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ルビサファ出会って誰おまタッグ大会 合流編 第3話

ゴウスケ「Fか……キヨミたちも着とったな……今回も楽にはいかんやろな」

今回の大会の規模はあん時のタッグ大会の時より遥かに大規模や。
無論そこに参加するメンバーも。
ハルカちゃんはもちろんのこと、キヨミにキヨハ、さらにそれと同等クラスの実力者ラファ。
極めつけはミカゲ、マリアの存在か。

ゴウスケ 「ま、まずは相方見つけてからやな」

この大会はあくまでタッグ大会、前回のミツル君のようにええパートナー見つかると勝機もあるんやけどなぁ。

ゴウスケ 「Fはここにおりまっせ-! Fの人どこでっか-!」

イブ 「Hello!」

ゴウスケ 「おおっ!? いきなりなんや!?」

サラリと英語きたで、外人か!?
て……よぉ見たらFの番号札もってるやん。
見た目だけ見たら完全日本人やけど今の流暢な英語……日系人か!?

イブ 「えと、英語No thank you?」

ゴウスケ 「No thank you!」

イブ 「えと、じゃ日本語まだ苦手だけど、頑張ります」

ゴウスケ (サラリと日本語苦手とかいいよった! 完全に外人や!?」

こりゃかなわん、先行き不安やで……コミュニケーション面で。

イブ 「私、イブです! よろしくおねがいします!」

ゴウスケ 「ゴウスケや、まあ、よろしゅう」

まあ肝心のバトルの方さえしっかりしてるなら問題ないやろ。

せやけどやっぱコミュニケーション大事やで、待ち時間とかめっちゃ寂しいもん……。










ミソラ 「やれやれ……ツカサに誘われて僕も参加したけど僕のパートナーはどこだい?」

できることならポケモンバトルの舞台に戻りたくはなかったな……。
ポケモンバトルにはロクな縁が僕にはない。

ポケモンバトルは情念全てを食いつぶす。
その深層には希望もなにもありはしない。
ポケモンから離れて6年……ツカサに誘われてもう一度ポケモンに触れ合うようなったけど、今だかつて感じたあの感覚は消えない。
ポケモンバトルを楽しいと感じたことは一度もない、いつだってすぐに終わらせたい。
そう……僕は歌もポケモンも大っ嫌いだ。
嫌いであれば無視できる。
嫌いであれば堪えられる。
そうやって僕はずっと生きてきた。
そして生きていくつもりだった。
ツカサが現れるまでは……。

ツカサの歌は僕にとっては驚愕と同時に懐かしい歌だった。
僕と同じ……虹色の波動をもつ少女ツカサ……。

僕は、自分の波動の性で全てを失った。
大好きだった歌を大嫌いにした。

ツカサの歌を聞いた時、自分と彼女が重なった。
だから……せめて彼女だけでも守りたい。

ジェット 「ん? Dの番号札……あなたが俺のパートナーですか」

ミソラ 「ということはあなたも?」

ふと、考え事をしていると同じ番号札を持った青年が目の前にいた。
Dの番号札……そう。

ミソラ 「ミソラです、よろしくお願いします」

ジェット 「俺はジェット、こちらこそよろしく」

ジェットという青年はにこやかに笑うと、手を差し出してきた。
握手を……ということなのだろう。
僕は少しためらったけど彼の手を握った。

ミソラ 「よろしく」










ミヅチ 「パンドラの巫女か」

ある日、コキュトス宛てに届いた一枚の招待状、贈り主は謎の人物K……つまりこの大会の主催者。
我々を知っているということはそっちの関係者の可能性は高いが、生憎知る人物ではなかった。
マシュウの下らん遊びの可能性もあったが、この大会には有力なトレーナーが大量に集まっている。
この場所にパンドラの巫女がいればそれもよし、いないのならばそれでもいい。

ミヅチ (今回は余興……遊びだ)

特に必要もなければ仕事をする必要はない。
第一ここにはあの鞘と刀がいる。
迂闊な動きは見せられん。
おそらく向こうもそれ相応警戒しているだろう。
たしかにここに集まっているポケモンたには商品としては魅力だが、同時に危険度も高すぎる。
余程の強欲かマヌケでもない限りこの会場で仕事をしようとする者はいまい。

ミヅチ (今回は純粋にポケモントレーナーとして楽しませてもらおう)

それにここ最近どうも仕事が上手くいっていないしな。
あの時のコンテスト大会以来ことごとくコキュトスは仕事を失敗している。
特にあのエマとかいう訳のわからん小娘ごときに私のグライオンがやられたというのは非常に私としては深刻だ。
一度気も引き締めなければ。

アスカ 「あ、E発見!」

ミヅチ 「?」

突然前方から元気のよい声が響く。
ふ……どうやら相方の方から現れたようだな。

アスカ 「私アスカです! よろしくお願いします!」

ミヅチ 「ふふ、ミヅチよ、よろしく」

中々生きの良い娘ね、少し面白そうかしら?
さて、少しは楽しませてもらおうかしら?










リベル 「えと……私の相方はどこでしょう?」

私はすでに探し初めて10数分、会場を歩き回ったけど今だに相方を見つけられていない。
うぅ……前回はすぐ近くにいたジェットさんが相方だったから苦労しなかったけど今回は全然見つからないよぉ~……。

エルレイド 「エルレイッ!」

リベル 「ひゃっ!? な、なに?」

私は愚図ついて落ち込んでいると突然目の前に一匹のポケモンが現れた。
たしかエルレイドってポケモンだったとおもう。
どうして私の前に?

リベル 「うん? あなたその手に持ったの……」


私はふとエルレイドの手に持たれたカードに注目する。
よく見るとそれは番号札でAと書かれている。
て、A?

リベル 「えぇ~っ!? あ、あなたが相方なんですかぁ~っ!?」

私はあまりの衝撃に飛び上がる程驚いてしまう。
いや、だって……ポケモンだよ?」

エルレイド 「エル! エルレイッ!」

リベル 「どこに行くの? ついて来いってこと……?」

突然エルレイドは走り出すと少し離れた場所で私に振り返り立ち止まる。
どうやら呼んでいるみたい。
私はエルレイドの先を見る。
そこは会場の通用口だった。




ルシフェル 「……ご苦労様、ありがとうエルレイド」

エルレイド 「エルレイッ!」

リベル 「はぁ……はぁ……は、走るの苦手です」

私は走ってエルレイドを追いかけると通用口の中頃で立ち止まった。
まだ昼間なので電気も着いていない通用口はとても暗い。
その奥にはエルレイド、そしてその隣に漆黒のローブを深く被った誰かがいた。
リベル (さっきの声……女の子? でも、凄く不気味……まるで幽霊)

目の前には一人の人間がいるはずだけど、曖昧で確認できない。
思わず不気味だと感じてしまった。

リベル 「え、えと……あなたがそのエルレイドのトレーナーなんですか?」

ルシフェル 「……はい」

リベル 「ということはあなたが私のパートナー何ですね……」

うぅ、何だか怖いよぉ……私大丈夫かな?
喰われたりしないよね?

ルシフェル 「ルシフェル……よろしくお願いします」

リベル 「あ! わ、私リベルです!」

ルシフェル……それがこの人の名前?
と、とにかくまずは仲良くなりましょう!
そうすればきっと上手くいきます!

リベル 「あ、あのっ! ど、どうしてこんな場所で私を呼んだんですか?」

ルシフェル 「太陽……苦手だから」

は? 太陽?
まあ、たしかに今は昼だから太陽は照っているけど……。

リベル 「あ、もしかして太陽アレルギーって奴ですか?」

なーんて、そんな訳ないか、なんて思っていると。

ルシフェル 「……はい」

リベル 「は……はは」

思わず苦笑い。
この人……バンパイアじゃないよね?










ミク 「ふぅ……結構な人数ね」

謎の主催者Kから届いた一枚の招待状、ハルカちゃんたちにも届いたようで、私たちは参加することになった。
私としては亡き父の相棒であったバンギラスとの呼吸合わせの場になればと思っている。

ミク 「それにしても相方はどこにいるのかしら?」

私は番号札を片手に会場をうろうろしていたが一向に私と同じLの番号札をもったトレーナーが見つからない。

ミク 「ん? 歌……?」

近くから歌が聞こえてきた。
私は歌に引き寄せられるように近づくと。

サティ 「泣かないことが強いことなんて誰が言ったの?」
サティ 「思いっきり泣いて、ほら顔上げて♪」
サティ 「傷付くことから逃げてた昨日にサヨウナラ♪」
サティ 「まだ風は強いけど~♪」

女の子だ、小さな女の子。
金髪の少女で七五三……いや、五五三位のいびつな髪型の小さな少女が非常に済んだ歌声を披露している。
見ると回りには彼女の所持ポケモンと思われる一団が楽器を演奏している。
さしずめポケモン楽劇団といったところかしら?
どのポケモンも非常によく訓練されており、見た目はバトルしても強そうだ。

サティ 「勝ち負けだけじゃわからない、本当の強さ知るために、全力でぶつかって、跳んだら深呼吸、信じる道進め~♪」

勝ち負け……か。
たしかにポケモンバトルは常に勝利と敗北の二極に別れる。
父はひたすらに勝利を求め修羅となった。
だがその父もハルカちゃんの父、センリには本当の意味では勝利できていない。
本当の強さ……たしかにそれはなんなんだろう?

サティ 「鳴らせ♪ 鳴らせ♪ 心のファンファーレ♪」
サティ「響け♪ 届け♪ 今高らかに♪」
サティ 「負けたから終わるんじゃない♪ きっと、きっと始まるさ♪」
サティ 「君の♪ 胸の♪ 真ん中で~♪」

パチパチパチパチ……!

私は素直に拍手を送った。
その少女の歌声、そしてポケモンは見事だった。
そしてなにより……彼女の歌声は私に響いた。

サティ 「拍手感謝かしら、おねえさん♪」

ミク 「見事ね、あなたも参加者かしら?」

サティ 「そのとーりかしら! このポケモントレーナー一の策士家サティはいかにして相方を素早く見つけるか考えた時この方法を思い付いたかしら!」

ミク 「そうね……見事だったけど、歌っていたら相方の番号札に気付かないんじゃないかしら?」

少なくとも彼女は相当歌に没頭していた。
すると、彼女は。

サティ 「はぅっ!? しまったかしら!? それは計算外かしら!?」

ミク (あら、予想以上の驚き……でも)

彼女の策は見事に的中している。
彼女の手持ちと思われるプクリンが持ったAの番号札。
あの目立つ歌と合わせればすぐにわかる。
どうやら簡単に見つかったわね。

ミク 「ミクよ、よろしくね相方さん?」

私はそう言って番号札を見せる。

サティ 「ああ-っ! あなたがサティの相方だったのかしら-っ!?」

どうやら名前はサティというみたいね。
ふふ、そそっかしいけど放っておけないパートナーね。
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ルビサファ出会って誰おまタッグ大会 合流編 第2話

マリア「……ミカゲの奴馬鹿にして……!」

一度は認めたけどやっぱりあいつは大っ嫌い!。
絶対にこの大会で赤っ恥かかせてやる!

カミヤ「でもマリアちゃん、タッグは相方と相性も重要だよ?」
カミヤ「マリアちゃんに相手に呼吸を合わせることできる?」

マリア「は? なんで私が他人に合わせないといけないのよ!」

カミヤ(これは……マリアちゃんのパートナーご愁傷様かな?)

マリア 「! そこのあなた!」

私は一人の少年を見つける。
みたところどこにでも居そうな短パン小僧だけど……。

タクマル「え? オイラ?」

マリア「そう、あなたよ。あなたのその番号札……」
タクマル「え? Rだけどもしかして……」

マリア「やはり、あなたなのね……はぁ」

カミヤ「ちょ……いきなりため息は失礼だよ」

……これはため息もつきたくなる。
よりにもよってRがこんなどこにでも居そうな短パン小僧だなんて……番号札変えてもらえないかしら?

タクマル「なんか馬鹿にされてる? こうみえてオイラはダブルバトルのエキスパート! こういう大会は大得意さ!」

マリア「なんですって? あなたが?」

タクマル「そうさ!」

マリア「面白いわね
、タッグを組んであげる……精々頑張りなさい」

ふふふ……どうやら思ったより使えそうね、ミカゲ……首を洗って待ってなさい!

タクマル「なんでこのねーちゃん、こんなに上から目線なんだろ……?」










シズク「ヒミコはいないか……まぁ当然か」

名手ばかり集めたのに謎の主催者Kからの招待状は常に動きつづけ、一箇所に留まらない私にも届いた。

私に届いたのならヒミコにも届いている可能性がある。
とはいえ、必ずしも来ている訳じゃないか。

シズク(ヒミコはこういう大会が大好きだったわね……ううん彼女はポケモンが好き、そしてポケモンを愛するトレーナーが)

でも、それゆえに疑問を抱いてしまった。
彼女は純粋過ぎた……。
私だって衝撃は少なからずあるし、疑問だってある。
でも、どんな不平不満だって歯を食いしばって我慢しないといけない時だってある。

彼女はそこから逃げた、だから私は彼女を捕まえてひっ叩く。

シズク 「あ……相方発見」

なんて感情を内で剥き出しをしていると、ようやく相方の発見をする。
白衣を着た少女、医者というより科学者ね。

シズク「失礼しますが、あなたがHの人ですか?」

カレン「え? ええ……そうよ」

シズク「シズクです、一時限りですが以後よろしくお願いします」

私はそれで会話を終了する。

カレン「カ、カレンよ……よろしく」

なんだか彼女、呆気に取られている。
ちょっと気をピリピリしすぎたかしら?
まぁ、後はバトルで語るとしましょう。

シズク(……やはり、どうにも意識しすぎているかもしれませんね、いけないいけない)










レン「お兄ちゃん以外にも結構色々な人も来ているわね」

さっき、さっとこの会場を一周してみた。
すると結構見たことある人が多くて気付く。
正直お兄ちゃんとチカちゃんがいたのは驚きだった。
まさかいかにも参加しませんが、二人もいるなんてね。

フィーナ 「あ、君が私のパートナーなんですね」

私は瞬時に表に入れ代わる。
パートナーが見つかったのなら後は表に任せましょうか?

レン「あはっ♪ それじゃおねえちゃんが僕のパートナーなんだ!」

そう居って番号札を見せあうと確かにIと書いてあった。
よかったぁ、よくわからないけどあっさりパートナー発見だよ。

フィーナ「えと、フィーナよ、よろしくね」

レン「レンだよ♪ よろしく!でもよかったぁお姉ちゃんみたいな優しそうな人で!」

フィーナ「わ、私もよかったかな? 物騒な人じゃなくて」

あはは、よしこれで後はバトルだね。
でも僕ダブルバトルとか苦手なんだよねぇ。










ペル「ユウキもエメルももう見つけてる……どうしよう」

私は遠目にユウキとエメルが相方を見つけたのを確認した。
私は……まだ、その場から動いてもいない。
私はユウキから考えること、そして行動することを教えられた。
今の私は昔とどれくらい変わったんだろう……少しは、変われたかな?

ノリカ 「さてさて~Oの人はどこでありますか-っ!」

ペル 「!」

O……私だ。
そうか、あの娘が私のパートナーなんだ。
彼女は私にまだ気付いていない。
当然か、私はまだなにもしていないのだから……。

ノリカ 「うーん、ここにもいないでありますか、しょうがない次の場所に……」

ペル 「……あ」

どうしよう、行っちゃう……私は、ここにいるのに……。
頑張らないと……頑張らないと……。

ペル 「あ……の」

ノリカ 「はい?」

私はなんとか少女を振り向かせることに成功する。

ペル 「O……私……です」

私はそう言って番号札を見せる。
すると少女はようやく私に気付いてくれた。

ノリカ「おー! そうでありますか! 私ノリカ軍曹と申します! これからよろしくお願いしますでありますっ!」

ペル「ペル……です」


ノリカ「はっはっは! 暗いですよ! もっとスマイルスマイル♪」

ペル 「……」(困)

……どうしよう、この娘ペラップみたい……すごく付き合いづらい。

それから私は終始困りっぱなしだった……。











イヴ「番号札Sか」

S……不思議と縁のある言葉だな。
俺は自分の番号札をみて少し感慨ぶかくなる。

ピリピリしない大会も久しぶりだ。
シャベリヤの奴に誘われて参加したが、気を抜くのに調度良さそうだな。
エーフィたちも久しぶりに気を抜けるだろう。

イヴ 「さて……肝心の相方は誰やら?」

どんなトレーナーでも、それはそれで訓練の一環としよう。
そろそろ続々パートナーも見つかりつつあるようだな。

イヴ「む……あの娘?」

俺は少し遠くに見覚えのある顔が入ってきた。
あれは……トキワの?


アムカ「ふみゅ、眠い……」

サヤ「もう少し我慢してね、カタナ」

アムカ「カタナじゃないもん……アムカだもん」

イヴ「失礼、君達も参加者かな?」

サヤ「!? あなたは……どうやら、相当の大物が混じっているようですね」

イヴ「ストップだ、俺はただのポケモントレーナーだし、君もただのコーディネーター……それでいいのではないか?」

アムカ「ふみゅ、サヤ、知り合い」

サヤ「そういう訳じゃないわ、ただしっているだけ」

イヴ「それもたまたまな……」

アムカ「わかんない」

そう、たまたまだ。
光の頂点に居続けると嫌でもや闇の情報が入ってくる。

イヴ 「まぁ、私は今回は勝ちにこだわるつもりはない、君達が相手ならば手加減もしよう」

私はそう言って微笑む。
双子の暗殺者、刀と鞘……まさかあの伝説の存在がこんなあどけない少女とは恐れ入る……どうにも私の周りにいる子供たちは大人顔負けの子供達ばかりだ。

サヤ「ちなみに、カタナは私のパートナーじゃないですよ?」

イヴ「む? そうなのか? 一緒にいるからてっきり……」

サヤ「カタナはそもそも参加者じゃないですし」

アムカ「だからカタナじゃないも~ん……ふみゅぅ……」

なんだか目を開けた方の少女は今にも倒れそうだった。

サヤ「無理に付き合わなくてもいいのに」

アムカ「みゅぅぅ……サヤと一緒いたい」

イヴ「ブースタ-、彼女を」

ブースタ-「ブゥ~♪」

俺はモンスターボールからブースターをだすと、すぐさま倒れかかった精神の幼い方の少女を支える。

アムカ 「ふみゅ~♪ ふかふか~暖か~い♪」

ブースターの背中に崩れ落ちた少女はご満悦だった。
喜んでもらえればなによりだ。

サヤ「どうも、すいません」

イヴ「なに、気にすることはない」

サヤ「ところでイヴさんの番号札は?」

イヴ「Sだ、そろそろ探しに行こうと思っていた」

サヤ「あ……私もSです」

イヴ「……」

互いに取り出した札に刻まれた文字はS。
どうやら、灯台下暗しということか。

サヤ「気付いてました?」

イヴ「まさか」

気付いていたならこんな回りくどいことしていない。
サヤ「改めてまして、サヤといいます」

イヴ「イヴだ、よろしく」

アムカ「アムカァ~……ZZz」

ふ……光の頂点を極めた者と闇の頂点を極めた者のタッグか……どうなるかな?

ルビサファ出会って誰おまタッグ大会

本作品はポケットモンスターを題材にした小説です。

内容は現在キナの小箱にて公開中の作品、ポケットモンスタールビ-編とポケットモンスターサファイア編に準じています。

それでは興味のある方はそのままどうぞ。






シャベリヤ「さぁ、お集まりの皆さん、謎の主催者K主催のこのポケモンバトル大会にお集まり下さいましてありがとう!」
シャベリヤ「今回見慣れない方々も多いでしょうが双方の交流も兼ねて、タッグバトル大会を開催します」シャベリヤ「まずはみなさん、同じ番号札の相方を見つけてください!」





ユウキ「……かったる、なんで来ちまっただろうな……こんな場所」

俺は少し過去を振り返って見る。
えーと、確かある日招待状が着たんだよな……謎の主催者Kから……て、どう考えてもあの馬鹿だろうな。
無視してもよかったが息抜きには調度いいかと思い、来ちまったが……。

ユウキ(結構な人数いるじゃねぇか……かったるいなぁ)

まず相方を見つけるのがかったるい。

ユウキ(番号札J……一体どこにいるのやら)

俺は番号札を掲げながら相方をさがす。
会場には結構な人数がいるため探すのも一苦労だ。

メフィー「あ、あの……」
ユウキ「ん?」

いきなり後ろから声をかけられる。
誰かと思って振り返ってみるとそこには番号札Jを掲げた一人の女の子が立っていた。

メフィー「えと……あなたが私の相方なんですね、私メフィーっていいます」

ユウキ「メフィーさんね、俺はユウキ。まぁよろしく」

メフィー「あ、はいよろしくお願いします!」

俺は淡泊にそう応えると一応手を差し出す。
すると彼女……メフィーはニコヤカに笑いながら両手を俺の右手に重ねた。
中々好印象を残す少女だと思える。
まあ、とりあえずタッグ相方としては当たりかね?










ハルカ「タッグ大会かぁ……前は散々だったからなぁ」

ノリカ「ハルカ様一人完全に浮いてましたからねぇ」

ハルカ「ぐ……し、しかたないでしょ」

私はかつてミカゲとタッグを組んだあの戦いを思い出す。
いやぁ、あの時の私は若かったわ、今でも十分若いけど。

ハルカ「そういえば、ノリカの番号は?」

ノリカ「私はOですね」

ハルカ「てことはノリカじゃないのね」

私は自分の番号札を見る。
大きく描かれたNの文字、今のところタッグの相相方は現れない。

ハルカ「しゃーない、そろそろ探しにいきますか」

ノリカ「了解であります! それではまた後で会いましょうハルカ様!」

ハルカ「うん、じゃ後でね」

私たちはそう言って別れる。
さて、今回はどんな相方がくるのやら。
またミカゲ……なんてことはないわよね?
大体あの娘が参加するわけ……あるか。
あの娘なんでかこういう大会には欠かさず参加するのよねぇ……バッジやリボンもそうだけどあの娘、こういうお祭りみたいなの好きなのかしら。

リュウト「む? 君かNは」

ハルカ「そう、私がNです」

どうやら相方から来てくれたらしい。
とりあえずボケてみる。
相手はヒビキさんと印象が重なる中々の好青年だった。

リュウト「ふざけているのか、竜崎」

おっと、そっちできたか……でもそっちだとLが正しいんだけどねぇ。

ハルカ「冗談はこれ位にしてよろしく、私はハルカ」
リュウト「リュウトだ、よろしく頼む」

ますますヒビキさんと印象被るなぁ……この人。
服装から、口調まで似てる。
実は兄弟かしら?
まあ、そんなことはどうでもいいとしてとりあえず次を待ちますか。










キヨミ「姉さんは何番だったの?」

キヨハ「私はCね、あなたは?」

キヨミ「Bだわ、一緒じゃないみたいね」

私は姉であるキヨハ姉さんに番号札を見せてもらうとそこにはたしかにCと書いてあった。
しかしそれにしても……。
キヨミ「姉さんよく出る気になったわね」

キヨハ「あら、たしかにトレーナーは辞めてブリーダーになったけど、ポケモンバトルは楽しむわよ?」

姉さんはそう言って笑う。
ハルカちゃんに敗れて引退を決意した姉さんがこんなにすぐにバトル大会にでるのは少し意外だった。
考えて見れば、ジム戦やポケモンリーグには参加しないでも、こういったお祭り大会に首をだす位なら考えれるか。

キヨハ「ハルカちゃんも出ているみたいだし……ね

キヨミ「バトルになったら手加減はしないわよ」

キヨハ「ふふ、あなたらしいわ。でも、タッグバトルなんてあなたできるの?」

キヨミ「そんなもの気合いでなんとかするわよ!」

姉さんは私がダブルバトルが苦手だから言っているのでしょうけど、私はダブルでラファにもハルカちゃんにも勝った。
マルチバトルでも負ける気はしない。

キヨハ「……大した自信だけどなにせあなただからねぇ……先が思いやられるわ」

姉さんはそう言うと首を振る。
間違いなく馬鹿にしているわね。

キヨミ 「いいわ、だったらバトルで結果を見せてあげる!」

キヨハ「ふふ、期待しないで待っているわ」

キヨミ「~~~~っ!」

完・全っに! 馬鹿にしているわ!
いいわよ、今に見てなさい! 絶対姉さんの鼻をあかしてやるんだから!
私はそう思うと姉さんと別れてパートナーを探す。

キヨミ「ん? あら、そこのあなた!」

私はキョロキョロと相方を探しているとついに同じBの番号札の持ち主を発見する。
見た所女の子のようでまだこちらに気付いていないようだった。

ツカサ「? あ、あなたが私のパートナーなんですね!」

キヨミ(ん? この娘どこかで見たことがある気がするわね?)

私の声に振り返った少女はハルカちゃんとそれほど変わらない位の少女だった。
ただ、一般人を軽く凌駕するほどの可愛さで、どこかでみた気がした。
もしかして芸能人かしら?

キヨミ「私はキヨミよ、あなたは?」

ツカサ「あ、ツカサっていいます! よろしくお願いします!」
ツカサ(キヨミ……? なんだか聞いたことのある名前だなぁ……誰の名前だったっけ?)

……うーん、この娘全然思い出せないわ。
なぜか顔は知っている気がするんだけどねえ?
まあ、いいか。

キヨミ「今日はよろしくね」

ツカサ「あ、はい! よろしくお願いします!」

よーし、じゃ後はバトルで姉さんをぎゃふんといわせるんだから!見てなさいよ~姉さん!










キヨハ(ふふふ、相変わらずキヨミったらからかいがいがあるわね)

キヨミはあれから耳まで真っ赤にして探しにいったわ。
あまりの形相に周りも退いていたのに気づかなかったのかしら?

キヨハ(さて、後は私のパートナーは誰かしら? あら?)

見ると前方にキルリアを連れた美少年がホワイトボードにCと書いて立っているわ。
もしかして彼かしら?

キヨハ「は~い♪ もしかしてあなたが私のパートナーかしら?」

私はそう言うと両腕で胸を引き上げ、やや前屈みになり、いわゆるセクシーポーズで美少年に近づく。

アルタ「……!」(赤面)
あらあら、可愛いわね、顔を真っ赤にしちゃって、目を逸らしちゃったわ。
この少年には少し刺激が強すぎたかしらね。
私はそう思うと普通のポーズにもどり、番号札を見せて確認をとる。

キヨハ「番号札C、あなたかしら」

アルタ「……」(コクコクッ!)

少年はまだ赤面したままコクコクと激しく縦に首を振る。
どうやら私のパートナーはこの少年らしい。

キヨハ「キヨハよ、よろしくね」

アルタ「……」

キルリア『アルタです、よろしくお願いします』

キヨハ「! テレパシー? あなたもしかして?」

アルタ「……」(コクリ)
キルリア『はい、僕は喋ることができません……ご迷惑をおかけすることになると思いますが、どうかよろしくお願いします』

あらら、どうやら本当に喋れないみたい。
でもこの子とても面白そう。
ふふ、これはもしかしたら大当りかしら?










カミヤ「ミカゲ……絶対に力を使っちゃ駄目だよ?」
ミカゲ「わかっているわよ、第一こんな大会ごときで手こずる訳ないじゃない。楽勝よ」

マリア「それは聞き捨てならないわね」

ミカゲ「あらぁ? 居たのぉ?」

マリア「! 始めから居たわよ! ていうか一緒にきたでしょ!?」

マリアはそう言うと過剰に反応する。
ふふ、馬鹿みた~い。
やっぱりこの娘、弄りがいがあるわねぇ。

マリア「タッグバトルならあなたには絶対に負けないわ!」

その自信、一体どこから沸くのかしら?
どう考えてもこの娘にタッグバトルなんて出来そうにないけどねぇ?

カミヤ「僕は招待されてないから応援するだけだけど、二人とも無茶だけは絶対にしないで、約束だよ?」
ミカゲ「はいはい、わかっているわよ。それじゃ私はもう行くわよ」

私はそう言うとパートナーを探しに向かう。
……カミヤの奴、心配性なんだから……。
以前の私なら負けるなんて死んでも御免だった。
でも、今ならはっきりと思える、死にたくないと……生きたいと。

私は……もっと『あの娘』と一緒にいたい、色んなことしたい。
だから……。

ミカゲ(今回は無茶せずに楽しむとするわ)

でも、負けるのは嫌ね。
それにしてもパートナーはどこかしら?
さっきから探して居るんだけど全然見つからないわね。

シャドウ「む……君か、Qは」


ミカゲ「あらぁ? ということはあなたなのぉ、私のパートナーは?」

シャドウ「どうやらそういうことになるらしいな」

互いの手に握られたQの番号札、そういうことらしいわね。

シャドウ「……シャドウだ、よろしく頼む」

ミカゲ「ミカゲよ、私の足だけは引っ張らないでよ?」

シャドウ「どうかな……いかんせんブランクが長いからな」

そういうと青年は微笑を浮かべる。
よく見ると私より年下かしらぁ?
ゴタ消しみたいに真っ白な髪だから気づかなかったわぁ。

シャドウ(不完全者か……こんな子供を創るとはつくづく人の業は深いな……)

Fantasy 最新話だよ

ようやく11話完成……ドクターマルスと365日はもうちょい待って……お願い、はぁ……疲れた。


第11話 深きものども―Deep One's―




 海を返せ、我らが海を返せ――!
 海を返せ、我が愛しきあの海を――!

 憎い、それはあまりに憎い!

 奴らさえこなければ、海は穢れていたのに!
 やつらさえいなければ、海は淀んでいたのに!

 海を返せ――海を返せ!
 海を……海を……海を!








「……どうだ、アル?」

 バーバラシティへ旅行に来た二日目、トモエとアルは海上のど真ん中にいた。
 沖から約800メートル、見返せばバーバラシティが見え、また反対を見れば島も見えるという間の位置。
 そんなところに借りてきたボートに乗ったトモエとアルだったが、アルは難しい顔をしながら海とにらめっこをしていた。

「間違いないぞ、やはりこの周囲のどこからかプレートの気配がする」

 プレート、もはやここ最近聞きなれた単語にトモエはため息を付いた。

「まさか旅行に来て、プレートの回収作業になるとはな……運がいいのか悪いのか」

 アルセウスの感知能力はアークスの街ひとつも覆えない弱いものだ。
 そういった点を考えればアークスから200マイルも離れたバーバラシティでプレートの気配を発見できたとなると儲け物と思うべきだろう。

「で、プレートはどこにあるんだ?」

 周囲を見渡せば街、海、島とある。
 街にあるのならば昨日の時点でアルが気づいていただろうから論外として、次に考慮に入れるべきは海か島か。

「それほど深い場所じゃないが、それでも素潜りで潜れる深さじゃねぇぞ」

 トモエは海を覗いて呟いた。
 海はリゾート地とするには申し分のない青をして、太陽の光を鮮やかに透過している。
 穏やか、実に穏やかな様相をしている。

 何がって? 海がさ。

「……一度潜ってみる、トモエは待っていてくれ」

 アルセウスはそう言うとボートから飛び出し海の底へと潜っていった。
 トモエは今回は見守るしか無いなと、船の上に座り込む。
 ふと、空を見上げると今日も変わらずにギンギンと太陽が地上を照らしていた。

「穏やか……か、前回のプレートの時に比べるとあまりに穏やか」

 トモエは今回の件に違和感を覚える。
 いつもアルが感知できるほどの状態の時は何かしらその周囲にプレートが影響を与えていた。
 今回も何かしら影響があるはずなのに、そんな影響は見えないし聞かない。

 ふと、心配になって海の方を見るも、海はいつもどおりの顔しか見せない。



(……海底か、思ったより遠いな)

 アルは潜りながら考えた。
 美しい海は数多の生物達の宝庫であり、穏やかな海流がその場を包む。
 果たしてこのような場所にプレートはあるのだろうか?

 プレートに近づいているのならより自分の感じる感知は近づくだろう。
 だが、今のところそのような気配はない。
 気配がない……というより気配が薄いというべきだろう。

 アルセウスがいくらプレートの気配を探しても、気配はあるのに微弱でまるでその位置が掴めない。

「――ッ! あれは……ゴボッ!?」

 ふと、アルは海底の壁面にポッカリと空いた穴を見つけた。
 ついつい、自分の状況を忘れて声を上げると一気に気泡が飛び出し、海水がアルセウスの中に侵入する。
 しずくプレートを持たないアルセウスでは水中に適応ができないのだ。

 アルセウスは急に酸素を失い、慌てて海面へと上がった。


「――ぷはぁっ!」

 ……助かった、そんな感じだろうか?
 アルセウスは懐かしい呼吸する感覚に包まれながら、海面へと上がった。

「アル、どうだった?」

「プレートは見つからない、だが変な洞窟があったな」

 「洞窟?」とトモエがつぶやくと、アルセウスは海底で見つけた洞窟の分かる限りの詳細を伝えた。

「ふーむ……海底洞窟ねぇ」

 トモエは少し考察する。
 海底に洞窟があるのはまぁいいとしよう。
 だが、そこになんの意味があるのだろうか?

「アルはプレートがそこにあると思うのか?」

「確証があるわけないだろう、かもしれない程度だ……だが、ポケモンにとってはどうやらプレートは最高の餌らしいからな」

 もしポケモンがそれを見つければあのスリーパーたちのように持ち去る可能性はある。
 プレートはそのポケモンに絶大な恩恵を与える、そしてそれと同時にその周囲には奇妙な現象を起こすことがあった。

「海底の先に持ち去ったプレートが置かれている可能性はわかった、だがどうやって行くよ?」

 トモエがひどく冷静な言葉を言うとアルもぐうの音もでない。
 人間のトモエは勿論のこと、アルも水中では息が続く限りしか活動できない。
 気をつけないといけないのは、帰りの分の酸素と体力も用意しないといけないということだ。

「エラ呼吸できるならともかくなぁ……?」

 トモエもアルも途方に暮れるしかなかった。
 ことアルにおいてはまさに万策尽きた。
 自分が水中に潜れる時間はどれくらいだろうか? 5分? それとも10分?
 どちらにしろ、並大抵の時間では奥まではたどり着けないだろう。

「規格外のことは規格外の奴らに頼るしか無いか……」

 トモエがボソッ呟いた。
 トモエにはまだ策は残っている。
 だが、この策だけはどうしても使いたくはなかった。

「とはいえ……背に腹は変えられぬ、か」

「トモエ?」

 その日の正午、彼らはバーバラシティへと帰った。
 ある人物に、プレート捜索の協力を頼むために。




「なぁトモエ……規格外ってどういうことだ? 一体誰に頼るつもりなんだ?」

 アルはずっと考えたが、トモエが思いついた規格外など分かるはずもなかった。
 もしかしたらトモエの知り合いが、この街に住んでいるのだろうか?
 そんな風に考えているとふと、トモエの足が浜辺から離れたショッピングモールのテラスで止まった。

「あいつだよ」

 トモエが指す先、そこには何かの書類を険しい顔で読む赤毛の女性の姿があった。
 それを見て……アルセウスの顔が険しくなったことは言うまでもないだろう。

「絶対反対!! なんであいつらに頼まないと行けないんだ!!」

「おめーらうるせーである、つーか何しに来た?」

 近くで聞きなれた声で叫ばれようものなら、特にその声が聞きたくもない声なら尚更声は不機嫌に、顔は険しくなるだろう。
 ドクターマルスの鋭い眼光はアルセウスを睨む。

「ダーリン、どうしたんだロボ?」

「ああ、今日はちょっとドクターたちに頼みがあってな」

 テラスの椅子に座るもう一人の少女アリサはトモエが現われると上機嫌だった。
 だがトモエの言葉を聞くと、ドクターは「はぁ?」と信じられないという顔というべきか、相手をナメている顔というか、とにかく変な顔をした。
 まぁ、当然といえば当然であろう。

「トモエ~、ついに頭が壊れたあーるか? なーんで、敵であるお前らの頼みなんぞ聞かないといけないんである?」

「トモエ、ドクター共に頼む必要などない! 行くぞ!」

 まぁ、両者の意見は間違ってはいない。
 ドクターの言うように、トモエはドクターたちの敵だ、それは逆を言えばアルセウスたちにとってもそうなのだ。
 二人は明らかにそれを嫌がるような仕草をするのだから始末が悪い。

「まぁまぁ、聞けよドクター。これはドクターにも損な話ではないぜ?」

 しかしトモエは食い下がる。
 もとよりこれしか手は思いつかないのだから仕方がない。
 損得と言う言葉を聞くと、ドクターの顔が僅かに動いた。
 少し興味を持ったのだろう、そうトモエは確信すると本題をぶつけた。

「プレートが見つかったんだが取りに行けない。場所を教えるという報酬の代わりに、代価としてドクターの天才的科学力を貸して欲しい」

「ん? おいトモエプレートは……!」

 ある矛盾を聞いて思わずアルセウスは本当のことを言おうとしてしまうが、そこはドンッ! と横腹をトモエに叩かれて目で黙れと言われてしまう。
 その瞬間アルはトモエに対してどう思ったろうか?
 少なくとも言わぬが仏は確かであるが……。

「……プレート、ねぇ」

 ドクターは考える仕草をした。
 顎に手を当て、何かを計算する。

「……断るある」

「ママ、どうしてロボ?」

 計算した結果、ドクターが出した答えはノーだった。
 食い下がったのは珍しくアリサだったが、ドクターは実につまらなさそうに答えを言った。

「理由は簡単、誰が好きでトモエとアルセウスに力を貸すかであーる!」

「ふん、こちらとしても頼りたくなど無いわ!」

「第一、私がプレートを集めるのはお前らにパワーアップされると厄介だからであーる、お前らが集められないのならそれで結構!」

「え……でも指令書には……むぐっ!」

 聞けば最もの意見ではあるが、突然アリサの口をふさぐドクターマルス。
 指令書……? トモエもその言葉が頭に引っかかった。

(ダークプリズンがバーバラシティで行動しているのか?)

 指令書というと、もしかしたらドクターが険しい顔で見ている書類だろうか?
 気になって見ると、その視線に気づいたドクターは書類を裏返した。

「ほらほら、さっさとどっか行けであーる! 今日は見逃してやる!」

「ふん! 言われなくとて! いくぞトモエ」

「……仕方ない」

 アルセウスはトモエの袖を引っ張るとその場を去る。
 トモエとしてもこれ以上ドクターに食い下がっても印象を悪くするだけと理解した結果だった。

「……で、これからどうするのかなアルセウスさん?」

 形で言えばあの提案を蹴ったのはアルだ。
 トモエは冷ややかに笑いながらアルを流し目で見た。

「ふん、敵の力を借りる必要なぞ無い……第一汝こそ、プレートを見つけた等と嘘をついてからに」

「嘘はバレなきゃ嘘じゃないって言うだろう?」

 まぁ今回はトモエも嘘をついたし、結果は仕方が無いかも知れない。
 しかし結論を認めても事態は動かない。
 色々と気になることはあるが、まずはプレートをどうにかするべきだろう。

(はぁ……困ったね。どうしようか)

 しかし考えども考えども海底洞窟に向かう方法が思いつかない。
 秘伝の技のひとつ(地方によるが)、『ダイビング』が使えれば向かうこともできるが、生憎使えるポケモンがいないし、ひでんマシンもない。
 潜水服に酸素ボンベは借りることもできるが、こいつは潜水の資格がいる。
 向かう方法はありえそうで、ありえない……なんとも歯がゆい展開が待ち受けているじゃありませんか。
 「はぁ……」と、もう一度溜息をつく、一人と一匹は途方に暮れている。

「むてきんぐ、『でんじほう』」

「ポリ~」

 突然だった。聞き覚えのある声が聞こえると瞬間とてつもない電圧の一撃がトモエたちに放たれる。

「っ!? アル!」

「わかっている!」

 トモエたちは一瞬早く反応してその場から立ち退き、声のした方を睨みつけた。
 そこにいたのは間違いない、ドクターマルスとポリゴン2だった。

「不意打ちとはやる気らしいな……昨日は決着がつかずうやむやだったが、ここで決着をつけたいのか?」

 トモエはニヤリと笑った。
 少々イラついていたこともあり、さながら喧嘩をふっかける形で着たドクターマルスが丁度よく思えた。
 だが、ドクターマルスはそんなトモエをあざ笑うか、あるいは面倒くさそうに流して言った。

「落ち着け、これはいわゆる挨拶代わりというやつであーる」

「挨拶だと? ふん……一体何を考えているんだドクター?」

 アルセウスは鼻で笑うようにそう言った。
 体はいつでも動かせるように準備万端だが、不思議なことにドクターマルスには初めから今まで殺気の欠片もない。
 それはどこか今までの彼女を知っていると不気味で、珍しくアルも冷や汗を流していた。

 魂胆が読めない、だから彼女もいつでも不穏な動きをしたらドクターに致命の一撃を与えられるように構えているのだ。
 勿論ドクターもそれがわかっているのだろう、分かっているからアルを鼻で笑う。
 もとより徹底して馬の合わないドクターとアルだ、酒を呑むとそれが嘘のように仲良くなるが普段はこの通り、というところだろう。

「……協力してやるである」

「は?」

 それは呟きのようだった。
 あまりにドクターは小さく呟いたのでトモエも一瞬聞き逃してしまう。

「だから! 協力してやると言っているであーる!」

「協力? そいつぁありがたいが一体どういう風の吹き回しだ?」

 なんと一度はこまねいたにも関わらず、ここに来て急に掌を返して協力すると言っているのだ。
 トモエからすればまさに渡りに船ではあったが、この状況はあまりに怪しすぎる。

「……ふん、お前らには関係の無いことであーる。ほれ、こちらの気が変わらないウチに付いて来いである」

 ドクターは一瞬目を細めると、すぐに踵を返してトモエたちに背中を向け、歩き出した。
 トモエとアルは互い顔を合わせて考える。
 素直に付いていっていいものだろうか?
 少なくとも彼女が彼らの敵であるのは事実だし、いくらなんでも意見を変えるには早過ぎる気がした。

 だが、ここに選択肢はない。
 少なくとも彼らには海底洞窟へと行くことなどできないのだから。

「……行こうアル」

「どうなっても知らんぞ……」

 アルはしぶしぶそう言ってドクターの後ろを追うのだった。
 果たして鬼が出るか、蛇が出るか?
 それはまだわからない。





「あ、ダーリーン! こっちロボーッ!」

 観光客たちがいる海岸から少し離れた海辺に行くと、そこには巨大な建築物にも見える一機のロボットといつもの乙女ロボがいた。
 ドクターたちが近寄ると周囲には何もないこともあってか、以前のショッピングモールの時とは違い、素早い反応でトモエに気づき笑顔で手を振っていた。

 ドクターはその巨大ロボットの前に立つと振り返り、腕を組んで自信満々にロボットの説明を始める。

「スーパーウルトラデラックスハイパーメガトンロボ四号機、別名水陸両用スバロボ、であーる」

「水陸両用……」

 その巨体は以前にも見かけたことのあるデザインだった。
 まだアルセウスがアークスシティに落ちてくる前あまでは、頻繁にアークスシティを火の海へと変貌させていったダークプリズンの巨大ロボット。
 その巨体はあまりに大きく、まるで山のよう。まるでポリバケツのような無骨なデザインは立っているのが不思議な位細い義足に支えられ、両腕はマニュピレーターとしては機能しなさそうな巨大ドリル。
 大量の火器類も搭載されており、それが戦闘を主軸として造られていることは明白にわかるデザイン。
 一見コミカルで弱そうなデザインだが、実際にはミレリア地方の一軍もってしても止められないほどの戦闘スペックを誇るロボットだ。

 ……まぁ遥か昔にアルセウスの『さばきのつぶて』で破壊されたわけだが。

「こいつで行けば海の底どころか地球のコアまで到達してやるであーる」

「おい、ドクター……たしかにこいつなら海底に行けるだろうが洞窟はこんな巨体入らないぞ?」

 あまりの巨体に呆れたように言ったのはアルだった。
 洞窟の入口のサイズは少なくともアルセウスがギリギリ入れるくらいのサイズしかなかった。
 この巨体はゆうに50メートルはある、こんな巨大ロボットが入れるわけがない。

「ふむ、ポケモンレンジャーも使っている小型ボンベ貸してやるである、入口付近に着いたら勝手にしやがれ」

 そう言うとドクターは口に付けるだけの小さな酸素ボンベをトモエとアルに渡した。
 ポケモンレンジャーも水中ミッションの際使っている品で、水圧40にも耐え、2時間水中に潜れるという代物をどこでドクターが手に入れたのかはわからないが、入り口付近からは自力とのことだった。

「アル、海流とかは?」

「穏やかなものだ」

 それを聞くとトモエは安心する。
 海流が早いと、いくらなんでも生身で突入するのは難しい、どうやらこれなら簡単そうだなとトモエは安堵した。

「でも、ドクターたちはどうするんだ? 俺たちだけじゃプレートをゲットしちゃうぜ?」

「ふん、アリサとむてきんぐに向かわすである」

 ドクターはそう言うと予め開いてあったコックピットへと乗り込む。

「あ!おい! 俺達はどうすれば!?」

 最後、そう聞くとドクターは。

「足にでもしがみついてろである!」

 そう言ってコクピットに乗り込み、ハッチを閉めた。
 瞬間巨大ロボが起動して、動き出してしまう。

「ええーい! あのうつけめ! 非常識にも程があるだろう!」

 慌てて酸素ボンベを口に加えたトモエとアルは直ぐ様巨大ロボの足にしがみつく。
 見ると手馴れたように反対側の足にはアリサとポリゴン2がしがみついており、その巨体はゆっくりと海の中へと沈み込んでいった。



(聞こえるかトモエ、己のテレパシー聞こえるか?)

(アル? どうした?)

 水中ということもあり、喋ることのできないアルはふしぎプレートを体に取り込むとテレパシーを使いトモエに話しかける。
 トモエは伝わるか伝わらないかはわからないが、テレパシーを送るイメージをする。

(気をつけろトモエ、この海何かおかしい気がする)

(おかしい……?)

 トモエはドクターの巨大ロボにしがみつきながら周囲を見渡した。
 別にどうということはない、非常に穏やかな海だ。

 やがて巨大ロボは海底洞窟の側に着けると、静止してGoサインを出す。
 ここからは自力で泳いで行けということだろう。

 トモエとアルは顔をあわせて頷き合うと海底洞窟に向けて泳いだ。

(たしかに穏やかだ……だが、この違和感はなんだ、なにか……なにかがおかしいぞ?)

 そう、トモエも何かおかしいと感じていた。
 それがなにかわからなかったが、泳ぎながら周囲を見渡すとあるひとつ足りないものにようやく気がついた。

(生物の営みがない? そんなことがあるのか?)

 そう、豊かな海で知られるバーバラシティ周辺の海にはあるまじき姿を今、見せているのだ。
 確かに海は綺麗で流れも穏やかだが……なにもいないのはおかしい。
 そう思っていると、突然異変は背後から襲ってきた。

 ゴボォッ!

 突然大量の気泡が漏れる音が後ろからした。
 トモエたちは慌てて後ろを振り向くと、そこにいた存在に驚愕した。

『う、うわぁぁぁ!? い、一体何がおこっているであーる!?』

 なんと、後ろを振り向くとそこには巨大ロボに絡みつく巨大ななにかがいた。
 なにか……というと、一言で言い表せるが、言い表わせない気もするとんでもないものだった。

(オクタン……なのか?)

 そう、それは紛れもなくオクタンなのだ。
 ではなぜにクエッションマークがつくというのか?
 それはサイズだ。

 なんとそのオクタンは50メートルあるドクターの巨大ロボに負けないほど大きく太く柔軟な足をロボットに絡ませて身動きを封じている。
 慌ててアリサとむてきんぐはドクターを助けようと向かうが、これは危険と感じトモエはアリサの腕を掴んだ。

(馬鹿っ! あんなでかいオクタンに正面から向かってどうになる!?)

 水中では言葉発せない、そう思うことしかできない。
 それゆえにアリサにトモエの心配する気持ちは伝わらない。
 必死にもがいてドクターの元へと向かおうとするが、トモエも必死でアリサを抑えつけた。

(!? トモエ、何か来るぞっ!?)

 突然トモエにアルのテレパシーが送られてくる。
 なにか……それはオクタンたちの後ろからやってきた。

 それは黒い塊で、大きさはゆうに100メートルはあろうという大きさだ。
 まるで流動的に形が変わり、それは一心不乱に海底洞窟へと向かってくる。
 その進路上にあったトモエたちは驚愕する。

(テッポウオの大群!?)

 なんとテッポウオたちが体を寄せ合わせて一丸となって海底洞窟を目指すのだ。
 トモエたちはその強大な塊相手には為す術もない。
 あっという間にその体はテッポウオの大群に飲み込まれたのだ……。





 突然襲う、巨大オクタン、そして大量のテッポウオ。
 絶体絶命のドクターと、トモエたち。
 彼らは一体どうなるのか?

 だが、ここからはしばらく彼らから目を離してもらいたい。
 これから少し観てもらうのは、まさに真相、まさに深き闇。





 ニクイ、ニクイ、ニクイ――!
 ナゼヤッテキタ、ドウシテウミヲウバウ!

 ニクイ、ニクイニクイ!
 ワレラノウミヲカエセ、ワレラノウミヲトリモドセ!

 それはまるで悪魔の慟哭だった。
 人の言葉では言い表せないような声でまるで泣き叫ぶように呪いの言葉をつなげ続ける集団が存在する。

 そこはどこなのか?
 それは知る由もない、だがそこはロウソクの光が無ければ真っ暗闇の洞窟であり、巨大な空洞だった。
 空洞の壁面はまるで常に水が染み出すように湿っており、それだけの湿度を持つのにコケさえ生えない。
 空洞の中央にはドクターの巨大ロボさえ入りそうなほど広い広間と祭壇があり、その祭壇の下には呪いの言葉を呟くように祈る集団がいた。
 皆一様に漆黒の見窄らしいローブに身を包み、その視界は見えない。
 それは人なのか? 一見するとそれはヒトのカタチを何かという印象さえ受けるだろう。
 まるで言葉だけで人が殺せそうなほどの激しい怨念を振りまいて、ただ祭壇に祈る集団はまさに邪教徒の様相。

「ふむ、ふむふむ。なるほどこれが白人がこの国に訪れる前から存在していた邪教か。実に興味深いかな、かな?」

 ヒトのようなソレらは、突然聞き覚えのない男の声に一斉に振り向いた。
 そこにいたのは、赤い燕尾服を着て、黒いマントを纏った40代くらいの初老の男性だった。
 かなり特徴的な喋り方をして見た目においても一度見れば忘れられないであろう出で立ち。
 髭を生やして、見た目より老いたイメージを与えるその男は妙に笑顔でその様子をみていた。

 だがソレらはその異物に対して牙を向くだろう。
 一斉に振り返ったソレらは表情はわからないが、皆一様に暗闇の奥から目だけを光らせている。

 ニンゲン、ニンゲンダ。
 ドウスル、ドウスル、ドウスル?
 コロソウ、コロシテシマエ、ニンゲンハコロシテシマエ!

 まるで獣のような低い唸り声にも似た恐ろしい声だった。
 ソレらは僅かばかりの話し合いを行うと、直ぐ様男に牙を向く。
 だが男は笑顔を崩さず微動だにしない。
 まるでこれからこの場でティータイムでも始めるかのような落ち着きをもっており、それは余裕すらみえる。

「あ、いや、いやいや。吾輩は敵ではないよ? むしろ協力者」
 目を細めて笑い、協力者だと言っても、ソレらには通用しないだろう。
 もとよりソレらは人間に強い敵意を持っている、人間をみれば襲うのは必然のような存在。

 コロセ、コロセ、コロセ!

 常人ならばすぐにでも発狂してしまいそうなこの状況にも関わらず、男は平然だ。
 そう、彼には絶対の自信があるのだ。
 ソレらは非常に興奮し、今にも跳びかかりそうだった。

「仕方がない……少し痛い目をみてもらうしかないかな、かな?」

 男はそう言うと、懐からモンスターボールを優雅に地面に落とした。
 モンスターボールが開き、そこから一瞬の閃光が放たれポケモンが一匹その場に姿を表す。

 そのポケモンを見たとき、ソレらは恐れおののいた。

 そのポケモンは一言で言えばまるで獣だ。
 強靭な四肢は大型の肉食獣を思い浮かべ、虎柄の体毛を持ち、一番特徴的なのは背中に雨雲を背負っていることだろう。

「ユーピテル、少し彼らを脅かしてさしあげなさい、さい」

 ユーピテルと呼ばれたポケモンは微動だにしなかった。
 別に命令を無視しているわけではない、動く必要が無いだけだ。
 その証拠に、気がつけばまるで煙突が煙を吹くように背中に背負っている雨雲は祭壇の上空に登り、厚い雷雲を形成していたのだ。

 突如祭壇に降る大雨、そして稲光。
 その光はソレらの戦いの意思を削ぐには十分すぎた。

 オオ、イカズチ……ワレラノテンテキ……ニクイ、ニクイ!

 まるで悲鳴、まるで慟哭。
 そのポケモンに睨みつけられるだけでソレらは何も出来はしなかった。

「ふう、落ち着きたまえ、まえ。吾輩は敵ではない、なに、ただここで起きる現実を見たいだけなのだよ、だよ」

 まるで威風堂々として、神のような輝きを持つそのポケモンはあらゆる物を畏怖させるかのようだった。
 だが、そんなポケモンでさえも、その男の前には膝まづくというのか?
 男は終始笑顔であった、絶対の自信、己のトレーナーとしての格に絶対の自信を持つ者の顔であった。

(ふふふ、ディープ・ワンズ……まさか実在していたとはね、わね)

 深きものども……ディープ・ワンズ……それは人ではなき者。
 空想の者、それは決して人とは相容れない。
 そんなオソロシイモノさえ畏怖させるのは、あのダークプリズンの幹部。そうこの男こそダークプリズンの幹部の一人雷神デーランなんのだ。
 デーランはうっすらと微笑む、目を細め、その瞳に何を見るのか?
 隣に佇むポケモンは何も言わない。
 一体これから何が起こるのか……そして何が待ち受けるのか……それはまだわからない。





「――う……ここ、は?」

 トモエが目を覚ました場所は真っ暗闇の洞窟の中だった。
 トモエの後頭部には柔らかい感触があり、近くに唯一その場所を知らせる携帯ランプが置かれている。
 海の匂いがして、朦朧とする意識の中、目の前に一人の少女の顔が映った。

「アリサ……?」

 それはアリサだった。
 アリサが心配そうにトモエの顔を覗いている。

「良かった……目が覚めたロボねダーリン」

 アリサはトモエが目覚めると安堵した表情を見せた。
 ゆっくりと意識を取り戻していくトモエはやがて今の状態に気がつく。
 どうやらアリサに膝枕をされている状態だったようで、ゆっくりと頭を持ち上げるとその場の周囲を見渡した。
 アルセウスとポリゴン2の姿がない、もちろんドクターマルスもだ。

「とりあえず助かったのか……皆は?」

「わからないロボ、テッポウオの大群に押し流されてバラバラになっちゃったロボ」

「……そうか」

 トモエは海底洞窟前の記憶を思い出す。
 突然現れた巨大オクタンに大量のテッポウオ。
 あの周囲の異様な静けさは全てあれらの性なのだろうか?
 トモエは意識を完全に戻すと立ち上がり、洞窟の奥を眺めた。
 洞窟の奥はランプの光も届かないほど長い通路の様相を呈している。

「アリサは大丈夫か?」

「大丈夫ロボ、アリサは頑丈だから」

 ……健気に笑っている。
 本当なら不安で張り裂けそうなはずなのにトモエを心配させないように彼女は自分の気持を抑えているんだ。
 若干無理したような顔で笑うアリサからトモエは薄々そう感じた。
 ドクターたちは無事だろうか、いや、きっと無事だろう。
 俺達が助かったのならどうように飲み込まれたアルセウスたちも無事のはずだし、ドクターは殺しても死なないような奴だから無事に決まっている。
 そう思うと、トモエはようやく動き気力が湧いた。
 とにかくこの場にいても意味が無い。
 まずは動くべきだろう。

「行こうアリサ、ドクター達は無事さ。まずはここがどこなのか調べよう」

「あ……うんロボ♪」

 大丈夫、という言葉を聞くと自分で自分に言い聞かせるよりは安心したのか、少しアリサの顔が和らいだ。
 トモエはアリサの腕を取ると立ち上がらせる。
 携帯ランプを持ち、洞窟の奥へと向けるとゆっくりと歩き出した。

「ダーリン、ありがとうロボ」

「別にいいよ、気にすんな」

 人の心を持ったロボット……それは一体なんなのだろうか?
 アリサは喜ぶ心もあるし、怒る心もある、不安も安心も……あるのだ。
 普通の女の子まるで大差のない不思議なロボット、アリサ。
 普段は陽気でやや暴れ気味の彼女も今ばかりはおとなしくしている。

 普段はそうして欲しいと思うトモエもいざとなると、少しそれが心配であった。
 だからこそ、彼女を元気ずかせようとあれこれ頑張ってしまうのだろう。



「……洞窟かと思っていたが……こいつはもしかすると神殿かなにかなのか?」

 アリサとともにランプの光を頼りに進む気がつけば狭く、圧迫感のあった洞窟とは打って変わり広々とした神殿のような内部へと姿を変えていった。
 見たことのない意匠、奇妙というか……人智の及ばないような訳の分からないデザインの彫刻に、見ているだけで吐き気が起きそうな不気味な壁画がトモエたちの前に現れた。

 一体誰が考えたらこんなおぞましい物が生み出せるのかと逆に感心する。
 まるでこれは……そう、邪悪な神殿って感じだろう。

「……相当年季の篭った神殿ロボね」

 特に印象は受けなかったのか、周りの様子を見ても顔色一つ変えないアリサは興味がなさそうにそう言った。
 古い……そう言えばたしかにこの神殿は相当の年季が篭っていそうだった。
 彫刻も壁画もすでに風化しているのかボロボロであったが、もともとそういう意匠を持って作られたというのが分かるくらいに狂気と熱気を持ってその場に佇み続けている。
 これは人間が作ったものなのか……そもそも何を祀っている、何を描いている?
 何一つわからない奇妙な神殿であることは変わりがない。

「見ているだけで吐き気がするな、アリサは大丈夫なのか?」

「何がロボ?」

 なんともないらしい。
 さすがというべきなのか、当然というべきなのかまだまだアリサには人間的情緒はどこか欠陥を見せている。
 とはいえ、この状況に飲まれないアリサは頼もしいと言えるだろう。
 少なくともトモエはまじまじと神殿の様子を見ているだけで、胸糞悪くなり、吐き気を催しているのだから。

「……一体どこまで奥があるんだ?」

 トモエはうんざりとしながらも今更道をもどるわけにもいかず仕方なく神殿の奥へと向かった。

 カツン、カツン――と、トモエとアリサの足音が神殿内部に響き渡る。
 いくつもの廊下と部屋を通り抜けていくと、やがてトモエたちは神殿の中心部と思われる場所へ着こうとしていた。

 ナグル、グベルベェ、アゲルラアァァ、ナグル、ルルイエ、ゲベルベェ……。

「なんだ……呪文か?」

 それは、世にも奇妙な声だった。
 とても人の発する声とは思えず、それはまるで獣の慟哭だ。
 いや、獣どこからまるで悪魔だ。

 そんな恐ろしげな声で発せられる怪しげな呪文が神殿の奥から聞こえてきたのだ。
 トモエとアリサは神殿内部の柱の裏に隠れて、中心を見るとそこには祭壇があった。
 まるでドクターの巨大ロボも入りそうなほどでかい空間に巨大な祭壇の間がある。
 祭壇の上には何やら蛸のような化物の彫刻が祀られており、その下には漆黒のローブを纏った無数の何かが、呪いのような呪文を唱えている。

 テングルゥ、ナグル、グベルベェ、ナグル、ルルイエ、グルバァァァ……。

「何語ロボか?」

「知るかよ、ていうかあいつら一体何者だ?」

 トモエたちの存在には気づいていないようで、一心不乱に蛸みたいな彫刻に祈りを捧げ続ける謎の集団。
 生臭い潮の香りその場には充満し、腐った魚が出す瘴気がまるで眼に見えるかのようだった。

 ――狂っている、そう、まるでそれは悪魔を召喚するサバトの儀式のようだった。

「グルルル……ッ!」

「ん? 唸り声?」

 突然だった、真後ろから本物の獣のような唸り声が聞こえてきたのだ。
 恐る恐る後ろを振り返るとそこには。

「グルルゥ……レーーン!!!」

「うわぁ!? レントラー!? なんでこんなところに!?」

 なんとそれは激しくトモエたちを威嚇するレントラーだった。
 思わず周囲の状況も忘れて大声を叫んでしまったトモエは慌ててその場を飛び退いた。
 次の瞬間、レントラーの強靭な四肢が宙を舞い、少し前までいた場所にレントラーの鋭い爪が襲いかかる。

 だが、この行動は更に事態を悪化させかねない危険性をはらんでいた。

 ニンゲン!? マタニンゲン!?

 ローブを着た何かは呪文を止め、一斉に振り返った。
 漆黒のローブの先は表情すら映さず、ただボンヤリと赤い瞳が暗闇の奥から光っている。

「う……やばいか、もしかして?」

「絶体絶命ロボ?」

 背中を合わせてレントラーと謎の集団に対峙するトモエとアリサ。

「レーンッ!!」

 雷を纏い飛びかかるレントラー、その牙は雷撃を放ち、噛み付かれようものなら天国に一瞬で行けそうな危険性を持っている。
 だが、トモエたちは大して恐怖はない、とりわけアリサにおいてはそんな感情は皆無だ。

「邪魔ロボ」

 ドカァ! と明らかに普通の打撃音ではない一撃をアリサはレントラーに対し、回し蹴りで放つ。
 1メートルを超えるレントラーの体はいとも簡単に宙を舞い、地面にたたきつけられたのだ。

「お前が味方だと頼もしいわ、アリサ」

 普段こんなのを敵に回さないといけないかと思うとげんなりする反面、いざ味方だと思うとこれほど頼りになる奴はいない。
 トモエは少なからず安心した。

 だが、まだ危険は終わったわけではない。

 ニンゲン、コロセ……コロセ……!
 コロセ、コロセ、コロセ、コロセ、コロセ!

 まるで地獄から響く亡者共怨念のごとく言葉発せられ、謎の集団はトモエたちに迫る。
 コロセコロセと謎の集団は言葉を発し、場の殺気は一秒ごとに増していく。
 その殺気が最高潮に達したとき、彼ら突然飛び掛ってきた。

「う、うそだろっ!?」

 それは人間からすれば規格外。
 4メートルはあろうかという位に大ジャンプをすると、奇妙な粘着性のある液体を撒き散らせてトモエに襲いかかる。
 やばいと思い、アルの力を使おうとした瞬間。

 突然、飛び交ったソレに対して横から無数の『スピードスター』が襲いかかった。
 ローブを、体を切り刻まれて空中を錐揉みしながら落ちる謎のソレ、そしてどこからともなく『スピードスター』を放ったそれを見たときトモエは叫んだ。

「アル! 無事だったのか!」

「当たり前だ契約者よ!」

 白い体毛に覆われた巨体が宙を舞う。
 突然両者の仲裁に入るかのようにアルセウスがトモエの前に降り立ったのだ。

「ポリ~」

「むてきんぐも無事だったロボね♪」

 どうやらポリゴン2はアルセウスと一緒にいたらしく、アルセウスの背中にチョコンと座り無事アリサと再会を果たす。

 ポケモン? ミタコトノナイポケモン?

 突然の奇襲にローブを着たソレ達の動きは止まった。
 失神したと思われる『スピードスター』を受けたソレを見たときトモエは驚愕する。

「人間じゃねぇな……亜人種とでもいえばいいのか?」

 そいつは魚の顔をしていたのだ。
 体を見ても魚鱗を持ち、人と同じような体格をしているのに明らかに人のそれとは違う。
 言ってみりゃ、化物だ。

「……ディープ・ワンズだよ、だよ。彼らは」

 上空から、この化物共とは異なる人間の言葉を発する声が聞こえた。
 トモエ達は上を見るとそこには浮遊するジバコイルの背中に乗る初老の男の姿があった。
 奇妙な喋り方、特徴的な燕尾服にマント、それはトモエたちは知らないが、まさしくダークプリズンの幹部デーラルだ。

「貴様、何者だ!?」

「あ、いや、いやいや。お初目お目にかかる、吾輩はデーラル、まぁなんだ? 君たちが憎くて憎くて仕方がない、ダークプリズンで幹部をやっているものだよ」

「ダークプリズンの幹部!?」

 トモエは驚いた。
 なぜダークプリズンがこのような怪しげなところにいるのか?
 いや、それより幹部?
 幹部クラスがなぜこんな危険なところに?

(指令書……? もしかしてこいつのことと何か関わりあるのか?)

 トモエは海辺での出来事を思い出す。
 その時ドクターは確かになにかの書類を見ていた。
 その書類とこの事態には何か関わりがあるのか?

「おいアリサ、あのおっさんのこと知っているのか?」

「知っているけど知らないロボ」

 曖昧な言い方だった。
 アリサがこの場で嘘を付くとは思えず、その曖昧な言い方も何か意味はあるのだろうが今は考えられない。
 ……というより、考える時間がなさげというべきか。
 その男と対峙したときトモエは動くことができなかったのだ。

 笑っているのに威圧的な目、口元の微笑みも妖しく、そして恐ろしい。

「アリサ君、こちらには邪魔をしないように伝えたはずだが、だが?」

「しかし指令書にはプレートの回収任務が書かれていたロボ、アリサは任務を優先しただけロボ」

 ダークプリズンと関わりのないトモエとアルには分からない会話が繰り広げられる。
 どうにも親しげというわけではなく、どちらかというと陰険なイメージを受ける両者。
 しかし、どうにも余裕を崩さないデーラルという男はニヤリと笑うと、「納得納得」と言って手を叩いた。
 どこまで人をおちょくる気だ、そうとさえ感じさせるデーラルは目を細めるとまるであざ笑うかのように蛸の化物の彫刻に視線を向けた。

「いやぁ、悪かった悪かった。プレートはあそこにあるものなぁ」

「なに……ッ!?」

 よく見るとそこには確かに彫刻の頭にプレートが置いてある。
 だが、なにか様子がおかしいんだ。
 プレートが放つぼんやりとした輝きがない。
 偽物には見えないが、まるで何かが違う。

「本物のしずくプレート!? だが、力が弱い?」

 そう、そのプレートは確かに本物のようだが、今まで見てきたプレートと比べるとあまりに放っている力が弱いのだ。
 今までアルセウスが不思議に思っていた要因、それは未だわからないがそこに確かにプレートはある。

「おいデーラルとやら! テメェこんな化物どもと結託して何をやろうってんだ!?」

 トモエは血気盛んに叫んだ。
 マスタープリズンほどの驚異は感じ無いものの、それでもドクターマルスとは明らかに違う圧迫感。
 それを押し殺すようにトモエはデーラルを睨みつけた。

「別に結託などしていないよ、ただ吾輩は、これから起きる現実をみたいだけだよ、だよ?」

「現実だと……ッ!?」

 アルが訝しげに言葉を返すと、突然その場に地震が起きる。
 ここは海底のはず、今地震が起きたらやばいんじゃないのか?
 そう、恐怖したとき突然祭壇が崩れ始めた。

「さぁ、君たちも見たまえ! 彼らがディープ・ワンズの信奉する神の復活だ!」

「神だと!?」

 祭壇がどんどん崩れていく、地震とともに。
 そしてディープ・ワンズは歓喜する。
 呪いのような祝詞(のりと)を発し、神の降臨を待つ。
 崩れる祭壇のひび割れの中から赤くて太い足が出てくる。
 でかい……とんでもなくでかいというのがわかった。

 オオ、ダゴンサマ、ダゴンサマダ!

「ダゴン……?」

 ディープ・ワンズはそれをダゴンだという。

「ダゴン、古代パレスチナにおいてペリシテ人が信奉する神、語源はヘブライ語の魚と穀物に由来するとされている。現在においては邪神の一体として扱われる」

 冷静に解説するのはアリサだった。
 ダゴンといえば、旧約聖書やあの死霊密本にも登場する海の化物だ。
 もちろん、空想上の存在、だが……そんなものが本当に存在するのか?

 やがて、祭壇は完全に崩れ落ちると、瓦礫を払いのけてその場にその神は姿を表す。
 広場いっぱいの巨体、赤い体の軟体生物。
 それはまさしく。

「ダゴンて……巨大オクタン!? て、外にもいなかったか!?」

「あれをダゴンだとすると、おそらく外でママに襲いかかったのはハイドラだロボ」

 ハイドラ、ダゴンの妻として語られるメスのダゴンだ。
 確かにそう考えるならばつじつまがあう、だがオクタンが神っていうのはナンセンスだ。

 オオ、ダゴンサマ! イマコソワレラノフクシュウヲ!
 ニンゲンドモカラワレラノウミヲ!

 その場に顕現した彼らの神の姿に彼らは歓喜した。
 だがそれは本当に神なのか?
 いくら大きくてもそれはオクタン、ポケモンなのだ。
 たしかにオクタンとしては規格外すぎるサイズではあるが、やはりポケモンに違いはない。

「とりあえず、ここはプレート回収が先だ! その後に巨大オクタンとあのおっさんはどうにかするぞ、アル!」

「わかっている!」

 トモエは瞬時に力を引き出し、空高くと飛び上がった。
 目指すはオクタンの頭上にチョコンと乗ったプレート。
 トモエの手が伸びる、プレートへと。

 だが、暫く静止していたオクタンは突然泣き叫ぶように吠えた。

「~~~~~~~~~~~ッ!!!!!」

 それは言葉にはできない鳴き声。
 図太いようにも感じ、また甲高いようにも感じるその声に神殿が震えた。
 突如、崩落は始まった。

「なっ!? しまった!?」

 空も飛べないのに飛び出したトモエは空中ではどうすることもできない。
 オクタンが暴れ、崩落が始まるとまっさきにトモエは巨大な岩盤の崩落にたたきつけられた。

「がはっ――!?」

「いかん! トモエェ!」

「危ないロボ! 海の水が流れ込んでいるロボ!」

 崩落は同時に海底に作られた神殿に大量の海水を落としていく。
 圧倒的な圧力でそこにいるものは抑え付けられる。
 その間オクタンはなにかをもとめるように大暴れした。
 その暴れ方は半端ではなく、ある者はその強靭な足に踏み潰され、地面は掘り起こされ、崩落は加速する。
 絶体絶命……である。

「ふっはっはっは、これがディープ・ワンズの神か、オクタンとは無粋だがまぁいい……神の正体も知れた、それでは私はこれで失礼するとしよう、よう!」

 神の正体を見て大きく笑ったデーラルは地面に倒れているレントラー、そして自身の乗っているジバコイルをボールに戻すと懐から何かを取り出した。
 それはロープであり、それを体に巻きつけると突然デーラルの姿はその場から消え去る。

「ちっ! あなぬけのヒモとは準備のいい奴め!」

 アルはデーラルが逃げ去るのに舌打ちをするが、この絶体絶命の事態をどうするべきか考える。

「アリサ、むてきんぐよ、協力してくれるか?」

「当然ロボ、ダーリン助けるロボよ」

「ポリ~」

 二人は頷く。
 ここは協力しなければ共倒れ確実だ。

「アリサはトモエを! むてきんぐは己と往くぞ!」

「ポリ!」

 アルセウスは『じゅうりょく』を使い、自身の体重を減らして巨大オクタンに飛びかかる。
 だがオクタンもそれに反応して迎撃に入る。

 オクタンの太い足がアルセウスを襲う。
 だがアルセウスは空気を蹴って、無理やり軌道修正をした。
 そして直後、おなじみのむてきんぐの『でんじほう』がオクタンを襲う。

「オオオオオオオオオオオ!」

 泣き叫ぶようなオクタンの鳴き声、でか過ぎて『でんじほう』一発ではまるで聞いているようには見えない。

「ええい! 少しはおとなしくせんか!!」

 アルセウスは『しんそく』を使い、オクタンに体からぶつかるが、オクタンの柔軟な体が相手では大したダメージが与えられない。
 直後またオクタンの足が横から襲いかかってきた。

「くうっ!?」

 今度は避けきれずアルセウスは吹き飛び、神殿の壁面に背中から打ち付けられた。
 激しい衝撃がアルセウスの体に走る。
 死んでしまうかと思えるほどの激しいダメージに意識は朦朧としそうだったが、彼女は歯を食いしばり立ち上がる。
 すでに海水はかなり侵入し、アルセウスの腰ほどまでに迫っていた。
 急がなければ全員水没してしまう。

「が……は……だ、大丈夫かアル?」

 程なくしてトモエもアリサの手によって救出された。
 頭から血を流し、戦うだけの体力も残っていないであろうトモエだが、必死に立ち上がりアルセウスの心配をしていた。
 その様子を見たアルは少しだけ元気が戻った気がした。
 満身創痍のトモエに心配されるようではまだまだだと。

「オオオオオオオッ!!」

 オクタンの口に集められるエネルギー、それは通常のオクタンが放つそれと比べて何倍の威力差があるのだろうか?
 10倍、いや100倍、それ以上かも知れない。
 そんな危険度が高すぎるエネルギーはまるで虫けらどもをひねり殺すかのように放たれた。
 オクタンの『はかいこうせん』だ。

「うわぁぁぁぁぁっ!?」

 神殿が爆発に飲まれる。
 アルセウスは必死に堪えた。
 アリサとポリゴン2もなんとか直撃は免れ無事のようだが、最後の一撃で神殿が完全に崩壊し、一同は全員が海の中へと沈んだ。

 アルはトモエを探した。
 見当たらない、上、下、周囲……どこを探しても見当たらない。

(トモエ……どこだ……ッ!?)

 突然、赤いモノがアルセウスの顔面を横切った。
 本来ならばすぐに見えなくなるはずのトモエの血が、水面へと登る。
 確信した、トモエは下にいる。
 だが、このままでは命が危ない。

 そう思いアルセウスは直ぐ様トモエを助けようとした。
 だが、オクタンはアルセウスに襲いかかる。
 大きな口を開くと、なんでもない……オクタンはアルセウスを丸呑みにしたのだ。

 これでジ・エンドなのか……そう思われた瞬間だった。

「己の……己の邪魔をするなぁぁぁぁっ!!」

 普段戦いにおいて激情を見せないアルセウスとは思えない怒りの叫びだっただろう。
 ここが海中だということも忘れて、オクタンの体内だということも忘れてアルセウスが叫んだ時、突然オクタンの穴という穴から光が溢れる。
 直後オクタンの内部で大爆発が起こると、オクタンは気絶したように口をぱっくり開いて海底へと沈んでいく。

 『さばきのつぶて』だ、滅多に使わない『さばきのつぶて』をアルセウスはオクタンの内部で使い、体内で莫大なエネルギーをうけきれずに巨大オクタンはノックアウト。

 アルセウスはオクタンの口から飛び出ると直ぐ様トモエを追った。



(――意識が保てない、やばいな……こいつは……死んだかな?)

 トモエはぼーとしながら海底へと沈んでいった。
 痛みはなく、代わりに意識も薄い。
 頭から海中を登る血を見ていると、自分の命があと僅かなのがわかった。

 ……ふと、一条の光が海底へと走った。
 最初は太陽の光かと思ったが、それは違った。
 白い体毛の巨体、アルセウスだ。

 アルセウスがトモエへと急速に近づく。
 まるで泣いているような顔をしてアルセウスはトモエの体を抱きかかえた。
 何も感じることができないはずのトモエが、たったひとつだけ感じたものがあった。

(温かい……アルの温もり……?)

 ただ、暖かかった。
 アルは目の前に漂ってきたしずくプレートを体内に取り込むと、水タイプへと変化する。
 体は青色になり、水中での活動に適応する。

「トモエ、死ぬな……っ!」

 アルセウスは必死にトモエを抱えて海面を急いだ。

 バシャァッ! と水しぶきを上げ、久しぶりの空気を吸うとアルセウスはすぐにトモエを見る。
 トモエは大量の血を失いぐったりとしていた。

「トモエ……トモエ? しっかり、おい……しっかりしろよ?」

 アルの必死に呼びかけ、だがトモエは反応しない。
 いや、できないというのが正しいのかも知れない。
 アルの脳裏に最悪の事態が浮かぶ。

「いや、いやだ……トモエ、死ぬな、死なないでくれ、トモエ!!」

「う、うるせぇ……生きてるよバァカ」

 僅かに動いた、アルの悲痛の叫びにトモエが反応をした。
 アルはその声を聞くと、大粒の涙を流して泣いた。
 トモエは生きている、まだ己を置いてけぼりにはしていないのだと。

「アル……プレートは?」

「ああ、回収したさ」

 アルは首をブルブル振って涙を止めると、トモエに微笑みかけた。
 苦しい戦いだった、いつもより格段に。
 だが、プレートも回収しなんとかお互い無事だった。
 終わりよければ結果よし……ということでいいだろう。





「ふーむ、意外や意外。まさかあのオクタンを倒すとは、いや、いやいやさすがはさすが、アルセウスということろかな?」
「ふむ、しかしそれより気になるのはハイドラを倒したアレはなんだったのだ? カイオーガなどこの海に、このミレリア地方に生息するはずがない、だとするとどこからかトレーナーが持ち込んだというのか? ふーむ」

 ……しかし、忘れてはならない。
 彼らの前に立っているのは強大な悪、ダークプリズンなのだから。
 彼らの戦いはまだ、終りを見せないだろう。

 オーデンはジバコイルに乗りながら考えた。
 神殿での戦いとは別にドクターが戦ったハイドラとされる個体のオクタンを倒した存在。
 それはドクターではありえない、むしろドクターマルスを助けた謎の影。
 そこにいたオクタンを遥かに凌駕した圧倒的海の存在カイオーガ。
 ことによるとダークプリズンにおいてトモエたち以上に驚異になりえるかも知れない存在にオーデンも戸惑は隠せなかった。

「ふむ、まぁいい。この件は我らが現人神に伝えて終了としよう」

 オーデンはそう言うとダークプリズンの本拠地アークスシティへと帰っていく。

 夕日挿し込むバーバラシティ、そこでは人知れず激闘があった。
 だが、この激闘もまだ戦いの序曲に過ぎない。

テーマ : ポケモン
ジャンル : ゲーム

久しぶりに更新

というわけなんで、久しぶりにFantasyを更新しました。
まぁ、こんなブログ見に来るやつぁ滅多にいないだろうが、とりあえず興味がある方はどうぞ♪
ドクターマルスと365日は近日以内に公開したいと思います。




Fantasy

第9話休息 ―date―




 アークスシティの早朝は、この街で唯一の静かな時間。
 多くの住民がまだこの時間は寝床で安らかに朝陽を待ち、一部の人間は太陽が登り始めたこの時間にも関わらず動き回る。

 それは例えば新聞配達、たとえば運送会社、そして例えば……。

「ふっふっふっふ……っ! タルタロス、無理せずついてこいよっ!」

 早朝、車も少なく人ごみも無いこの時間帯はこうやってジョギング、あるいはランニングをする者も多い。
 その一人がこのトモエであり、そして一緒に走るアルセウスとイーブイであった。

「どうもー、おはようございまーす!」

 何度かすれ違い様、彼らと同じくランニングをするジャージ姿のスポーツマンたちに挨拶するときのトモエは爽やかだった。
 常日頃、彼らは常に危機の中にいる。それは戦う度に脅威性を増すドクターマルスの存在に俄に危惧を始めたトモエとアルセウスだった。

 今だ彼らはダークプリズンの主要人物はドクターマルスの他は、ダークプリズンの御大将マスタープリズン以外に知りえない。
 マスタープリズンの破格の強さはその身に感じ、圧倒的な絶望感にさえ感じた。
 もし、ドクターマルスもこのまま際限なく強くなっていったら……?

 最初は笑えた強さもこうまで強くなると馬鹿にはできない。
 そして、数多くいるはずのダークプリズンの構成員、マスタープリズン程の強さは無いにしてもドクターマルスを凌ぐ強豪たちとているはずだ。
 トモエたちには負けは許されない。
 負ければそれは死を意味するだろう、ダークプリズンには人の倫理観など通用しない。死など……奴らからすればただの娯楽だ。
 だからこそ、アルセウスは許せない、トモエは憤りを感じる。

 彼らは強くなることを怠ったつもりはない、常日頃精進し、アルセウスとの特訓も欠かしたつもりはない。
 だがトモエにもそれは楽な事では無かった。

 アルセウスが要求する特訓の内容はどれも人間の観念からすれば常軌を逸した馬鹿げた特訓であり、辛いと感じることはあっても楽しいと感じることはない。

 そのせいだろうか? イーブイと一緒に訓練するということもあってか、イーブイに出来る範囲の訓練しか彼らは今していない。
 この時間、しずかにアルセウスらと一緒にランニングをするこの時間は、彼の訓練の中では楽しいと思える時間だった。

「おし、じゃあ教会についたらいつものように休憩いれるか」

 アルセウスとイーブイはコクリと頷いた。
 ミレリア地方では7月に入り、すでに春服では暑く、夏服に変え始めたトモエはそれでも暑さのためか、汗を流してアークスの街を走る。




 『がんせきプレート』の入手からすでに二週間、ドクターマルスたちにも動きはなく、また彼らにも動きがない静寂の期間。
 アルセウスもここ最近は不機嫌に空ばかりを眺めていた。

 アルセウスは焦っているのだ。
 終始見くびっていたドクターマルスの強さ……その驚くべき成長に。
 もし今のドクターマルスの強さですら、ダークプリズンにとっては末席だとしたら?
 だとすると、彼女が持つダークプリズンへの見積もりは大幅に変えなければならない。
 そして、彼女の力の源たるプレートはすでに3枚を手に入れるに至ったかが残り13枚は音沙汰が無い。

「――おい、アル……アル!」

 ふと、突然だった。
 ボーッとこれからのことを考えているとトモエが大声でアルセウスを呼んでいた。

「一体どうしたんだ、契約者よ」

「どうしたじゃないだろ、教会についたぞ?」

 そう言われて慌てて周りを見渡すと、そこはいつもの見窄らしい教会の前だった。
 白い塀は塗装が剥がれ、屋根はボロボロ、でも庭の花壇だけはいつも元気いっぱいに咲き乱れる花々に迎えられた教会。
 トモエは教会の扉を開くといつものように中に入り、慌ててアルセウスもその後を追った。
 3.2メートルある巨体には小さなドアをいつものように体を屈めて入る姿は誰から見ても窮屈そうだった。





「おーい! いくぞータルタロス!」

 トモエたちが教会で一息入れて、いつものように朝食を頂くと食後、ここ最近日課になっていることが始まる。
 コリンがテニスボール大のゴムボールを持ってタルタロスを呼ぶと、タルタロスは「ブイッ!」と鳴き声を上げて、構える。

「そーれ!」

 コリンが勢いよくボールを投げると、タルタロスは冷静にボールを見て空中キャッチ。
 まるで犬のように上手に口に咥えると尻尾を大きく振ってコリンの元に帰る。
 無事キャッチするとコリンはタルタロスの頭を毛並みがクシャクシャになるほど撫でて褒めてあげた。
 するとタルタロスも嬉しいのか目を細めて喜んだ。

「……うまいこと考えた訓練法だな」

 その様子を見て感心したようにしゃべったのは休憩中のアルだった。
 内容は単なる動物とじゃれるような遊びだ。
 だが、どうして中々これがタルタロスには良い訓練になる。

「片目しかないから高速で動くボールを正確に捉えるのは極めて難しい。だがこの方法ならば子供たちもタルタロスも楽しみながら知らず知らずに訓練になる、まさに一石二鳥だな」

「だな、コリンたちも楽しんでいるしな」

 恐らくタルタロスには訓練だと思ってこんなボール遊びはやっていないだろう。
 文字通り、これは誰の目から見ても遊びなんだ。

 だが、優秀なドッグブリーダーの育てた犬だって元はこんな遊びみたいなもので鍛えられて、誰もが一目するようになるのだし案外馬鹿にはできない。

「おーし! じゃあ今度はもっと遠くに投げるぞー! いっくぞーっ!?」

 コリンはそう言うと大きく振りかぶる。
 ここは河川敷、十分な広さがあり野球やサッカーだってできる。
 だが、トモエには少し不安があった。
 コリンが思いっきり投げると、それはトモエの予感的中。
 コリンのボールは勢い余って川の方へと投げられたのだ。
 タルタロスはというと周りがみえていないのかボールを捉えて一気に走る。
 だが、突如足は水の中へと突入するのだった。
 慌てるタルタロスにトモエは真っ先に駆けた。

「まずい! 大丈夫かタルタロス!」

「ブーイーッ!?」

 川はそんなに大した深さではないが、子供のイーブイのタルタロスには十分溺れられる深さだった。
 ましてまだタルタロスは泳ぐことができず、水に入ることを苦手としている。
 バシャバシャと水をその前足で叩くも、虚しく体は沈み込む。
 幸い寸前のところでトモエに助けられたが、これはタルタロスには忘れられない思いになっただろう。

「ごめーん! タルタロス大丈夫?」

 コリンは慌ててタルタロスの元へと駆けた。
 タルタロスはというと、トモエの胸の中で大泣きしていた。

「やれやれ、茶チビの奴その泣き癖は何時まで経っても治らんな……」

 呆れたように川に入ったボールを拾うと、トモエたちに元に歩み寄りアルはそう言った。

「そう言うなよアル、タルタロスは子供なんだから」

 トモエはというとそう言って大事にタルタロスをあやしていた。
 それを見てアルはムスッとする。
 大体が、アルはトモエがタルタロスに構っていると機嫌が悪い顔をするが今回もそのようだった。

「濡れた体を拭いて……あと、包帯を変えないとな」

 トモエはそう言うと、予め持っていたタオルでタルタロスの体を拭いた。
 事前に包帯を取り、風邪をひかないように多少過保護気味に拭き終わると包帯を懐から取り出そうとする。
 夏場になり、暑くなってきたのでタルタロスの包帯の交換も頻繁になり常備しているのだ。

「? あれ?」

 しかし、そこでトモエが頭に?を浮かべる。
 懐から包帯が出てこないのだ。

「包帯が無いぞ……おかしいな?」

「持ってき忘れたのか?」

 アルがそう聞くとトモエは首を振る。
 トモエはランニングをしていた時点では包帯は懐にあったという。
 いつから無くなったかは分からないがどこかで落としたようだった。

「……しょうがない、アパートの方にストックがあるからそれを取ってくるか。アルはコリンとタルタロスを頼むな」

「うむ、わかった」

 トモエはタルタロスをアルに預けると急いでアパートに向かうことにした。
 これも訓練かとトモエはアルセウスから頂いた力を僅かに使いながらアパートへと向かった。




 ……その帰りだった。
 行きは何事も無くアパートに付き、家の鍵も問題なく持っており、包帯の入手も容易だった。
 後は教会で待っているであろうアルたちの元へと帰るだけ……それだけだった。

「……? なんであの辺りだけ人だかりが無いんだ?」

 普段は人混みで満足に歩くこともできないほど、ごった煮のショッピングモールに人だかりがぽっかり開いた場所があった。
 一体何事かと思い、近寄るとショーウインドウをぼんやりと眺める一人の少女を見つける。

 ……訂正、少女じゃなくてロボットだ。

「あの娘……たしかアリサって言ったけか? 何やっているんだ?」

 ショーウインドウの先をボーっと眺めている一人の少女……的なロボットは何をしているのだろうか?
 気がつくとトモエはその場が妙にガラ空きなのを忘れて少女の後ろからショーウインドウの中を覗いていた。

「服?」

「……あ」

 突然トモエが後ろに立つといくらなんでもアリサはトモエに気付いた。

「あ……よ、よう」

 トモエは前回の戦いの戦慄を思い出す。
 以前、この少女にどんだけ苦労させられたことか。
 そう考えると油断の出来ない相手だった。
 何せあのドクターが作ったロボットだから……そう付け加えるべきだろう。

「古戸無朋恵、ドクターマルス攻撃目標優先ランクSSS、発見次第即攻撃……」

「ッ!?」

 少女がなにか思い出したように呟くその言葉は一言でいうと危険しかなかった。
 思わず身構えるトモエだったが、しかしアリサは特に動きを見せない。

「……しかし、今は勤務時間外なので優先順位から外れるロボ」

 そう言ってアリサは再びクルリとショーウインドウの方向くのだった。
 はぁ? と気の抜けたような声を上げるトモエは不思議そうにアリサを眺めた。
 やっぱりというかなんというか……あのドクターが造っただけに一癖も二癖もあるロボットだった。
 だけど……。

(こうやって後ろ姿を眺めていると……やっぱり普通の女の子にしか見えないよなぁ)

 普通に可愛いと思う。
 やっぱり未だにロボットだとは思えない。

「? アリサに何か用があるロボか?」

 ふと、視線に気づいたのかアリサが振り向く。
 ロボットでも視線は気になるのか、トモエも少し戸惑う。

「あ……えと、アリサは服に興味があるのか?」

 戸惑ながら出てきた言葉はそれだった。
 われながら陳腐ともトモエは思ったが、それ以上の言葉が出てこなかったのも事実だ。
 幸いにもアリサは特に気にしてはいないようだったのが幸いだろう。

「別に」

 いや、むしろアリサは特にトモエには興味がないのだろうか?
 ただ簡単に一言で片付けてまたショーウインドウに目を向ける。

「ただ……」

「え?」

 ふと、おしまいかと思った言葉に続きが出てくる。
 突然の言葉に呆然とするトモエ、アリサは淡々と喋った。

「アリサにとってこの世界は情報では知っていても、実際には見るのも聞くのも初めての物ばかりロボ……だから気になったんだロボ」

「……そういうの、興味があるって言わないか?」

「興味があるんじゃないロボ、気になっただけロボ」

 ……意外と意地っ張りなのか、意見は変えようとはしないアリサ。
 しかし、その言葉を聞いているとトモエは少しアリサの見方が変わった気がした。

「結構可愛いところあるんだな」

「え?」

 アリサが驚いたように振り返る。
 ロボットでも褒め言葉を言われたら照れるのか?
 俺はアリサが見ている服の値札を見てみる。
 もし買える値段ならプレゼントしてあげようかと思ったからだ。

 しかし、その値段を見たとき驚愕する。

「ッ!? おま……アリサ、お前すごい値段の服見ているな……」

 それは一見すると普通の洋服だった。
 ところが値段は明らかに0の数がおかしい。
 ぼったくっているような値段だった。

「アリサ……お前この服欲しいのか?」

「欲しい? アリサは……」

 プレゼント出来る値段ではないが、聞いてみるとアリサの答えは……。
 しかし、その時。

「いたぞ! ここだっ! 貴様等動くなっ!?」

「……はい?」

 突然だった。
 一斉に俺達を包囲する警察。
 突きつけられる無数のピストル。
 その数50名近く、防弾装備も完璧のご様子。
 アノ、ボクイッタイナニヲシマシタ?

「あの、アリサさん? あなた一体なにをしたんですか?」

 思わず敬語になるトモエ、今それ位テンパッていた。
 警察は何やら緊張した面持ちでこちらに銃を突きつけている。

「特に覚えがないロボ」

「覚えがなくてなんで警察に取り囲まれないといけないんだよ……」

 アリサは思い出そうとはしているようだが覚えがないという。
 だが、この様子どう考えてもおかしい。
 まぁ、司法の敵たるダークプリズンのアリサが街にいる時点で警察はくるのかもしれないが、いくらなんでも異常じゃないか?
 ドクターマルスの時はこんなに騒がれなかったぞ?

「あ、あの……これは一体どういう――」

 俺はとりあえず警察に銃を突きつけられる理由が無いので事情を説明してもらおうとするがそんな事するより先にアリサは。

「銃火器多数を確認、危険度上昇、迎撃に移りますです」

「ちょっ!? まっ――!?」

 突然アリサは腰に装備している50口径マグナム二丁を抜くと、有無言わさず乱射し始めた。

「うわぁぁっ!? 撃ってきたぞ!?」
「怯むなぁ! 撃ち返せっ!」

 世の中はどれだけの理不尽が詰まっていると言うのか?
 少なくとも今トモエは、この上ない理不尽さを存分に噛み締めていた。
 ……訂正、このような理不尽は噛み締めるものではない。

「だぁぁぁぁぁっ! なんてことをしてくれるんだよっ!?」

 これは一体どういうことだろうか?
 トモエには今、あのアルセウスと出会った時並の理不尽さを感じていた。
 俺は社会にしっかりと貢献している善良な一市民……なのにどうして警察に撃たれなければならないのか!? トモエは嘆くしかなかった。

 警察は今、間違いなくこの古戸無トモエをアリサの仲間と見なし、ためらいなく撃ってきている。
 警察の手に持たれた、血の通わない鉄の塊から放たれる火のような熱さを持った鉛玉は容赦のない弾幕を張り、トモエとアリサを襲うのだ。
 冗談じゃない、その一言に尽きるだろう今の現状は。

 ここから先は一つでも選択肢を間違えたら即死亡に繋がる!
 そう容易に感じさせてくれる現状は、幸か不幸かトモエに精神を冷静にさせた。

 こんなくだらないことに使うのはアルに申し訳ないか?
 否、今は命の危機なのだ! 四の五の言える状態ではない!
 銃弾が一発目の前を通り過ぎる、彼はそれを僅かに動いて回避した。
 そう、その瞬間彼の『世界の見え方が変わった』。

「白昼堂々撃ちあうんじゃねぇ! この馬鹿っ!」

「にゃっ!?」

 トモエはアリサの首根っこを掴むと引っ張り上げ、抱き上げるとそのまま一目散にその場から逃げるのだった。

「あっ! 待て! テロリスト2名、北へと逃走! テロリストは強力な火器を所持している! 慎重に当たれ!」

 テ・ロ・リ・ス・ト・二・名?
 トモエは泣くしかなかった。
 こちとら毎日をちょっと一般人より低い生活水準で生きているだけのまっとうな市民だというのに、テロリスト扱い。
 もうトモエには一体何を恨んで、何を嘆けばいいかさえさっぱりわからない。





「――はぁ……はぁ……ここまでくれば大丈夫だろ?」

 トモエは常人では考えられないほどの速度で走りぬけ、気がつけば街の北の端の辺りまでやってきていた。
 そこには警察の目は見られず、ようやく一息を着いたトモエはその時、アリサの様子に気がついた。

「…………」

 目を見開き、口をポカンと開けて固まるアリサ。
 一体どうしたのかとトモエは良くわからなかったが、突然アリサを目を輝かせるのだった。

「銃撃戦のさなかアリサを抱きかかえて逃亡……これって愛ロボッ!?」

「……はぁ?」

 今度はトモエがポカンと口を開く番だった。
 トモエの体から降りたアリサはまるで恋する乙女のように目を輝かせて、とんでもない言葉を発したのだ。
 トモエには理解不能、理解不能。
 というか至極正常な判断が出来る人間ならば誰が理解できようか?

「愛って……あのなぁ? あのまま撃ち合っていたら危ないだろうが」

「それは大丈夫ロボ、アリサは銃弾ごときではビクともしないロボ」

「オメーの心配じゃねぇ、警察のみなさんが怪我したら俺の社会生命は完全に絶たれるの! ていうか今の状態ですらやばいわ!」

 恐らく警察は今も血眼になってトモエとアリサを探していることだろう。
 いつもいつも飽きもせず運命っていうのはトモエに不幸をもたらし続けるが今回は特別に不幸ではないだろうか?
 だが、肝心の当事者であるアリサはむしろ幸せそうな顔だった。
 どんよりと不幸顔のトモエとは真逆に幸せ全開のアリサはまさに対照的であり、なんでこうなったとトモエは今更ながら疑問に思った。

「そうか、トモエはアリサが好きなんだロボね……でも、哀しいロボ。アリサとトモエは所詮敵同士……互いが愛を語ろうともそれは叶わぬ愛なんだロボ……」

 全力全開妄想マックス……アリサの口から語られる聞く人が聞く人ならばとんでもない誤解を招きそうな言動の数々に、トモエは冷静な判断が取れなかった。
 どうしてこうなった? もう何度目かさえわからない同じ言葉が彼の頭の中で何度も繰り返される。

「トモエ……ううんダーリンごめんなさいロボ! アリサは敵だからダーリンの愛に応えられないんだロボ」

「ロボットの癖にお前の頭の中は桃色か? どこをどう捻ったらそういう答えに行き着くんだ?」

 トモエは呆れていた。はっきりと呆れていた。
 そのやる気のない口調からもわかるほどに呆れているのだ。
 いつのまにやら自分の立場は彼女の中ではトモエという一人の人物からダーリンにまでランクアップしてしまったらしい。
 あまりの展開の速さについていけず、またどうでもいい状態にもはやどうすればいいのかさえ分かるわけがない。

「でも……それでもダーリンがアリサを好きだって言ってくれるのなら……アリサは……ポッ」

 何故か赤面するアリサ。ロボなのに……と思わず突っ込みたくなるがそこはかとなくスルーしてしまうトモエだった。
 そもそもあのドクターマルスは一体どういう思考を持ってこんな破天荒なロボットを造ったのであろうか?
 今目の前にいるロボットは、正しく恋する少女そのもの。

 そりゃ確かに、アリサは可愛いと思ったし、むしろロボットである方が不思議とさえ思った。
 そう思ったが……やっぱりこれはないな、そうトモエは実感していた。

「あのさアリサ?」

 だんだんと思考が回復してきたトモエは、いい加減弁解をしようとするがすでに時は遅しというか……。彼女の暴走はもはや誰にも止められない。

「駄目ロボ! それ以上言わないで! アリサは罪深いロボットなんだロボ! あなたを愛に仇で報いてしまうロボ!」

「……突っ込むべきなのか?」

 昔漫画で見た光景では恋する乙女は無敵だった。
 今のアリサはまさにそれ、この恋するロボットはもう誰にも止められないこと請け合いなのだろう。
 つまり、弁解の猶予はないということだろう。
 ……どこまで行っても不幸なのだな……トモエは溜息を漏らすしか無かった。

「たく……もういいよ、盛大に誤解してくれ、俺はいく」

 いい加減帰らないとアルたちが心配する、そう思ったトモエはアリサの説得を諦めて教会に帰ろうとした。
 だが体を前に進めようとしても前に進まない、というかトモエの腕がギュッといつの間にかつかまれていた。

「……ダーリン」

 頬を赤らめて、涙目の少女。
 ここまでならばまさに絵に書いたような乙女だろう。
 だが、忘れてはならないが彼女は敵でありロボット。
 そもそもロボットに恋愛感情なんてあるのか? そんなどうでもい疑問さえ今のトモエには浮かぶ始末であった。

「えと……この手は何かな?」

 何かもの言いたげにトモエを見て、何も語らないアリサはギュッとトモエの手を握っていた。
 これは……誘っているのか? 彼女は自分を誘っているのか?
 トモエは帰るに帰られず、また動くに動けなかった。

 数分の沈黙、互いにどうすればいいのか分からない状態が続くと、気がつくと不穏な空気に気がついた。

「……!? 警察か?」

 現在トモエ達がいるのはまさに路地裏。警察は表通りを忙しく走り回っていた。

「ッ! アリサとダーリンの甘いロマンスを邪魔する敵役ロボッ!?」

「激しく突っ込みたいけど、どうせ聞かないだろうから突っ込まないよ……ていうか、どうするものか?」

 周囲を歩く警察の数は次第に増えていっているような気がした。
 このままでは発見されてあらぬ容疑で捕まるのは明々白々。なんとしてもこの場は切り抜けなければならない。
 トモエはどうすればその場を切り抜けられるか周囲を見回し必死に探した。
 ふと、その時ひとつ目に映ったものがある。

「映画館か……よし、アリサ一旦あそこに隠れるぞ」

「デートロボかっ!? 初めてロボ……ああ、アリサまだおめかししてないロボ……どうしようロボ~……」

 恋は盲目とはよく言ったものだ。
 トモエはアリサの腕を引っ張ると警察の目をかいくぐって映画館の中へと入っていく。
 アリサはというと、本当にロボットとは思えない満面の笑顔を浮かべて、嬉しそうに手を引かれて映画館に入るのだった。
 その様は事情を知らない人間からは誰から見ても幸せそうなカップルにみえただろう、アリサだけを見れば。





「……かなぁり適当に選んで入ってしまったが、よりにもよってB級ロマンスとは。まぁいいか……終わるまで隠れていたら警察も諦めるだろ」

 トモエは後悔していた。
 われながらかなり適当に選んだ結果が、チープな内容のB級ロマンスの映画だったのだ。
 余程人気がないのか、座っている観客の数もまばらでむしろ空席の方が目立つ始末。
 内容もありきたりであり、目新しさも無ければちっとも面白くもない内容。
 だが、トモエにはある意味冗談ではないように感じた。

(その気もないのにアリサとB級ロマンスじみたことしているんだから洒落にならないよなぁ……)

 しかし、見ていてつまらない。薄暗い環境につまらない映画はたまらなく眠気を誘う。
 実際のところぐーすか眠っている観客も見受けられる。
 お世辞にいい映画館じゃないなとトモエは感じつつも、隠れるだけなら丁度いいかと思い、横に座るアリサを見る。

「…………」

 アリサはというと、まるでショーウインドウを覗いていた時のように無表情で、だけど映画を熱心に見ている。
 いや、彼女の場合は観察なのかもしれない。
 彼女にとってはまだまだ世界は新しい事だらけ、だからこそ色々な物を知りたいのだろう。
 そういう意味ではどんな映画でも、映画館に入るということはアリサにはいい経験なのかもしれない。

「……? どうしたロボ、ダーリン」

 ふと、トモエの視線に気がついたアリサはトモエに振り向いた。
 「ああ、いいよ前を向いといて」と言うと、アリサは直ぐ様映画を見ることにする。
 トモエはそのままアリサに話始めた。

「面白いか? 映画は」

 面白いか……それは何も知らない機械人形には愚直なことなのかもしれない。
 アリサは表情を変えず、視線も変えず冷たい言葉で言ったのは、否定する言葉だった。
 ただ簡単に「別に」と、それだけだ。

「――から」

 ふと、アリサの表情が変わった気がした。
 口元が動き、小さな声で何かがつぶやかれた。

「なんって……?」

 トモエが聞き直す。
 直後、映画から大音量が館内に響く、クライマックスシーンか何かだろうか?
 しかしトモエには大して興味もなく、むしろアリサの方が興味があったため、それは大して意味のない雑音に過ぎない。
 映画の大音量とかぶるように放たれるアリサの小さな言葉。

「…………から」




 …………。




「……アリサ、か」

 映画が終わった後、アリサは突然トモエに別れを告げてどこかへと走り去っていった。
 彼女には彼女の事情があり、トモエにはトモエの事情がある。
 出逢いがあれば、別れもある。

 ただトモエの心境は最初は早く離れたいと思っていたものが、もう少し位付き合ってあげてもよかったか……と、知らぬ間に変わっていた。
 映画館であった出来事、あんまりにも陳腐すぎて映画の内容なんぞ欠片も覚えていない。
 ただ、神経を研ぎ澄まして聞いたアリサの言葉。


 ――アリサは、面白いと感じる方法を知らないから。

 産まれたばかりのロボットは赤子と同じ、何も知らないんだ。
 だからこそアリサは何が面白くて、何が哀しくて、何が楽しくて、何に怒ればいいのかがわからないんだ。
 本来ならば子供がその成長の中で覚えていく当たり前の感情、でも彼女は産まれた時から大人であり、子供だった。
 でも大丈夫、時は必ず彼女を恋する乙女から立派な大人へと成長させるだろう。

「……世の中ってそりゃ辛いことが9割だよ、でもなぁ残り1割の幸せを感じられないなんて……9割の不幸を否定するより不幸だぞ?」

 トモエは日々が理不尽の連続だ。
 仕事が入らなければご飯は食べられないし、電気も使えない、お風呂にも入られない。
 アルセウスと付き合っていれば面倒なことなんていくらでも起きる。
 アリサと出逢えば今日のような有様。
 頭をさげることなんてしょっちゅうだし、理不尽なことなんてとにかく多い。
 もしかしたら大人になるっていうことがそもそも理不尽であり、理不尽であり続けることなのかもしれない。

 それでもトモエは思う、理不尽の中にある幸せが自分の幸せなんだと。
 幸せを知るのは辛いことも知ることになる。
 それでもトモエはアリサに思う。

「次会ったら、面白いってことくらいは教えてやりたいな」

 トモエはすでに平穏を取り戻したアークスシティで夕日挿し込む時間、静かに教会へと帰った。
 今日もまたドタバタしたが、これはこれで楽しかったのかもしれない。
 そう思うと笑いも浮かべられる。



「――で、一体どんな事情があれば汝はこんな時間に帰ってくるのだ、契約者よ?」

 ……そして教会、トモエを迎えたのはカンカン顔のアル達であった。
 聞けば、いつまでたってもトモエが帰ってこないから心配になったノーマは一人飛び出し、そのノーマが帰ってこずにいるためコリンたち子供たちが泣き出し、挙句の果てに相乗効果でタルタロスまで癇癪を引き起こす始末。
 そして御免被るのは当然の如く子守りをするアルセウスなわけだ。
 いくらあやしてもあやしても、子供たちは泣き止まず次第にアルセウスにもストレスが溜まっていく。
 しかしストレスのはけ口はおらず、どんどん怒りはやがて理不尽へと変わっていったのだろう。
 当然、トモエが帰ってこようものならその怒りに似た理不尽の矛先はトモエに向く。

 属に言うこれが理不尽というものだ。
 自分がどうにかしようとしても、周りがそれ以上のことをやってのけてしまう。

「ああああああああっ! やっぱり理不尽なのかよぉっ!?」

「あ! 逃げるなトモエー!!」

 幸せな余韻などどこ吹く風。
 教会に戻ればまた、問題に問題、大問題!
 世の中なんて9割が不幸で出来ている。
 トモエも結局は盛大に理不尽を噛み締めるのだろう。
 だが、アークスシティは今日もいつもどおり、平穏だった。

テーマ : ポケモン
ジャンル : ゲーム

オニキンメたん
くろック ALL STARS
プロフィール

KaZuKiNa

Author:KaZuKiNa
KaZuKiNaといいます。
小説書いたり、ゲームプレイしたり。
あ、熱帯魚とかも飼ってます。
色々、自由気ままにやってます。

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