
 男も思ったことだろう、何故ドクターがこの場にいるのかと。
 そう、その男はなんと。

「また汝かドクターマルス!」

 その場で一番目立つのは320センチの巨体を誇るアルセウスだろう。
 ドクターマルスを見つけると激しく威嚇するようにドクターを睨みつけた。


「なんでたまにはバカンスでアークスシティを離れてまでお前らと出会わなければならないのであーる!? トモエとアルセウス!」

 そう、その場にいたのはトモエたちであった。
 よく見ると後ろにはビキニを着た公式巨乳天然美女のシスターノーマとあの教会の子供たちまでいる始末。

「おい、これはどういうことだ作者?」

「予想GAYです、この海の作者の目を以てしても見抜けなんだ」

 これには本気で作者も予想外だった。
 本来向こうには作者とユウキが登場しない代わりに、こちらではトモエとアルセウスは登場しないように神が調整をおこなっているはずだった。
 神といえば勿論、作者のことだ。

 だが、作者にも手違いはあるのだろう、偶然にも同じ日付に海へと着てしまい、しかもバッタリとあってしまう始末。
 あ~あ、やべ……これどうしようと頭を抱えたのは作者だった。
 なんとしてもこの場は穏便かつ、自分たちが目立たないように切り抜けなければならない。

「まぁいいドクターマルス! ここで因縁に終止符を打ってやるよ!」

「ふん! その言葉そっくりお返しするであーる! アーリサ! やぁっておしまい!」

 直ぐ様戦闘態勢を整える両者、ドクターに呼ばれるとアリサは直ぐ様飛び出した。
 それはまるで弾丸のような速さでトモエの元に向かう。

「珍しく彼女、返事しなかったな」

「あん?」

 ユウキが不思議に思った、ドクターに返事することなく敵に向かう彼女。
 普段の彼女なら何かしら返事をしてから向かうはずだ、だが今回は気のせいかドクターが叫ぶより先に動き出したような……そう思ったとき、その行動の意味はすぐに判明した。

「ダーリン会いたかったロボーッ!」

 なんと、アリサはいきなりタックルするようにトモエに抱きついたのだ。
 勢い余りすぎて砂浜に倒れこむ男女、アリサは実に嬉しそうにトモエの胸に抱きついていた。

 その様子に信じられないという顔でいるのはドクターとアルセウスだ。
 とりわけドクターはまさに神に見放されたとでも言うかの如く悲壮な顔をしている。

「だ、だ、だ、ダーリーーーーン!? あ、アリサ!! 君はこの私を置いて恋の列車に乗って旅立つというのか! ああ、私は悲しい! でも、涙はいつか枯れ果ててしまう! そうあなたは私を置いて夢を追うのね!?」

「壊れたのか……ドクターマルス?」

 多分壊れたんだろうな……そう呟いたのは作者だった。
 ドクターは錯乱したかのように言葉を続け、その様子をトモエたちは不気味に思いながら見た。
 しばらくすると彼女は突然どこからともなくモンスターボールを取り出す。
 その際彼女の目が怪しく光ったことを付け加えておこう。

「やらせはせん! やらせはせんぞぉ!! 貴様なんぞに我が愛しのアリサをぜーーーったいにやらん! お前のような男に娘をやれるかーーっ!」

 突然、モンスターボールを投げるとそこから出てきたのは180ミリ反動砲だった。

「おまっ!? こんなところで撃ったら!?」

「だまらっしゃい!! 娘を穢した罪、その生命で償えであーーるっ!!」

 すでに気が確かでないドクターはアリサもみえていないだろう。
 アリサがいるにも関わらず容赦なく引き金を引いたとき、巨大な弾頭は無情にもトモエに向かう。
 だが、これにはトモエも瞬時に反応した。
 眼の色が白く変色すると、彼は超人的な動きで高速で飛ぶ弾頭を回避し、横から弾頭を蹴り上げたのだ。
 蹴り上げられた弾頭は空中で爆発、周囲の観光客たちが一瞬の閃光と凄まじい爆発に何が起こったのかと注目する。

「あの馬鹿っ! ユウキは周囲の沈静化!」

「あいよ、かったるい」

 初めてかもしれない、作者が冗談抜きで真面目な顔をしたのは。
 的確に場を収めるためにユウキを動かすと作者は直ぐ様ドクターの方に向かった。

「ちぃ! おのれ怨敵古戸無トモエめ!」

 歯ぎしりをしながら直ぐ様次のモンスターボールを取り出す。
 ドクター、ドクターお前はやりすぎだ。そう言わんがごとく作者は珍しく真面目な顔だった。
 音もなくドクターの背後に迫ると作者はそのドクターの細い首を。

「圓明流は極めると同時に折る!」

「かく――ヒュルッ!?」

 作者は一瞬にして裸絞めを行い、ドクターの頚動脈を抑えこむ。
 あっという間に頭に血が上らなくなったドクターは直ぐ様気絶。
 体から力がなくなると作者はドクターの首を引っ張り何事もなかったかのように去ろうとした。

 だが、いきなりの登場でいきなりの退場ではトモエとアルセウスも不思議でならないだろう。

「あ……あの、アンタは?」

 当然、出てくるであろう言葉だった。
 作者は溜息をついた、こうなるのが分かるから出て行きたくはなかった。
 たとえ偶像とはいえ、神は人の前に顕現してはならない。
 神は空想でなければならないから。
 だからこそ、彼は、作者は一定の仕事をこなすのみである。

「その質問に回答する義務はない、いくぞアリサ!」

「あ、パパ、はーいロボ! それじゃあまたあとでロボね、ダーリン!」

 作者がアリサを呼ぶと、アリサは嬉しそうに作者の腕に抱きついた。
 面倒だと思いながらも、事態の収集を行ないドクターを引きずる作者は、本来あるべき神の顔をしていただろう。
 神は等しく平等であり、そして等しく関与してはならない。
 今回それを破ってしまった。
 それには作者も自責の念はある。

 そして同時にそれは、後に悲劇を生むだろう……。




「う~、首が痛い」

「自業自得だ、バーバラシティでまで面倒を起こすな」

 晩飯時ホテルに帰ったドクター一行は自分の部屋で休んでいた。
 ユウキとアリサの姿はあらず、ゆっくりとした時が今流れていた。

「しかし、作者に関与されるとは思っていなかったであーる」

「……その点に関してはノーコメントだぞ」

 作者はふてくされるように、あるいは忘れるように首を回して外の優雅景色を眺めた。 ふ、と笑いドクターは作者の隣に座る。

「別に私は何も言わないであるよ」

 ドクターとしても今朝は少々やりすぎたと反省していた。
 悪の秘密結社ダークプリズンの幹部クラスが何を言うか、というのもあるが……今の彼女は非常に穏やかだ。
 作者チラリとドクターを見た。
 海で遊び、浴衣に着替えたドクターは美しかった。
 赤い髪が艶を得て輝き、整った長い髪は重力に負けて地上に垂れる。
 穏やかな、だが大人の女性の美しさを持つ瞳はとても綺麗だった。

「……あ~、さて私は風呂にはいるとするである」

 ドクターはそう言うと風呂場へと向かった。
 作者は一人になると、ふと考える。

「神が顕現している、それは偶像の神だ。自分でも自覚している……おれは操られている神だと」

 ……それでもだ。自分は神なんだ。
 今日、改めて実感した。
 ドクターと一緒にいることが自分にとって快感になっている。
 作者にとって最初はただお助け的にドクターマルスの前に現れただけだった。
 なのに、気がつけば当たり前のようにこの場に自分はいる。
 そう、この世界は居心地が良すぎるんだ。

「神様失格だな、ひとつ世界入り浸っちまうとは」

 だが自分は偶像の神だ。
 神といえども、それは本物の神が操る架空の神。
 たしかにその人物は元となる神を忠実に再現した人格の持ち主だが、それは決して=ではないのだ。
 だからこそ、今操る神も同じ気分だろう。
 この世界にいること(描くこと)が楽しいんだ。





 ……やがて時間は夜を迎え晩餐時。

「ん? ここは?」

 ドクターたちは予算の関係上ご飯の着くプランは取っていなかったため、彼女らは近くの飯屋に向かう途中だった。
 ある大広間からどんちゃん騒ぎが聞こえてくる。
 失礼と思いつつも覗き込むと、そこは教会ご一行の部屋だった。

「うっ! 酒臭っ! 日本酒の匂い!?」

「? おめーもしかして酒がダメなタイプあーるか?」

「ああダメだね! 俺はこう見えてもビールの酒気だけで酔えるほど酒に弱い! 酒は俺の天敵なんだ! 俺に近づけるんじゃねぇぇぇっ!!?」

 作者(私)にとって酒は大の苦手である。
 思い起こせばいくらでも出てくる酒の苦い歴史、作者にとって銃と酒は決して相いれぬ天敵なのだ。

 しかし、それを聞くとドクターはピコンと何か思いつく。

「アリサ、こっそり突入ある♪」

「はいロボ、ママ♪」

「あ……おい、かったる……」

 慌てて止めようとするユウキだが、二人は意気揚々と中に侵入していった。
 本来Fantasyに登場してはいけない二人は決してここには入ることができず、溜息だけついた。

「ユウキ、むてきんぐ……食いに行くか」

「ポ~リ~」

 むてきんぐは同情するしかなかった。
 今日は一晩中作者の愚痴に付き合うことになるのだろうか?
 だが、それも仕方が無いのかも知れない。
 彼はゆっくりと夜の繁華街へと入るのだった……。




テーマ : ポケモン
ジャンル : ゲーム

ドクターマルスと365日の目次

無いと不便だと気づいた。
というわけで目次

無印版

ポケットモンスター オリジナル小説 Fantasy 特別編

Fantasy 第6.5話 なぜドクターはいきなり強くなったのか?


ドクターマルスと365日

第1話 ドクターと作者

第2話 人造人間現わる!

第3話 それはコメント返しのようなもの

第4話 日本では七夕、本編では特に関係なし

第5話 ドクター一行、海へ行くの巻き

第6話 ドクターとユウキ

第7話


登場人物紹介

ドクターマルス

本名丸栖優香、日本人。
日本人女性で、悪の秘密結社ダークプリズンに所属する天才科学者。
ダークプリズンではそこそこ立場は偉いらしいが、皆には無視されている。(だからアレほど、キャラ性は自重しろと……)
日々、作者の謀略に苦しむ苦労人。


作者
本名?KaZuKiNaまたはKaZuKi、もしくは単にKiNa。
本作品におけるカオスの権化、作者権限を用いて様々な嫌がらせ行為をドクターに行う。
作者の癖にアリサにデレられると簡単にノックアウトされるメンタルの弱いヤツ。
ちなみに、彼さえも筆者という神に操られる人形だということは忘れてはいけない。


ユウキ

本名相良ユウキ。
別名『言視触聴の遊幻人』または『FCのスキマ』。
こっちでは無名、ホームページの方では有名人のポケサファの主人公。
口癖は『かったるい』で必要がない場合は極端なまでに空気に徹する。
まさに『空気になる程度の能力』ということだろう。
神剣白夜を用いたスキマ能力はポケサファというよりFC学園よりの能力。
多分出番は少ない。


むてきんぐ

ポリゴン2。
ドクターマルスが初めてゲットしたポケモンで、作者とユウキにいびられたことで、条件付きではあるがアルセウスと戦えるレベルにまで強くなった。
レベルアップが早いってレベルじゃない、もうアバンの使徒と対峙するハドラーレベルの意識が必要。
得意技は『トライアタック』なのだが、マスターの性で『でんじほう』ばかり使わされる。
しっかりとした性格の持ち主で、ドクターに大しての懐き度はすでにカンストしている模様。
運が悪いのはお約束。


アリサ

正式名称スーパーウルトラデラックスハイパーメガトンロボ4号機。
筆者のお気に入り、アリサかわいいよアリサ。
ドクターをママと言い、作者をパパと言ったことで、両者の関係をこじらせた張本人、本人に悪気無し。
割と非常識で、何やりだすかわからず、空気が読めないシーンも多い。
でも可愛いから許す、アリサかわいいよマジで。
本人自身は無邪気なもので何事も挑戦的で、善悪の区別は薄いよう。
日々ドクターを心配させる不安な娘、可愛いから仕方ないね。
余談だが、説明が一番長い。

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ジャンル : ゲーム

ドクターマルスと365日 第4話 日本では七夕、本編では特に関係なし


 そこは薄暗いどこかの地下。
 怪しい薬品、怪しい機材が大量に置かれたどこかの研究室。
 まるで光を嫌うかのように存在する場所には……あまりに似つかわしくない物が今置かれている。
 そして、その物の前では楽しそうに準備をする一人の女がいた。
 そう……ドクターマルスこと丸栖優香だ。

「ふんふ~ん♪ やっぱり日本人としては文化を大切にしたいであるな♪」

「……七夕か、よく笹なんて手に入ったな」

 そう、地下の研究室にはあまりに似つかわしくないもの、それは夏の風物詩七夕だった。
 研究室にずんっ! と威圧感たっぷりに置かれた笹は、悪の秘密結社の研究室にはあまりに似つかわしくはない。
 しかし、とうの用意した本人は実に楽しそうだった。

「中国からこの日のために輸入したである」

「つーか、七夕はもう過ぎたぞ?」

 そう、今日は7月8日……七夕は7月7日なのだ。
 作者は不思議そうに笹を眺めていると、ドクターマルスは「チッチッチ」と人差し指を振り、用意した理由を話し始めた。

「お前、日本とアメリカ西海岸の時差はしっているあるか?」

「? 17時間差だな……」

「つまりそう! このミレリア地方ではまだ7月7日なのであーる!!」

 そうなのである、ミレリア地方はまだ7月7日、七夕なのだ。
 意外と文化を大切にするのかドクターマルスはこの日のために短冊も用意してある。
 一体何を願うつもりなのか?

(ちなみに、この国に七夕の文化はないけどな)

 ドクターマルスは七夕ということで、願掛けを行う。
 それは一体どんな願いか?
 気になった作者はというと、ついそれを覗いてみる……すると。

『早く作者が消えてくれますように、出来れば彦星程度に自重してくれますように』

「ちょ!? おま! これはひどくない!? つまり俺に一年に1回しか出てくるなというのか!?」

 当然これには作者も大激怒。
 とうのドクターマルスはというと、何を当たり前なことをという顔で。

「出来れば二度と顔もみたいくないであーるな」

「ていうか、言っとくけど太陽暦での7月7日って梅雨だよ!? 知っているムダ知識!? 7日に雨が降ると彦星と織姫の逢瀬が叶わない涙なんだよ! ちなみにこの日に降る雨のことを催涙雨っていうのはその性だね!」

「無駄知識すぎるあーるな、今年は幸い晴れたあるが(降った地域の人はご愁傷さま)」

「つまりお前は! ほとんど出てくるなと!? ひどすぎるわ!」

 無駄知識まで披露して、ダダをこねる作者にいい加減鬱陶しく思うドクターマルスは耳を塞ぎ、聞こえないと主張する。

「あれ? そういえばアリサはどこあるか?」

「聞けよ! 人の話!」




 ……さて、そんなコントのような会話が繰り広げられる地下の研究室とは打って変わり地上のアークスシティでは……?


「街……人々が生活を営む生活圏コロニー」

 アリサは街を散策していた。
 それは自分の見聞を広めるためか、顔にはまるで楽しそうには見えなかったが、彼女はこれはこれで楽しんでいるつもりだった。

 街には情報では知っていても、実際には見たことも聞いたこともないもので溢れている。
 それは見て、触って初めて分かる。
 何もかもが新しく、同時に驚きの連続。
 だが、アリサにはそれがどういった感情なのかが全く分からない。
 まだ産まれて日の経たないアリサには喜怒哀楽といった感情がわからないのだ。
 それはロボットだからなのか? そんなことはない……彼女は立派に自分の感情を表現することができる。
 でも……彼女にはそれが理解出来ないのだ。
 それはまるで……赤子のように。


「……服、身につける衣類、ころも」

 ふと、彼女の目の前にはショーガラスの先にあるマネキンの着た洋服が目に入ってきた。
 そこはショッピングモールであり、このようなショーウインドウは軒を連ねたように並んでいる。
 それなのに何故か止まってしまった服。
 それはお世辞に可愛い服というわけではない。
 だが、何故かアリサの目を留めてしまった、罪深い服。

(洋服……アリサにはこの服意外は着ることができない)

 ふと、アリサは自分格好を見た。
 帽子も服もみんなドクターマルスが……ママが用意してくれた物。
 それはもちろん大切だし、とても嬉しい物だった。
 でも、アリサにはこの服意外の物を着ることはできない。

 いや、着ること自体は可能だ。
 だが、普通の服では彼女の性能を十分に発揮することが出来ない。
 彼女にとって服は、自分を飾るためのものではない、自分のスペックをフルに活かすと共に、自分の身を護る重要な鎧なのだ。
 このような衣服では大胆な動きができないし、防御力も皆無に等しい。

 それなのに、アリサはそれから目を離せなかった。

「おっ! 君かわいいねぇ! これから俺らとお茶でもどう!?」

 気がつくと、彼女の周りに三人ほど若い男が集まっていた。
 それぞれ、カジュアルな格好であり、いわゆる今時の若者とでもいおうか?

「茶……チャの葉を飲料用に加工したもの。また、その飲料」

 それはまた見たこともなければ聞いたこともない代物。
 興味はある、だけどそれはアリサには受け付けない物。
 なぜなら彼女はロボットだから、ロボットは物など食べない。

 アリサは特に気にせずにショーウインドウに目を戻した。
 だが、その姿に若者たちは見逃さない。

「よぉ、無視してんじゃねぇよ嬢ちゃん!」

 ふと、肩を引っ張られる。
 その乱暴な行為にはアリサの防衛意思が働く。

「ちょっと、俺らにつきあうだけで――」

 ゴキッ!

 それはとても生々しくて恐ろしい音だった。
 まるで触るなと言わんがごとく、アリサは自分を引っ張る男の腕をまるで木の棒を折るかの如く簡単に折ってしまったのだ。
 アリサからすればちょっと力を入れただけのこと、なんと脆い人間か、その程度にしか感じない。

 だが、折られた男は悲鳴を上げてのたうち回った。
 その様子をみて、残り二人は突然鋭利な刃を光らせるナイフを取り出した。
 それはおおよそ現実的にはとても理性に欠いた行為であろう。
 だが、仕方が無いのかもしれない……彼らはすでに理性などないのだから。

「てめぇ! 仲間に何しやがる!」

「……消えろロボ」

「うるせぇガキィ!」

 男のひとり、太ったスキンヘッドがナイフを物思いに振った。
 それはアリサの首を狙い、アリサも避けられるにも関わらず避けようともせずに受けた。
 勝ったのは言うまでもない、アリサだ。
 なんと振り上げられたナイフはアリサの首をはねるどころか、逆に折れてしまったのだ。
「なっ!?」

 その見た目は華奢な女の子にしか見えないアリサだが、曲りなりにもドクターマルスの造った人造人間なのだ、この程度のナイフで傷つくはずもない。
 だが、男たちにはそんなことはわからない。
 そして、同時にその行為がこの後、阿鼻叫喚の地獄絵図を生み出すことになるのだ。

「警告はしたロボ、だがそれでもそちらに戦闘意思があると判断、戦術レベルを上昇」

「ば、化物!?」

 男たちには信じられないのだ、この少女がロボットだとわからない以上、これは化物以外何者にも見えない。
 アリサはこの後、男たちを見も無残な状態にするだろう。
 しかし、それは自業自得なのだ。
 このような理性の欠いた行為に走った男たちも悪い。

 だが、社会は彼らを護るだろう。
 それが警察の義務なのだから。

「こら止めんか! 喧嘩はやめなさい!」

 突然介入してくる警察、二人おり片方は面倒そうにしていたが、街で喧嘩があるとあれば放っておくこともできずに介入した形となった。

「た、助けてくれ! こ、この女普通じゃねぇ!」

 男たちは直ぐ様警察に助けを乞うた。
 だが、現場を確認していない警察にはむしろおかしいのは男達に見えた。

「話は署で聞くであります、ほらそこの少女も!」

「……敵増援出現、銃火器の所持を確認、戦術レベルをBからAにアップ」

「……は?」

 それはふとしたきっかけだった。
 警察の間抜けな言葉、そして放たれるアリサの冷酷な言葉。
 アリサの指が腰に装着された二丁のマグナム銃に掛けられた。

 ガァァァァァン!!

 銃声は盛大に響いたことだろう。
 突然銃の乱射を行うアリサに、男達も警察も阿鼻叫喚。
 その音を聞き、その様子を見た一般市民もさながらパニックを起こし、その場から一斉に去っていってしまう。

「た、大変だ! すぐに増援をよべぇぇ!」

 一瞬……そう、一瞬の出来事だ。
 一瞬で普段は人が多すぎる位のショッピングモールから人という人が消え失せたのだ。

(静かになったロボ)

 人がいなくなったことを確認したアリサは銃を元の場所に戻すと、また何事も無かったかのようにショーウインドウに目を向けた。

「……服?」

「……あ」

 ふと、真後ろに気配を感じた。
 それは以前にも感じた気配。
 そう、そこにいたのは……。

テーマ : ポケモン
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KaZuKiNa

Author:KaZuKiNa
KaZuKiNaといいます。
小説書いたり、ゲームプレイしたり。
あ、熱帯魚とかも飼ってます。
色々、自由気ままにやってます。

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