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Fantasy mini①―タルタロスの小さな冒険 ―

本作はポケモン小説Fantasyの外伝です。
本編を読まなくても十分楽しめますので、問題なくどうぞ♪




 その小さな体には人の街は大きすぎる。
 その小さな体には人の街は危険過ぎる。



「う~……困ったなぁ、どうしよう」

 何十万という人が住む巨大都市アークスシティ、そこには光もあれば影もある。
 まぶしすぎる明るい光に、欝すぎる暗黒、それが巨大都市には付きまとうジレンマだ。

 この街にはポケモンも多く住んでいる。
 大半はトレーナーが所有するポケモンではあるが、中には野生化したポケモンも多数いる。

 体中に包帯を巻いたイーブイ、その左目をエアームドに貪りられて失い、自慢の毛並みもひどく荒らされた醜いイーブイのタルタロス。
 その小さき体、幼き心は戸惑淀んでいる。

 ……なーんて、オトナっぽいこと言ったら僕は大人に見えちゃうのかな?

「ふいぃ……休憩」

 僕はアークスシティの路地裏で背中を壁にもたれかけながらゆっくりと休む。
 普段は僕、ご主人様と一緒に暮らしているんだけど今日は一人で散歩をしていると、珍しい物を見つけちゃったから追いかけたら全然知らない場所に来たんだ。
 珍しい物って言っても全然わかんないよね、ごめんね。僕も正直それがなんだったのかよくわからないんだ。
 緑っぽい光の玉がふわふわ、僕の頭上を飛んでいて、僕はそれを追いかけたら知らないどこか。

 街は僕にはとても大きくて、いつもご主人様とアルについて行っていたから安心だったけど、一匹になるとなんにもできない。
 そう言えばご主人様、街には危険が一杯だって言ってたっけ。
 うぅ……そう考えると怖くて泣きたくなっちゃうよ。

 でも、僕は首をフルフル振って勇気を養う。
 僕はもう一人前のポケモンなんだから、ひとりでもご主人様の元へと帰らないと!
 僕は自分に喝を入れると街の大通りを避けて路地裏を進んだ。

 街では皆僕のこと奇妙な目で見るんだ。
 哀れんだ目で見たり、不思議がったり……一体僕の何がおかしいんだろう?
 ご主人様もね、時々僕のことを可哀想な物を見る目で見るんだよ……僕はそれがすっごく嫌なんだ。
 勿論ご主人様のことは大好き! だから心配いらないって証明するために僕は頑張らないといけないんだ!

「ううぅ……それにしてもどうして人間ってどこもかしこも同じような物を創るんだろう?」

 人間の物を創るっていう技術は素晴らしいと思う。
 それは僕たちポケモンにはできないことだし、その力こそがこの世界を作り上げている。
 でも、人間は不思議なことに不要な物も平然と作る。
 人間は便利だと、便利を忘れる存在らしい。
 変だよね、彼らは自分の首を締めていること気づかないんだよ?

「うーん、僕そんなに鼻が良い方じゃないから匂いじゃわからないし」

 ご主人様と一緒に住む僕たちの家はこんな路地裏の一角にある。
 路地裏はとっても汚くて、あと臭い。
 でも、僕はご主人様と一緒に入れるのならそんなの気にしない。

 ビシャッ! と昨日降った雨の水たまりを踏みながら僕はどんどん路地裏の奥へと突き進んだ。

「うーん、見覚えのある場所じゃない……というか、どこもかしこも同じような作りの物ばっかりだしたなぁ」

 もうすでに散歩に出て太陽がずいぶんと動いていた。
 ご主人様は心配性だから僕のこと探しているかも。
 これは早く帰らないと!

「よし、ここは思い切って真っ直ぐ――」

 ふと、その時ギュムッと僕は何か微妙に柔らかいものを踏みつけてしまう。
 足元を見ると黒い何かが足の下でピクピクしていた。
 なんだろうと、疑問に思っていると道の小脇から唸り声が聞こえてくる。

「ぐぐぐ……テメェ、俺の尻尾を踏んづけてんじゃねぇぇ!」

「へ? わ、わわぁっ!?」

 なんということだろう、そこには尻尾を踏まれて怒りを顕にしたデルビルがいるじゃありませんか!
 僕はビックリしてその場から飛び跳ねた。

「す、すいませーんっ!」

「ごめんで済む問題じゃねぇんだよぉボケェ!」

 それはずいぶんとガラの悪いデルビルで、僕に対して激しく吠えてくる。
 それを聞きつけてかその場デルビルが集まり始めた。

 一匹、二匹三匹とその数はどんどん増えていきだんだん数えるのが嫌になる。

「おい? 一体どうしたんだブラザー?」

「あのチビ助が俺の大事な尻尾を踏みやがったんだぁ!」

「なぁにぃ? こいつはメチャゆるさんよなぁ!?」

 なんだかその場はものの一分も経たずに僕が悪者になってしまう。
 たしかに踏んでしまったの悪いけれど、一応謝ったし……て、許してもらえる状態じゃないよね。

「ご主人様の教えその2!」

「?」

 僕は声高らかに宣言すると、デルビル達がなにかと動きを止めた。
 ご主人様の教えその2……それは。

「逃げる!」

 ご主人様の教えその2は敵わない相手からはとにかく逃げろだ。
 なんでも人間の使う諺っていうのには逃げるが勝ちって言う言葉があるらしい、僕はポケモンなので適応外な気もするけど、ここは人間になった気分であやからせてもらう。

「ああ、てめぇら追え! 八つ裂きにしてやれぇ!」

 なんだか後ろでとんでもなく怖いこと言っているけど、気にしない。
 僕は一心不乱に路地裏を駆け抜けた。
 生ごみに空き缶、倒れたポリバケツ、走るのに邪魔な障害物は多いけれど僕は脇目もふらずに必死に避けて逃げた。

 段差を飛び越え、谷間を飛び越え、階段を上り別のエリアへと飛び出す。
 誰の家ともしれない天井を走り抜けて、大ジャンプしてまた別の家の天井へ。
 そうやって逃げていると、次第に後ろからデルビルたちの気配は消えていく。

 撒いたかな……そう思って振り返ったとき危険がなくなったのを確認するとようやく僕は足を留めてはぁ……と一息ついた。

「おや、あなたは確かタルタロスさん?」

「はふぅぅっ!? 誰なのぉ!?」

 突然声を掛けられたとき僕は心臓が飛び出るかと思った。
 まさかデルビルがやってきたのかと思い本当に心臓に悪い。
 どこから話しかけられたのか周囲を見渡してみたけど、誰もいないすると声は頭上から。

「こちらですよタルタロスさん、私です」

「あ……えと、バグショウリュウさん?」

「むてきんぐです、間違えないでください」

 頭上にはいつもは敵同士のポリゴン2のむてきんぐさんがいた。
 僕が名前を間違えると怒ったような仕草でむてきんぐさんは僕を注意してきた。(顔が可愛いから全然怖くないけどね)

「……それで一体どうしたのです?」

「……追われているんだよ」

「誰に?」

「……それは無関係なむてきんぐさんには言えないよ」

 僕はそう言ってフッと笑いかける。
 うん、曲がりなりにも僕とむてきんぐさんは敵同士、こんなところで馴れ合いはしちゃだめだよね。

「見つけたぞ! あそこだぁ!」

「!?!?!?」

 僕の背筋に冷たいものが走る。
 今もっとも聞きたくなった叫び声、というか吠え。
 ゆっくりと振り返ると、ひとつ手前の家の屋根からデルビル数匹がこちらに吠えている。

「……なるほど、そういうことですか」

 隣でその様子を見たむてきんぐさんは何か一人で納得するし。
 僕は直ぐ様その場所から逃げ出すことにする。

「……つかぬことお聞きしますが、一体何をしたので?」

 体を浮遊させているむてきんぐさんは悠々と僕の横を走り(飛んでかな?)、僕に悠長に事のいきさつを聞いてくる。
 正直しゃべっている余裕なんて全く無いんだけど、僕は必死に声を出してことの成り行きをむてきんぐさんに伝えた。
 すると、むてきんぐさんは「なるほど」と頷いて考える。

「弱気を助け強気を挫く」

「へ?」

 突然必死に走っていると隣でむてきんぐさんが、何か変なことを呟いた。
 僕はよくわからないので頭に?を浮かべているとニコリとむてきんぐさんが笑った。

「空には追えないでしょう、タルタロスさん、乗るのです」

「乗るってむてきんぐさんに!?」

 むてきんぐさんは僕に体を近づけると乗るよう促す。
 どうみても乗りづらそうだけど僕は覚悟を決めて、むてきんぐさんの背中に飛び乗った。
 するとむてきんぐさんはその場から浮上を開始する。

「わぁ! むてきんぐさんすごいや!」

 僕は初めて見る街の上空の景色に感嘆の息をこぼした。
 街には大きなビルがいっぱいあって、それらの下には網目のような道路が走り、小さな民家が軒を連ねる。
 街って上から見たらこうなっているんだぁ。

「大丈夫ですか、怖くはないですかタルタロスさん?」

「うん! 大丈夫だよ……あ、ふ、ふん! 助けなんて本当は必要なかったんだからね! 本当なんだからね!」

 僕は自分の立場をハッ! と思い出すと本当は素直にお礼をしたかったけれど、むてきんぐさんに見栄をはってしまう。
 でもむてきんぐさんはそんな見栄を見ぬいてなのか笑って空の遊覧飛行をして見せてくれた。

「それにしても、ここは街の北部ですよ。どうしてこんなところまで?」

「あ~、そんな遠くまで来たんだ。それよりむてきんぐさんこそどうしたの?」

 僕はさすがに迷った理由を言うのは気恥ずかしくてむてきんぐさんがあんな場所にいた理由を聞くことで誤魔化した。

「私はお使い途中でして、障害物を避けるために空を飛んでいたら天井に見たことのあるポケモンがいますから、驚きましたよ」

 そうか、むてきんぐさんはお使いもするんだ。えらいなぁ。
 僕なんかちょっと知らない場所に行ったらすぐに道に迷っちゃうのに、やっぱりむてきんぐさんは凄いなぁ。
 それにむてきんぐさんは敵だけど、すごく優しくてすごく紳士的。
 すごいよねぇ、憧れちゃうよねぇ。

「さぁ、この辺りまでくれば大丈夫でしょう、降ろしますよ」

「あ、うん。ありがとう」

「いえいえ、当然のことをしたまでです」

 むてきんぐさんはそう言うと路地裏の一角にゆっくりと降りてくれる。
 僕はむてきんぐさんの背中から降りると、ぺこりと頭を下げてお礼を言った。
 むてきんぐさんはいえいえとニコニコ笑っている。
 うん、やっぱり紳士だ……などと思っていると。

ゴォォォォ!

「うひゃぁっ!?」

 突然、炎の柱が飛んでくる。
 僕は慌てて屈み込んで炎がやってきた方角を見ると、そこには僕の今回のトラウマのデルビルがいた。

「あめぇんだよ、俺たちデルビルは鼻が効くんだぜぇ? 逃げられると思っているのか?」

 それはデルビルの『かえんほうしゃ』だろうか?
 僕を見つけるとニヤリと笑い詰め寄ってくる。
 見ると周りには逃げられないようにデルビルたちが取り囲んでおり、絶体絶命というのがわかった。

「中々しつこいですね……しょうがありません、痛み目をみてもらうしか……」

 むてきんぐさんがやる気になる。
 相手はデルビル数十体、いくらむてきんぐさんが強くっても数が相手じゃ敵わない。

「どうします? なんならタルタロスさんは安全な場所に送りますが?」

 むてきんぐさんはこんな時でも僕への気遣いを忘れない。
 僕はその気持ちを知ると、フルフルと首を振って恐怖を払いのける。

「ぼ、僕も戦うよ! こ、これ以上付きまとわれたら厄介だもん! 振りかかる水は払えだよ!」

「なるほど、わかりました。ちなみに払うのは水ではなく火の粉です」

「どっちでもいいよ!」

 僕はそう言って前かがみに構える。
 正直一匹でも倒せるかわからないけれど、ここで退く訳にはいかない。
 僕はもう護られるだけの存在じゃないということを証明するんだから!

 デルビルたちは僕たちを威嚇する。
 僕たちは自分からは動かず相手の動きを待った。
 僅かな静寂がその場を包む。
 ゆっくりと息を飲んだ瞬間。

「ぐおおおっ!」

 一匹のデルビルが吠えて、一斉に周りを囲んだデルビルが飛び掛ってきた。
 なんとか最初の攻撃を回避して、反撃を……そんなことを考えていると。

「アンタたち! 待ちな!」

 突然聞いたことの無い声が周囲に響く。
 デルビルたちは驚いたようにビクッと体を震わせて止まると、ゆっくりと一方を振り返った。
 そこには大きな体のヘルガーが一匹佇んでいる。
 凛とした顔立ちは妖麗で♀だということが分かる大人のヘルガーだ。
 デルビルたちはヘルガーをみつけると全員姿勢を正し(ただの犬のおすわりにしか見えないけど)、ヘルガーの前に整列した。

「あ、姉御、一体どうしたんで……あばっ!?」

 まるで口答えするんじゃないよと言わんがごとくヘルガーのお姉さんはデルビルの頭を前足で引っ叩いた。
 どうやらこのデルビル集団のリーダーらしい、噂には聞いていたけど本当にデルビルって集団生活をしていて連携が取れているなぁと感心する。
 ヘルガーは僕を睨みつけると、僕は今まで以上の恐怖を感じて、背筋が凍ってしまう。
 ゆっくりと歩み寄ってきた時には、まるで喰われるかとさえ思ってしまったが、彼女が僕の前に立つと。

「ウチの者が迷惑掛けたすまないねぇ」

 そう言ってヘルガーは深々と頭を下げちゃう。
 え? え? と戸惑っているとヘルガーは後ろを振り返りまた大声を上げる。

「アンタたち! このオチビちゃんはトモエの所のだよ! あたしに恥かかせるんじゃないよ!」

「え? お姉さんご主人様のこと知っているの?」

 僕は突然出てきたご主人様の名前に驚いていると、デルビルたちも別のベクトルで驚いていた。
 再びお姉さんは向き直るとニッコリと笑って、ご主人様とのことを教えてくれた。

「ああ、あたしがまだデルビルだった頃、ドジを踏んで怪我しちまったのさ。その時野良で嫌われ者のあたしをケガが治るまでずっとあんたのご主人に養われてねぇ」

 へぇ……そんなの全然知らなかったや。
 ご主人様はやっぱり、ポケモンたちから慕われているだなぁと関心する。

「……とにかく一件落着でしょうか、やれやれ」

 むてきんぐさんはとりあえずようやく警戒をといて、一息ついた。
 ふう、でもよかったよ。できることなら戦いたくなんて無かったし無事回避できて。

「オチビちゃん、名前はなんて言うんだい?」

「僕タルタロスだよ」

「そうかい、あたしはこの辺りの野良ポケモンたちを仕切っている名もないヘルガーさ、アンタのご主人にはよく言っておいてくれよ」

「うん、わかったよ!」

 僕はニッコリと笑ってそう言うと、ヘルガーのお姉さんは前足の肉球を僕の頭に押し付けてクシャクシャとご主人様のように頭を撫でてくれた。
 このポケモンは良いポケモンなんだと分かる。
 すると僕も安心して体を預けられた。

「ほら! アンタたち、散った散った! 全く……」

 ヘルガーのお姉さんが叫ぶと、デルビルたちは蜘蛛の子を散らすようにその場からいなくなってしまう。
 このお姉さんすごく強いんだろうなぁ。

「それじゃあたしも行くよ。気をつけてねタルタロスちゃん」

「あ、はいです!」

 ヘルガーさんはそう言って去ると、僕は元気よく返事をした。
 「良い返事だ」と言葉を零してヘルガーさんは路地裏の闇の中へと消えていく。
 気がつくとその場には僕とむてきんぐさんだけが残っていた。

「……さて、私もお使いの途中です。ここら辺でお暇させていただきましょう」

「あ、うん。ありがとうね、むてきんぐさん」

「いえいえ。まぁ私たちのマスターは敵対同士……ですが、ポケモンである我々は仲良くしたいものですね」

「うん、僕もそう思うよ」

 むてきんぐさんがそう言うと、僕もこくりと頷いた。
 僕もやっぱりむてきんぐさんとは仲良くやりたいと思う。
 確かにご主人様同士の仲が悪いから、僕たち戦うことも多いけど、憎しみで戦いたくはないもんね。
 そう言うと、むてきんぐさんはまたどこかへと去っていった。

 僕はゆっくりと歩き表通りに出ると、そこは見慣れた光景に見えた。
 一通りが多く、巨大ビルが立ち並ぶ摩天楼。
 そして……。

「タルタロス! ここにいたのか!」

 ご主人様の声、振り返るとそこには心配そうに駆け寄るご主人様の姿があった。
 僕はご主人様に駆け寄るとその大きな胸に飛び込んだ。
 ご主人様は僕を抱き抱えると、優しく抱擁してくれる。
 僕は目を細めてご主人様の体に寄りかかった。

「全く……心配かけて」

「えへへ……ごめんなさいご主人様」

 僕が笑うとご主人様は困ったような顔をしてしまう。
 僕の言葉はご主人様には届かない。
 だから仕草とか表情とかでしか僕たちポケモンはご主人様に意思を伝えられない。
 僕の笑顔はきっと、ご主人様に不安を与えてしまったのだろう。
 でも、愛しいご主人様に会えた僕は笑顔が消えることはない。

「ご主人様、僕ね。大冒険だったよ。街ってこんなにも大きいんだね、あとね、ヘルガーのお姉さんがよろしくって」

「やけに興奮しているな? 一体どうしたのやら?」

 ああ、こういう時はアルが羨ましいな。
 僕たちポケモンの言葉は人には届かない、響かない。
 だから、人の言葉を操れるアルが羨ましい。
 僕たちの会話は一方通行、でも……いつかは面と向きあってご主人様と話してみたいな。
 僕はご主人様に伝えたいこと、いっぱいあるんだもん。

「さっ、アルもノーマさんも待っているから、帰ろうか」

「うん!」

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テーマ : ポケモン
ジャンル : ゲーム

ドクターマルスと365日 第6話 ドクターとユウキ

「う~……なんだか頭痛いあるね」

 海へ来て二日目のドクターマルスご一行。
 ドクターは海辺のテラスで潮風に当てられながらぐったりとしていた。
 まぁ、二日酔いという奴だろう。

「はい、ママ酔い止めロボ」

 心配そうに眺めていたアリサは酔い止めの薬と水を持ってくると、ドクターはそれを受け取り水と一緒に薬を飲み込んだ。
 少し気が楽になった気がする、あくまで気がだが。

「ありがとうであるアリサ、でもあんまり人前でママっていうのは勘弁ある」

 アリサにママと言われるのはドクターは別に嫌ではない。
 ただ、人前でそう言われるとどんだけ若作りなんだと思われそうで嫌だった。

「でも、パパは嫌がらないロボよ?」

「それは私が嫌である、ていうかあいつはどこ行ったである?」

 今朝ホテルで目を覚ますと、自室にいた。
 前日はこっそり教会ご一行の部屋に侵入して気がついたらどんちゃん騒ぎに巻き込まれて……そこから記憶は朝まで飛んだ。
 作者とユウキはこの時点で姿がなく、元々神出鬼没なふたりだけに探しはしなかったが正午まで全く姿を現さないのでさすがに少し気になっていた。

「やぁ、やぁやぁやぁ、ドクターマルス君、お久しぶりだね、だね?」

「う……この特徴的な喋り方は」

 ドクターマルスに冷や汗が走る。
 大体においてドクターマルスは人付き合いが悪く、どんな人間相手でも嫌な顔をするところがあるが、今回の相手は特別だ。

「おっ、お~? ドクター、この娘は誰かな、かな?」

 赤い燕尾服を着て、その上からマントを羽織った40代後半の初老男性。
 喋り方が異様に特徴的で、見た目も相まって一度見たら絶対に忘れられない。

「博士、この人だれロボ?」

「あ、これはこれは失礼、吾輩はデーラルと言う、そこにいるドクターマルスと同じダークプリズンの者だよ」

 そう言えばこの男とアリサは初対面だった。
 そう思うと説明するのも面倒だが、ドクターはこのデーラルの説明を始めた。

「ダークプリズンの幹部の一人、通称雷神のデーラル」

「ご説明ありがとう、ちなみにイスパニア出身だ」

「てめー英語使えるんだからスペイン語で言うなである、普通にスペインでいい」

「いや、しかし君とて母国をジャパンとはいわんだろう? 母国は母国の言葉で言うだろう? ろう?」

「はぁ……」

 だからめんどくさい、ドクターはただでさえ深い酔いの後遺症もありこんな面倒な性格の奴を相手するのはめんどうだと頭をテーブルに擦りつけてうなだれていた。

「む? 妙に疲れているね、るね?」

 疲れている……といえば疲れているだろう。
 ぶっちゃけ二日酔に加えて面倒な相手の応対だ、疲れがないといえば嘘になる。

「たまたま遊びにきたわけであるまい? さっさと要件言いやがれであーる」

 ドクターが素っ気無くそう言うと、突然ドクターのもたれるテーブルに書類の束が投げられる。
 疑問に思いながらも、重い腰を持ち上げて書類を手に取るとその内容をパラパラと確認した。
 気になったのかアリサも横から覗いてきた。

「……ほぉ、ダークプリズンの行動予定表であるか」

 それは最初のページでは今年下半期のダークプリズンの行動予定表であった。
 つまらないが一応確認しないわけにはいかないのでひとつひとつ確認するが特に内容の変化は上半期報告書の時点と違いはない。

「まぁ、要点としては二つほどあるがその両方それに書いてある、ある。では、吾輩は忙しいので行かせていただくよ、くよ?」

「さっさといきやがれである」

 オーデンはそう言うと踵を返して海辺の方へと向かっていった。
 姿が見えなくなるとドクターは陰険な顔をして。

「あの野郎こんな糞暑いところで燕尾服とはナンセンスなやろうである」

「博士に言えた義理じゃないロボ」

 たしかにオーデンの格好も真夏の太陽の上では暑苦しくて仕方がないが、ドクターもドクターでいつものように白衣を着ているので十分暑そうだ。

「……ん? 私とオーデンの野郎の作戦内容?」

 ドクターは1ページ1ページをしっかり確認していると、指令書の中頃に興味深い物を見つけた。

「どうしたロボ?」

「オーデンの野郎が今日このバーバラシティで作戦があるらしいである」

 その詳しい作戦内容は機密事項扱いであり、ドクタークラスの幹部格では閲覧不可の内容だった。
 元々ドクターもダークプリズンの幹部ではあるが、各位はオーデンの方が上位であるためこれは仕方がなかった。

(ふむ、バーバラシティはそれほど重要な場所ではないはずだが……まぁいいである)

 ただ、この指令書に書いてあったのはバーバラシティでオーデンの作戦行動に対するあらゆる手助け妨害を禁ずるものだった。
 つまり孤立させて放っておけということ。
 よほどセキュリティの高いミッションなのだとわかる。

「私たちはどうすればいいんですます?」

「アルセウスのプレートの回収が書いてあるあるな」

 アルセウスのプレート、数ヶ月前地球上空でダークプリズンの現人神マスタープリズンとアルセウスの戦いの際、敗れたアルセウスはプレートとともにミレリア地方アークスシティへと降下、プレートをすべて失い現在に至る。

「プレートの回収がダークプリズンに必要なのであるか?」

 気がつけば自身が深酔いだというのも忘れてドクターは真剣な面持ちで書類と面向かっていた。
 プレートの効力はすでに報告されているし、もちろんそれそのものが与える恩恵は大きい。
 しかし、アルセウスのプレートの影響力が大きすぎて、その周囲にまで影響を与えてしまう。
 正直、ダークプリズンが保持するにしても危険性は高いと言えた。
 とはいえ、たしかにアルセウスのこれ以上のパワーアップは危険極まりないといえる。
 しかし一度はあの現人神はアルセウスを倒している、それならば捨ておいても大した問題はないのではないのか?
 ふと、そんな風に考えていると、聞いたことのある声が突然響いてくる。

「絶対反対!! なんであいつらに頼まないと行けないんだ!!」

 ドクターはその声を聞いた瞬間、不機嫌さを顕にした。
 どうしてこういうタイミングで奴らは現れるのか、頭痛が痛くて仕方がないと言う様子でドクターはその声の主達を睨みつけた。

「おめーらうるせーである、つーか何しに来た?」

 その声の主達はトモエとアルセウスだった。
 そう、ついさっきまで考えていた相手だ。
 敵を目の前にして平然としていられる奴はいない、奴は敵……宿敵なのだ。
 だからこそドクターは険しい顔で彼らを迎えた。

「ダーリン、どうしたんだロボ?」

「ああ、今日はちょっとドクターたちに頼みがあってな」

 となりのアリサは気軽に話しかけるが、この関係はなにか間違っている。
 ドクターはさらに目を細めた。
 昨日の時点ならば怒り狂ってトモエに襲いかかっていただろうか?
 だが彼女も馬鹿じゃない、こんな場所で暴れることの無粋さも十分知っている。

「トモエ~、ついに頭が壊れたあーるか? なーんで、敵であるお前らの頼みなんぞ聞かないといけないんである?」

 ドクターはあえて嘲笑った。
 トモエたちの目的は分からないが、所詮は自分もダークプリズンの一員、あえて害なす者に対して義理を立てるつもりはない。

「トモエ、ドクター共に頼む必要などない! 行くぞ!」

 アルセウスも意見はあうのか、トモエの半袖の裾を口に咥えると引っ張っていた。

「まぁまぁ、聞けよドクター。これはドクターにも損な話ではないぜ?」

 しかし、トモエもまた中々に食い下がってくる。
 損な話ではない……という言葉を聞くとピクリとドクターの眉が動いた。
 利害関係を求めてきたか……中々面白い、ドクターはそう考えると少し聞く気になるのだった。
 その様子を見てか、トモエもドクターの表情から何かを感じ取り、更に言葉を続ける。
 「プレートが見つかったんだが取りに行けない。場所を教えるという報酬の代わりに、代価としてドクターの天才的科学力を貸して欲しい」

「ん? おいトモエプレートは……!」

 アルセウスが一瞬なにかを言おうとしたが、途中で口をふさいだ。

「……プレート、ねぇ」

 ……プレート、ついさっき与えられた自分の任務。
 これは好機なり、そう思えるが…。

「……断るある」

「ママ、どうしてロボ?」

 ドクターは手のひらを返して断った。
 さっき指令を効いていただけにアリサはどうしてなのか気になった。

「理由は簡単、誰が好きでトモエとアルセウスに力を貸すかであーる!」

 理由としては当然であった。
 だが、本質としてはあっているものの、細かいことを言えばもっと差異はあるだろう。
 まずひとつにドクターはオーデンが気にかかった。あいつに協力するのは癪だが今回ドクターたちはバカンスできたのだし、下手なことしたくはなかった。
 トモエたちにも積年の恨みはある、これも一因。

「ふん、こちらとしても頼りたくなど無いわ!」

 アルセウスも心底嫌と言う顔だ、よほどドクターたちに頼りたくないのかさっき以上に力を込めてトモエを引っ張った。

「第一、私がプレートを集めるのはお前らにパワーアップされると厄介だからであーる、お前らが集められないのならそれで結構!」

「え……でも指令書には……むぐっ!」

 ドクターは慌ててアリサの口をふさいだ。
 さすがに敵のトモエたちにこちらの作戦概要を伝えるわけには行かない。
 見ると、トモエはドクターの持っている書類に気づいたようで、なにかと覗こうとしている。
 ドクターは慌てて書類を裏返してテーブルに置いた。

「ほらほら、さっさとどっか行けであーる! 今日は見逃してやる!」

「ふん! 言われなくとて! いくぞトモエ」

「……仕方ない」

 ようやくトモエも諦めたようで、アルセウスに引っ張られてトモエはその場を去っていった。

「――ぷはぁ! ドクター本当にいいロボ?」

「癪である……なんか協力するのは癪である」

「……なんというか相変わらず天邪鬼だな」

 アリサの口から手を離すと、突然トモエたちが現れた方とは逆の方から聞き慣れた声が聞こえてきた。
 作者の片割れ、ユウキだ。

 結局のところはドクターの天邪鬼が原因なのは確かだろう。
 利害云々よりドクターにはそちらの方が大切であり、なんというか今は誰にも協力したくないという気分だった。

「ユウキさんはどこ行っていたロボ?」

「ん~、野暮用、ちなみに作者は今日一日は帰ってこれないかもしれないとさ」

「あいつ何やっているあるか」

 どうやら作者は出かけたらしい。
 どうでもいい相手だが、いざいないとなんだか寂しい気がして頭をポリポリ掻きながら空を見上げた。

「ふーん指令書ね」

 ユウキは、若干興味を持ったようでドクターがテーブルに置いた書類を覗き込んだ。

「お前でもみせられないあーるよ」

「そこまで野暮じゃないさ、で……今日はどうするんだい?」

「どうする……あるか」

 二日酔いもあり、あまり物事を考えたくなかった。
 大分気は楽になってきたけど、それでも考えたくないことはある。

「ママ、任務はどうするんですます?」

「かったりぃ~あるなぁ~……」

 本当にかったるそうであった。
 とはいえ、任務はこなさないと自分の居場所がない。

(ふぅん……)

 あまりに面倒そうな姿を見るとユウキはにやりと笑った。
 なにやら、このライアーキングよからぬことを思いついたらしく、早速頭を高速回転させる。

「やめとけやめとけ、俺らバカンスに来てんだし、お前が任務についてもどうせ失敗だ」
「なんであると?」

 ドクターがユウキに食いつく。
 あまりの予想通り反応にユウキは演技含めながらも微笑した。
 そのあまりに人を馬鹿にしたような顔にはドクターもムッとしてしまう。

「おめー本当にムカつくガキだなぁ」

「どうぞどうぞ♪ そんな言葉では痛くも痒くもないし♪」

「アリサ! スパロボ四号機の準備を! 吾輩任務につくある!」

 わかりやすいというかなんというか、ドクターは自分馬鹿にされるとすぐに行動に出た。
 ユウキもユウキだが、ドクターもドクターであるというところだろう。
 だが、アリサは嬉しそうに敬礼して直ぐ様海へと向かった。

「ユウキ! 私が出来る女だということ教えてやるである!」

 ビシッ! と人差し指をユウキにつきつけるとドクターはトモエを探して歩き出すのだった。




「さて……トモエは……いたであるな」

 トモエを探して10数分、ドクターはすぐにトモエたちを見つけた。
 もとよりテラスにはでかすぎるアルセウスの姿を探せばすぐに見つかる。
 ドクターはモンスターボールからむてきんぐを繰り出すと、足を止めてしばし考える。
 最初は普通に声をかけようかと思ったが、それは癪だとムテキングを出し、いやしかしこれはいくらなんでもと否定的に考えながら結局答えはやっちゃう方向に向くのだ。

「むてきんぐ、『でんじほう』」

「ポリ~」

 むてきんぐに『でんじほう』を命令するとそれはトモエたちに向けて放たれた。
 トモエたちは直ぐ様ドクターたちの攻撃に気づいて立ち上がり、回避する。

 そのまま一人と一匹は戦闘態勢を整えながらドクターマルス立ちを睨みつけた。

「不意打ちとはやる気らしいな……昨日は決着がつかずうやむやだったが、ここで決着をつけたいのか?」

 トモエはニヤリと笑った。
 八方塞がりの状態にどんどんとストレスはたまり、イラついていたのだろう、因縁掛けられたと思い少し気が紛らわせそうだと喜んでいるようにも見える。
 だが、ドクターマルスは戦う気など無い、そのため非常に面倒くさそうにトモエたちを見た。

「落ち着け、これはいわゆる挨拶代わりというやつであーる」

「挨拶だと? ふん……一体何を考えているんだドクター?」

 アルセウスは鼻で笑いドクターの様子をみる。
 ドクターとしては敵に素直にあいさつすることが出来なかっただけで、後は普段どおりだった。
 だが、それだけに殺気のないドクター達の様子にはトモエたちも違和感を感じてしまう。

「……協力してやるである」

「は?」

 それはとても小さな呟きだった。
 あまりにも今更協力するなどと言うのが気恥ずかしくドクターも声量が小さかったのだ。
 思わずトモエが聞き返すと、ドクターは顔を真赤に染めて叫んだ。

「だから! 協力してやると言っているであーる!」

「協力? そいつぁありがたいが一体どういう風の吹き回しだ?」

 トモエたちからすれば、急に掌を返したのだ、信じられないのも無理はない。
 だが、ユウキに馬鹿にされたドクターとしては絶対に見返してやりたい。
 しかし海底洞窟の場所は分からないのだからここはトモエに協力するしか無かった。

「……ふん、お前らには関係の無いことであーる。ほれ、こちらの気が変わらないウチに付いて来いである」

 ドクターは一瞬目を細めると、すぐに踵を返してトモエたちに背中を向け、歩き出した。
 今更ながらトモエたちに協力するのは気がひける。
 だが任務もあるのでそうは言ってられないのだ。

 トモエたちは訝しげにしながらも素直にその後ろを付いていくのだった。



「あ、ダーリーン! こっちロボーッ!」

 予定通り海岸へと行くと、準備を終えたアリサがドクターたちを見つけて手を振っていた。
 最初に声を掛けたのがトモエだというのはドクターにも癪に触ったがいちいち起こっていられない。
 とりあえず積年の恨みはまた今度果たせばいいとして巨大ロボットの前に立つと振り返り説明を行った。

「スーパーウルトラデラックスハイパーメガトンロボ四号機、別名水陸両用スバロボ、であーる」

 ドクターマルス自慢の巨大ロボットだ。
 その姿は一見愛嬌もありそうなバケツのようなデザイン。
 足は細いが走行面では問題はない、さらに腹部には大量の砲門を持ち、両腕は巨大ドリルとなっていた。

「こいつで行けば海の底どころか地球のコアまで到達してやるであーる」

「おい、ドクター……たしかにこいつなら海底に行けるだろうが洞窟はこんな巨体入らないぞ?」

 ドクターはそう聞くと、まぁ当然かと思った。
 さすがに今回の巨大ロボットは50メートルもあるサイズだ、そんな大きな洞窟があったら洞窟だと認識もしないだろう。

 万が一と思い、仕入れてきた酸素ボンベを懐から取り出すとそれをトモエたちに渡した。

「ふむ、ポケモンレンジャーも使っている小型ボンベ貸してやるである、入口付近に着いたら勝手にしやがれ」

「でも、ドクターたちはどうするんだ? 俺たちだけじゃプレートをゲットしちゃうぜ?」

「ふん、アリサとむてきんぐに向かわすである」

 ドクターはそう言うとコクピットへと乗り込む。
 機体の電源を入れて、ロボットを立ち上げようとすると。

「あ!おい! 俺達はどうすれば!?」

 どうすれば、というのはどうやって洞窟へ迎ということだろう。
 ドクターは上部ハッチを閉めながら。

「足にでもしがみついてろである!」

 ドクターはそう言うと巨大ロボットを動かして海へと向かった。
 ロボットは海へと入ると足を使うのをやめて、背中に背負ったバックアップのスラスターで水中を進んでいく。
 ほどなくして、洞窟らしきものは見つかった。

(ここで当たっているあるか?)

 ドクターは機体を止めてトモエたちの様子をみると、トモエたちは洞窟に向けて泳ぎだした。
 どうやら当たっているらしい。
 ドクターはアリサたちを見送るとさっさと帰投しようと思ったが、そんな時に限って。
 ビー! ビー ビー!

 突然警報が巨大ロボットのコクピット内に鳴り響く。
 何が起こったのかと思うと、機体が後ろからなにかに絡みつかれて動けなくなるのだった。

「い、一体なにが起こっているあーる!?」

 警報がうるさくなく、足の一本が折られた。
 絶体絶命かと思っていると、突然機体の後ろ側から大量のテッポウオの集団が泳いできてアリサたちを飲み込んで洞窟へと入っていった。

「あ、アリサ!? こ、このぉ!」

 ドクターは機体を激しく動かして後ろにいるなにかを引き剥がした。
 するとそこにはあまりに巨大なオクタンがいたのだ。
 一体何事かと思ったが、オクタンが絡み付いていたとは予想外。
 というより、これほど大きなオクタンそのものが予想外だろう。

 なんせそのオクタン、50メートルちかくの超巨大オクタンなのだから。

(一刻も早くアリサを救いたいであるが……くっ!)

 ドクターはオクタンに向けて火器類のセーフティロックを解除した。
 操縦桿のトリガーに手をかけて、スイッチを押し込むと、腹部に備えられた砲門が火を吹いた。
 大量のナパーム弾、魚雷、サブロック。
 大量の火器が巨大オクタンを襲う。
 だが、巨大オクタンはまるで必死にあがくドクターをあざ笑うように高速で泳いでそれらを回避してみせた。
 
 深く沈みこみ、オクタンは何かを狙う。
 何を狙おうと今度は後ろはとらせない、接近してくるのならこの巨大ドリルで一撃粉砕するのみ。
 ドクターは息を飲んだ。

 一拍静かな空気が流れた中、オクタンはドクターの巨大ロボットに急速接近した。

「こんのぉ! やらせはせんである!」

 瞬時に反応したドクターはその巨大ドリルを振りかぶった。

 次の瞬間、オクタンは黒い塊を吐いた。
 オクタンの『オクタンほう』だ、ダメージは大きくないがドクターの巨大ロボが揺れた。

「ちぃ! 目くらましなどぉっ!」

 『オクタンほう』はまるで煙幕なって水中を黒く染め上げる。
 何も見えないが、ドクターはドリルを振りかぶった。
 高速回転するドリルは水流を生み、渦潮を起こす。
 一瞬で墨は払われ、視界は確保されたがその先にはオクタンはいない。

 直後、またもやドクターの巨大ロボットが揺れた。

「しまった!? また後ろ!?」

 オクタンに一瞬の隙を突かれてまた背後を取られてしまった。
 身動きがとれず、ドクターは必死に操縦桿を動かそうとするが、あまりに強靭な力に巨大ロボットの体はビクともしない。

「動け! 動けであーる!!」

 必死に動かし、抗おうとする。
 だが、突如ロボットの右腕が折られた。
 柔らかい関節部分を攻撃されると、頑丈な鋼鉄の体もあまりに脆い。

 直後爆発、どうやらオクタンの放った『はかいこうせん』がゼロ距離で放たれたようだった。

 ビー! ビー! ビー!

 激しく警告音がなる。
 さっきの爆発のダメージで機体の電力が不足して大半の機能を停止しようとしていた。
 やばい、おまけにコクピット内に海水が侵入を初めていた。

「や、やばいである!? このままでは!?」

 あまりに絶体絶命の事態についにドクターも生命に危機を感じた。
 そんな時、突然頭に声が響いてくる。

『ドクター、そのまま機体を出ろ』

「ユウキ!? どこから!?」

 突然ユウキの声が響いてきたのだ。
 どんな原理かはわからないが、ドクターは根っからの性分か今の状態も考えずに考察を始めてしまう。
 だが、そんな様子をユウキも感じてか。

『生きてりゃ後で説明してやる、だから早く外に出ろ!』

「くっ! 何をする気か知らないあるが、ちゃんと責任とれあるよ!」

 ドクターはそう言うとコクピットハッチを開けて、海の中に出た。
 口を手で多い、目を細めて海中に出ると、そこには見たこともないポケモンがいた。
 いや、資料で見たことがある……そうそれは。

(海の王者……カイオーガ!?)

 なんと、目の前にカイオーガがいた。
 オクタンと比べるとずいぶん小さく見えるカイオーガだが、ドクターから見れば遥かに大きい、そしてこのカイオーガいいも知れぬプレッシャーを放っていた。

 カイオーガはゆっくりとドクターの真下に潜ると一気に浮上を始めた。

 バッシャァァン! と音を立てて海面から飛び上がると、そこはさっきまでの晴れ模様は嘘のようだと嵐が起きていた。
 ふいに、ドクターの体が浮遊感を覚える。

 当然だろう、カイオーガにドクターの体ははね上げられたのだから。

「て……うそぉぉって!?」

 すぐに自由落下を始めるドクター、空中では為す術がないがじたばたと暴れていると突然なにか自分の体を持ち上げられた。

「タリ~」

 チルタリスだった、ユウキのポケモンだろうか?
 チルタリスが足にドクターの服をひっかけて嵐の空を飛ぶ。

 その様は、街の中に佇むユウキも見ていた。

「よし……ドクターは救えたな……しかし、あんなオクタンがいるとは世の中広いな」

「まるでダイオウイカですねマスター」

 ユウキの隣にはサーナイトが佇んでいた。
 メスのような風貌だがオスのサーナイトは静かにその超エネルギーを使う。

「カイオーガ、あんなのに暴れられたら面倒だ、叩き伏せろ」

 ユウキがそう言うと、サーナイトを介して遠くのカイオーガにテレパシーが送られた。
『よかろう! 眷属ごときに遅れはとらん!』

 宙を浮いたカイオーガはそのまま頭から水中へと潜る。
 そこには邪魔をされたというような表情のオクタンが待ち構えていた。
 カイオーガと比べて五倍近い巨体……だが、その戦闘は一方的だろう。

 オクタンはその柔軟な体をつかってカイオーガに絡みつこうとするが、カイオーガは海流を操りオクタンの自由を奪って足の一本に噛み付いた。
 まるで引きちぎりそうな強靭な顎で噛み付かれるとオクタンも痛みを感じて激しく暴れた。
 そのままカイオーガは噛み付いたまま海面へと上がるとオクタンを空中へとぶん投げる。
 巨大オクタンの体が宙を舞った。
 そこに繰り出されるのは。

 ピッシャァァン!!

「オーークーーーッ!?!?!?」

 カイオーガの操る『かみなり』だ。
 『かみなり』がオクタンを直撃する。
 一瞬して何億ボルトもの凶悪な電圧をその体に帯びたオクタンは気を失ったのかダラリとして海中へと沈んでいった。

 その様はユウキも見ていた。
 グッジョブと回収へと向かおうとするが、直後ユウキの体が動かなくなる。

「……昼行灯のくせにどういうつもりだ?」

「……かったる、なんの真似だ」

 動けないユウキの後ろに一人の男が立った。
 作者だ、いなくなっていた作者は険しい顔をしてユウキの後ろにたったのだ。

「俺達はNPCだ、余計な手出しは無用」

「……知ったこっちゃ無いね、あのままじゃドクターは死んでいた、それを助けて何が悪い」

「うぬぼれるなユウキ! お前の行為はNPCの権限を超えている!」

「ち……」

 ユウキは舌打ちした。
 本来ユウキも作者もこの世界にいていい存在じゃない。
 だからこそ、この世界の調和と秩序を護るために不干渉で無ければならないのだ。
 だが、ユウキには納得できないこともある。
 少なくとも、彼には救える命を見捨てるなんてことは絶対にできない。

「もどるぞユウキ、これ以上は調和のバランスを崩す」

 作者がそう言うと、ユウキと作者の姿がすけ始めた。
 ユウキの連れてきたポケモンたちも体はゆっくりと解けるようにその世界から姿を消してしまう。


「……なんだったであるか?」

 チルタリスに釣れられて、陸地へと下ろされたドクターはカイオーガと巨大オクタンの戦いを呆然としながらみていた。
 気がつくと空は晴れて、戦いは終わった。
 そういえば、ユウキはどうしたのだろうか?

 ドクターは海岸を走りまわり、ユウキの姿を探したがユウキの姿は見つからなかった。
 当然だ、ユウキはもうこの世界にはいないのだから。

「……アリサ、無事であるか?」

 やがてユウキをさがすのに諦めたドクターはアリサとむてきんぐの身を案じた。
 祈るなんて真似はしたくなかったが、今回ばかりは神に祈らざるをえない。

 ……やがて、トモエたちは帰ってくるだろう。
 だがその姿はきっと満身創痍だろう。
 彼女はただ、待つことしかできなかった。

テーマ : ポケモン
ジャンル : ゲーム

Fantasy 最新話だよ

ようやく11話完成……ドクターマルスと365日はもうちょい待って……お願い、はぁ……疲れた。


第11話 深きものども―Deep One's―




 海を返せ、我らが海を返せ――!
 海を返せ、我が愛しきあの海を――!

 憎い、それはあまりに憎い!

 奴らさえこなければ、海は穢れていたのに!
 やつらさえいなければ、海は淀んでいたのに!

 海を返せ――海を返せ!
 海を……海を……海を!








「……どうだ、アル?」

 バーバラシティへ旅行に来た二日目、トモエとアルは海上のど真ん中にいた。
 沖から約800メートル、見返せばバーバラシティが見え、また反対を見れば島も見えるという間の位置。
 そんなところに借りてきたボートに乗ったトモエとアルだったが、アルは難しい顔をしながら海とにらめっこをしていた。

「間違いないぞ、やはりこの周囲のどこからかプレートの気配がする」

 プレート、もはやここ最近聞きなれた単語にトモエはため息を付いた。

「まさか旅行に来て、プレートの回収作業になるとはな……運がいいのか悪いのか」

 アルセウスの感知能力はアークスの街ひとつも覆えない弱いものだ。
 そういった点を考えればアークスから200マイルも離れたバーバラシティでプレートの気配を発見できたとなると儲け物と思うべきだろう。

「で、プレートはどこにあるんだ?」

 周囲を見渡せば街、海、島とある。
 街にあるのならば昨日の時点でアルが気づいていただろうから論外として、次に考慮に入れるべきは海か島か。

「それほど深い場所じゃないが、それでも素潜りで潜れる深さじゃねぇぞ」

 トモエは海を覗いて呟いた。
 海はリゾート地とするには申し分のない青をして、太陽の光を鮮やかに透過している。
 穏やか、実に穏やかな様相をしている。

 何がって? 海がさ。

「……一度潜ってみる、トモエは待っていてくれ」

 アルセウスはそう言うとボートから飛び出し海の底へと潜っていった。
 トモエは今回は見守るしか無いなと、船の上に座り込む。
 ふと、空を見上げると今日も変わらずにギンギンと太陽が地上を照らしていた。

「穏やか……か、前回のプレートの時に比べるとあまりに穏やか」

 トモエは今回の件に違和感を覚える。
 いつもアルが感知できるほどの状態の時は何かしらその周囲にプレートが影響を与えていた。
 今回も何かしら影響があるはずなのに、そんな影響は見えないし聞かない。

 ふと、心配になって海の方を見るも、海はいつもどおりの顔しか見せない。



(……海底か、思ったより遠いな)

 アルは潜りながら考えた。
 美しい海は数多の生物達の宝庫であり、穏やかな海流がその場を包む。
 果たしてこのような場所にプレートはあるのだろうか?

 プレートに近づいているのならより自分の感じる感知は近づくだろう。
 だが、今のところそのような気配はない。
 気配がない……というより気配が薄いというべきだろう。

 アルセウスがいくらプレートの気配を探しても、気配はあるのに微弱でまるでその位置が掴めない。

「――ッ! あれは……ゴボッ!?」

 ふと、アルは海底の壁面にポッカリと空いた穴を見つけた。
 ついつい、自分の状況を忘れて声を上げると一気に気泡が飛び出し、海水がアルセウスの中に侵入する。
 しずくプレートを持たないアルセウスでは水中に適応ができないのだ。

 アルセウスは急に酸素を失い、慌てて海面へと上がった。


「――ぷはぁっ!」

 ……助かった、そんな感じだろうか?
 アルセウスは懐かしい呼吸する感覚に包まれながら、海面へと上がった。

「アル、どうだった?」

「プレートは見つからない、だが変な洞窟があったな」

 「洞窟?」とトモエがつぶやくと、アルセウスは海底で見つけた洞窟の分かる限りの詳細を伝えた。

「ふーむ……海底洞窟ねぇ」

 トモエは少し考察する。
 海底に洞窟があるのはまぁいいとしよう。
 だが、そこになんの意味があるのだろうか?

「アルはプレートがそこにあると思うのか?」

「確証があるわけないだろう、かもしれない程度だ……だが、ポケモンにとってはどうやらプレートは最高の餌らしいからな」

 もしポケモンがそれを見つければあのスリーパーたちのように持ち去る可能性はある。
 プレートはそのポケモンに絶大な恩恵を与える、そしてそれと同時にその周囲には奇妙な現象を起こすことがあった。

「海底の先に持ち去ったプレートが置かれている可能性はわかった、だがどうやって行くよ?」

 トモエがひどく冷静な言葉を言うとアルもぐうの音もでない。
 人間のトモエは勿論のこと、アルも水中では息が続く限りしか活動できない。
 気をつけないといけないのは、帰りの分の酸素と体力も用意しないといけないということだ。

「エラ呼吸できるならともかくなぁ……?」

 トモエもアルも途方に暮れるしかなかった。
 ことアルにおいてはまさに万策尽きた。
 自分が水中に潜れる時間はどれくらいだろうか? 5分? それとも10分?
 どちらにしろ、並大抵の時間では奥まではたどり着けないだろう。

「規格外のことは規格外の奴らに頼るしか無いか……」

 トモエがボソッ呟いた。
 トモエにはまだ策は残っている。
 だが、この策だけはどうしても使いたくはなかった。

「とはいえ……背に腹は変えられぬ、か」

「トモエ?」

 その日の正午、彼らはバーバラシティへと帰った。
 ある人物に、プレート捜索の協力を頼むために。




「なぁトモエ……規格外ってどういうことだ? 一体誰に頼るつもりなんだ?」

 アルはずっと考えたが、トモエが思いついた規格外など分かるはずもなかった。
 もしかしたらトモエの知り合いが、この街に住んでいるのだろうか?
 そんな風に考えているとふと、トモエの足が浜辺から離れたショッピングモールのテラスで止まった。

「あいつだよ」

 トモエが指す先、そこには何かの書類を険しい顔で読む赤毛の女性の姿があった。
 それを見て……アルセウスの顔が険しくなったことは言うまでもないだろう。

「絶対反対!! なんであいつらに頼まないと行けないんだ!!」

「おめーらうるせーである、つーか何しに来た?」

 近くで聞きなれた声で叫ばれようものなら、特にその声が聞きたくもない声なら尚更声は不機嫌に、顔は険しくなるだろう。
 ドクターマルスの鋭い眼光はアルセウスを睨む。

「ダーリン、どうしたんだロボ?」

「ああ、今日はちょっとドクターたちに頼みがあってな」

 テラスの椅子に座るもう一人の少女アリサはトモエが現われると上機嫌だった。
 だがトモエの言葉を聞くと、ドクターは「はぁ?」と信じられないという顔というべきか、相手をナメている顔というか、とにかく変な顔をした。
 まぁ、当然といえば当然であろう。

「トモエ~、ついに頭が壊れたあーるか? なーんで、敵であるお前らの頼みなんぞ聞かないといけないんである?」

「トモエ、ドクター共に頼む必要などない! 行くぞ!」

 まぁ、両者の意見は間違ってはいない。
 ドクターの言うように、トモエはドクターたちの敵だ、それは逆を言えばアルセウスたちにとってもそうなのだ。
 二人は明らかにそれを嫌がるような仕草をするのだから始末が悪い。

「まぁまぁ、聞けよドクター。これはドクターにも損な話ではないぜ?」

 しかしトモエは食い下がる。
 もとよりこれしか手は思いつかないのだから仕方がない。
 損得と言う言葉を聞くと、ドクターの顔が僅かに動いた。
 少し興味を持ったのだろう、そうトモエは確信すると本題をぶつけた。

「プレートが見つかったんだが取りに行けない。場所を教えるという報酬の代わりに、代価としてドクターの天才的科学力を貸して欲しい」

「ん? おいトモエプレートは……!」

 ある矛盾を聞いて思わずアルセウスは本当のことを言おうとしてしまうが、そこはドンッ! と横腹をトモエに叩かれて目で黙れと言われてしまう。
 その瞬間アルはトモエに対してどう思ったろうか?
 少なくとも言わぬが仏は確かであるが……。

「……プレート、ねぇ」

 ドクターは考える仕草をした。
 顎に手を当て、何かを計算する。

「……断るある」

「ママ、どうしてロボ?」

 計算した結果、ドクターが出した答えはノーだった。
 食い下がったのは珍しくアリサだったが、ドクターは実につまらなさそうに答えを言った。

「理由は簡単、誰が好きでトモエとアルセウスに力を貸すかであーる!」

「ふん、こちらとしても頼りたくなど無いわ!」

「第一、私がプレートを集めるのはお前らにパワーアップされると厄介だからであーる、お前らが集められないのならそれで結構!」

「え……でも指令書には……むぐっ!」

 聞けば最もの意見ではあるが、突然アリサの口をふさぐドクターマルス。
 指令書……? トモエもその言葉が頭に引っかかった。

(ダークプリズンがバーバラシティで行動しているのか?)

 指令書というと、もしかしたらドクターが険しい顔で見ている書類だろうか?
 気になって見ると、その視線に気づいたドクターは書類を裏返した。

「ほらほら、さっさとどっか行けであーる! 今日は見逃してやる!」

「ふん! 言われなくとて! いくぞトモエ」

「……仕方ない」

 アルセウスはトモエの袖を引っ張るとその場を去る。
 トモエとしてもこれ以上ドクターに食い下がっても印象を悪くするだけと理解した結果だった。

「……で、これからどうするのかなアルセウスさん?」

 形で言えばあの提案を蹴ったのはアルだ。
 トモエは冷ややかに笑いながらアルを流し目で見た。

「ふん、敵の力を借りる必要なぞ無い……第一汝こそ、プレートを見つけた等と嘘をついてからに」

「嘘はバレなきゃ嘘じゃないって言うだろう?」

 まぁ今回はトモエも嘘をついたし、結果は仕方が無いかも知れない。
 しかし結論を認めても事態は動かない。
 色々と気になることはあるが、まずはプレートをどうにかするべきだろう。

(はぁ……困ったね。どうしようか)

 しかし考えども考えども海底洞窟に向かう方法が思いつかない。
 秘伝の技のひとつ(地方によるが)、『ダイビング』が使えれば向かうこともできるが、生憎使えるポケモンがいないし、ひでんマシンもない。
 潜水服に酸素ボンベは借りることもできるが、こいつは潜水の資格がいる。
 向かう方法はありえそうで、ありえない……なんとも歯がゆい展開が待ち受けているじゃありませんか。
 「はぁ……」と、もう一度溜息をつく、一人と一匹は途方に暮れている。

「むてきんぐ、『でんじほう』」

「ポリ~」

 突然だった。聞き覚えのある声が聞こえると瞬間とてつもない電圧の一撃がトモエたちに放たれる。

「っ!? アル!」

「わかっている!」

 トモエたちは一瞬早く反応してその場から立ち退き、声のした方を睨みつけた。
 そこにいたのは間違いない、ドクターマルスとポリゴン2だった。

「不意打ちとはやる気らしいな……昨日は決着がつかずうやむやだったが、ここで決着をつけたいのか?」

 トモエはニヤリと笑った。
 少々イラついていたこともあり、さながら喧嘩をふっかける形で着たドクターマルスが丁度よく思えた。
 だが、ドクターマルスはそんなトモエをあざ笑うか、あるいは面倒くさそうに流して言った。

「落ち着け、これはいわゆる挨拶代わりというやつであーる」

「挨拶だと? ふん……一体何を考えているんだドクター?」

 アルセウスは鼻で笑うようにそう言った。
 体はいつでも動かせるように準備万端だが、不思議なことにドクターマルスには初めから今まで殺気の欠片もない。
 それはどこか今までの彼女を知っていると不気味で、珍しくアルも冷や汗を流していた。

 魂胆が読めない、だから彼女もいつでも不穏な動きをしたらドクターに致命の一撃を与えられるように構えているのだ。
 勿論ドクターもそれがわかっているのだろう、分かっているからアルを鼻で笑う。
 もとより徹底して馬の合わないドクターとアルだ、酒を呑むとそれが嘘のように仲良くなるが普段はこの通り、というところだろう。

「……協力してやるである」

「は?」

 それは呟きのようだった。
 あまりにドクターは小さく呟いたのでトモエも一瞬聞き逃してしまう。

「だから! 協力してやると言っているであーる!」

「協力? そいつぁありがたいが一体どういう風の吹き回しだ?」

 なんと一度はこまねいたにも関わらず、ここに来て急に掌を返して協力すると言っているのだ。
 トモエからすればまさに渡りに船ではあったが、この状況はあまりに怪しすぎる。

「……ふん、お前らには関係の無いことであーる。ほれ、こちらの気が変わらないウチに付いて来いである」

 ドクターは一瞬目を細めると、すぐに踵を返してトモエたちに背中を向け、歩き出した。
 トモエとアルは互い顔を合わせて考える。
 素直に付いていっていいものだろうか?
 少なくとも彼女が彼らの敵であるのは事実だし、いくらなんでも意見を変えるには早過ぎる気がした。

 だが、ここに選択肢はない。
 少なくとも彼らには海底洞窟へと行くことなどできないのだから。

「……行こうアル」

「どうなっても知らんぞ……」

 アルはしぶしぶそう言ってドクターの後ろを追うのだった。
 果たして鬼が出るか、蛇が出るか?
 それはまだわからない。





「あ、ダーリーン! こっちロボーッ!」

 観光客たちがいる海岸から少し離れた海辺に行くと、そこには巨大な建築物にも見える一機のロボットといつもの乙女ロボがいた。
 ドクターたちが近寄ると周囲には何もないこともあってか、以前のショッピングモールの時とは違い、素早い反応でトモエに気づき笑顔で手を振っていた。

 ドクターはその巨大ロボットの前に立つと振り返り、腕を組んで自信満々にロボットの説明を始める。

「スーパーウルトラデラックスハイパーメガトンロボ四号機、別名水陸両用スバロボ、であーる」

「水陸両用……」

 その巨体は以前にも見かけたことのあるデザインだった。
 まだアルセウスがアークスシティに落ちてくる前あまでは、頻繁にアークスシティを火の海へと変貌させていったダークプリズンの巨大ロボット。
 その巨体はあまりに大きく、まるで山のよう。まるでポリバケツのような無骨なデザインは立っているのが不思議な位細い義足に支えられ、両腕はマニュピレーターとしては機能しなさそうな巨大ドリル。
 大量の火器類も搭載されており、それが戦闘を主軸として造られていることは明白にわかるデザイン。
 一見コミカルで弱そうなデザインだが、実際にはミレリア地方の一軍もってしても止められないほどの戦闘スペックを誇るロボットだ。

 ……まぁ遥か昔にアルセウスの『さばきのつぶて』で破壊されたわけだが。

「こいつで行けば海の底どころか地球のコアまで到達してやるであーる」

「おい、ドクター……たしかにこいつなら海底に行けるだろうが洞窟はこんな巨体入らないぞ?」

 あまりの巨体に呆れたように言ったのはアルだった。
 洞窟の入口のサイズは少なくともアルセウスがギリギリ入れるくらいのサイズしかなかった。
 この巨体はゆうに50メートルはある、こんな巨大ロボットが入れるわけがない。

「ふむ、ポケモンレンジャーも使っている小型ボンベ貸してやるである、入口付近に着いたら勝手にしやがれ」

 そう言うとドクターは口に付けるだけの小さな酸素ボンベをトモエとアルに渡した。
 ポケモンレンジャーも水中ミッションの際使っている品で、水圧40にも耐え、2時間水中に潜れるという代物をどこでドクターが手に入れたのかはわからないが、入り口付近からは自力とのことだった。

「アル、海流とかは?」

「穏やかなものだ」

 それを聞くとトモエは安心する。
 海流が早いと、いくらなんでも生身で突入するのは難しい、どうやらこれなら簡単そうだなとトモエは安堵した。

「でも、ドクターたちはどうするんだ? 俺たちだけじゃプレートをゲットしちゃうぜ?」

「ふん、アリサとむてきんぐに向かわすである」

 ドクターはそう言うと予め開いてあったコックピットへと乗り込む。

「あ!おい! 俺達はどうすれば!?」

 最後、そう聞くとドクターは。

「足にでもしがみついてろである!」

 そう言ってコクピットに乗り込み、ハッチを閉めた。
 瞬間巨大ロボが起動して、動き出してしまう。

「ええーい! あのうつけめ! 非常識にも程があるだろう!」

 慌てて酸素ボンベを口に加えたトモエとアルは直ぐ様巨大ロボの足にしがみつく。
 見ると手馴れたように反対側の足にはアリサとポリゴン2がしがみついており、その巨体はゆっくりと海の中へと沈み込んでいった。



(聞こえるかトモエ、己のテレパシー聞こえるか?)

(アル? どうした?)

 水中ということもあり、喋ることのできないアルはふしぎプレートを体に取り込むとテレパシーを使いトモエに話しかける。
 トモエは伝わるか伝わらないかはわからないが、テレパシーを送るイメージをする。

(気をつけろトモエ、この海何かおかしい気がする)

(おかしい……?)

 トモエはドクターの巨大ロボにしがみつきながら周囲を見渡した。
 別にどうということはない、非常に穏やかな海だ。

 やがて巨大ロボは海底洞窟の側に着けると、静止してGoサインを出す。
 ここからは自力で泳いで行けということだろう。

 トモエとアルは顔をあわせて頷き合うと海底洞窟に向けて泳いだ。

(たしかに穏やかだ……だが、この違和感はなんだ、なにか……なにかがおかしいぞ?)

 そう、トモエも何かおかしいと感じていた。
 それがなにかわからなかったが、泳ぎながら周囲を見渡すとあるひとつ足りないものにようやく気がついた。

(生物の営みがない? そんなことがあるのか?)

 そう、豊かな海で知られるバーバラシティ周辺の海にはあるまじき姿を今、見せているのだ。
 確かに海は綺麗で流れも穏やかだが……なにもいないのはおかしい。
 そう思っていると、突然異変は背後から襲ってきた。

 ゴボォッ!

 突然大量の気泡が漏れる音が後ろからした。
 トモエたちは慌てて後ろを振り向くと、そこにいた存在に驚愕した。

『う、うわぁぁぁ!? い、一体何がおこっているであーる!?』

 なんと、後ろを振り向くとそこには巨大ロボに絡みつく巨大ななにかがいた。
 なにか……というと、一言で言い表せるが、言い表わせない気もするとんでもないものだった。

(オクタン……なのか?)

 そう、それは紛れもなくオクタンなのだ。
 ではなぜにクエッションマークがつくというのか?
 それはサイズだ。

 なんとそのオクタンは50メートルあるドクターの巨大ロボに負けないほど大きく太く柔軟な足をロボットに絡ませて身動きを封じている。
 慌ててアリサとむてきんぐはドクターを助けようと向かうが、これは危険と感じトモエはアリサの腕を掴んだ。

(馬鹿っ! あんなでかいオクタンに正面から向かってどうになる!?)

 水中では言葉発せない、そう思うことしかできない。
 それゆえにアリサにトモエの心配する気持ちは伝わらない。
 必死にもがいてドクターの元へと向かおうとするが、トモエも必死でアリサを抑えつけた。

(!? トモエ、何か来るぞっ!?)

 突然トモエにアルのテレパシーが送られてくる。
 なにか……それはオクタンたちの後ろからやってきた。

 それは黒い塊で、大きさはゆうに100メートルはあろうという大きさだ。
 まるで流動的に形が変わり、それは一心不乱に海底洞窟へと向かってくる。
 その進路上にあったトモエたちは驚愕する。

(テッポウオの大群!?)

 なんとテッポウオたちが体を寄せ合わせて一丸となって海底洞窟を目指すのだ。
 トモエたちはその強大な塊相手には為す術もない。
 あっという間にその体はテッポウオの大群に飲み込まれたのだ……。





 突然襲う、巨大オクタン、そして大量のテッポウオ。
 絶体絶命のドクターと、トモエたち。
 彼らは一体どうなるのか?

 だが、ここからはしばらく彼らから目を離してもらいたい。
 これから少し観てもらうのは、まさに真相、まさに深き闇。





 ニクイ、ニクイ、ニクイ――!
 ナゼヤッテキタ、ドウシテウミヲウバウ!

 ニクイ、ニクイニクイ!
 ワレラノウミヲカエセ、ワレラノウミヲトリモドセ!

 それはまるで悪魔の慟哭だった。
 人の言葉では言い表せないような声でまるで泣き叫ぶように呪いの言葉をつなげ続ける集団が存在する。

 そこはどこなのか?
 それは知る由もない、だがそこはロウソクの光が無ければ真っ暗闇の洞窟であり、巨大な空洞だった。
 空洞の壁面はまるで常に水が染み出すように湿っており、それだけの湿度を持つのにコケさえ生えない。
 空洞の中央にはドクターの巨大ロボさえ入りそうなほど広い広間と祭壇があり、その祭壇の下には呪いの言葉を呟くように祈る集団がいた。
 皆一様に漆黒の見窄らしいローブに身を包み、その視界は見えない。
 それは人なのか? 一見するとそれはヒトのカタチを何かという印象さえ受けるだろう。
 まるで言葉だけで人が殺せそうなほどの激しい怨念を振りまいて、ただ祭壇に祈る集団はまさに邪教徒の様相。

「ふむ、ふむふむ。なるほどこれが白人がこの国に訪れる前から存在していた邪教か。実に興味深いかな、かな?」

 ヒトのようなソレらは、突然聞き覚えのない男の声に一斉に振り向いた。
 そこにいたのは、赤い燕尾服を着て、黒いマントを纏った40代くらいの初老の男性だった。
 かなり特徴的な喋り方をして見た目においても一度見れば忘れられないであろう出で立ち。
 髭を生やして、見た目より老いたイメージを与えるその男は妙に笑顔でその様子をみていた。

 だがソレらはその異物に対して牙を向くだろう。
 一斉に振り返ったソレらは表情はわからないが、皆一様に暗闇の奥から目だけを光らせている。

 ニンゲン、ニンゲンダ。
 ドウスル、ドウスル、ドウスル?
 コロソウ、コロシテシマエ、ニンゲンハコロシテシマエ!

 まるで獣のような低い唸り声にも似た恐ろしい声だった。
 ソレらは僅かばかりの話し合いを行うと、直ぐ様男に牙を向く。
 だが男は笑顔を崩さず微動だにしない。
 まるでこれからこの場でティータイムでも始めるかのような落ち着きをもっており、それは余裕すらみえる。

「あ、いや、いやいや。吾輩は敵ではないよ? むしろ協力者」
 目を細めて笑い、協力者だと言っても、ソレらには通用しないだろう。
 もとよりソレらは人間に強い敵意を持っている、人間をみれば襲うのは必然のような存在。

 コロセ、コロセ、コロセ!

 常人ならばすぐにでも発狂してしまいそうなこの状況にも関わらず、男は平然だ。
 そう、彼には絶対の自信があるのだ。
 ソレらは非常に興奮し、今にも跳びかかりそうだった。

「仕方がない……少し痛い目をみてもらうしかないかな、かな?」

 男はそう言うと、懐からモンスターボールを優雅に地面に落とした。
 モンスターボールが開き、そこから一瞬の閃光が放たれポケモンが一匹その場に姿を表す。

 そのポケモンを見たとき、ソレらは恐れおののいた。

 そのポケモンは一言で言えばまるで獣だ。
 強靭な四肢は大型の肉食獣を思い浮かべ、虎柄の体毛を持ち、一番特徴的なのは背中に雨雲を背負っていることだろう。

「ユーピテル、少し彼らを脅かしてさしあげなさい、さい」

 ユーピテルと呼ばれたポケモンは微動だにしなかった。
 別に命令を無視しているわけではない、動く必要が無いだけだ。
 その証拠に、気がつけばまるで煙突が煙を吹くように背中に背負っている雨雲は祭壇の上空に登り、厚い雷雲を形成していたのだ。

 突如祭壇に降る大雨、そして稲光。
 その光はソレらの戦いの意思を削ぐには十分すぎた。

 オオ、イカズチ……ワレラノテンテキ……ニクイ、ニクイ!

 まるで悲鳴、まるで慟哭。
 そのポケモンに睨みつけられるだけでソレらは何も出来はしなかった。

「ふう、落ち着きたまえ、まえ。吾輩は敵ではない、なに、ただここで起きる現実を見たいだけなのだよ、だよ」

 まるで威風堂々として、神のような輝きを持つそのポケモンはあらゆる物を畏怖させるかのようだった。
 だが、そんなポケモンでさえも、その男の前には膝まづくというのか?
 男は終始笑顔であった、絶対の自信、己のトレーナーとしての格に絶対の自信を持つ者の顔であった。

(ふふふ、ディープ・ワンズ……まさか実在していたとはね、わね)

 深きものども……ディープ・ワンズ……それは人ではなき者。
 空想の者、それは決して人とは相容れない。
 そんなオソロシイモノさえ畏怖させるのは、あのダークプリズンの幹部。そうこの男こそダークプリズンの幹部の一人雷神デーランなんのだ。
 デーランはうっすらと微笑む、目を細め、その瞳に何を見るのか?
 隣に佇むポケモンは何も言わない。
 一体これから何が起こるのか……そして何が待ち受けるのか……それはまだわからない。





「――う……ここ、は?」

 トモエが目を覚ました場所は真っ暗闇の洞窟の中だった。
 トモエの後頭部には柔らかい感触があり、近くに唯一その場所を知らせる携帯ランプが置かれている。
 海の匂いがして、朦朧とする意識の中、目の前に一人の少女の顔が映った。

「アリサ……?」

 それはアリサだった。
 アリサが心配そうにトモエの顔を覗いている。

「良かった……目が覚めたロボねダーリン」

 アリサはトモエが目覚めると安堵した表情を見せた。
 ゆっくりと意識を取り戻していくトモエはやがて今の状態に気がつく。
 どうやらアリサに膝枕をされている状態だったようで、ゆっくりと頭を持ち上げるとその場の周囲を見渡した。
 アルセウスとポリゴン2の姿がない、もちろんドクターマルスもだ。

「とりあえず助かったのか……皆は?」

「わからないロボ、テッポウオの大群に押し流されてバラバラになっちゃったロボ」

「……そうか」

 トモエは海底洞窟前の記憶を思い出す。
 突然現れた巨大オクタンに大量のテッポウオ。
 あの周囲の異様な静けさは全てあれらの性なのだろうか?
 トモエは意識を完全に戻すと立ち上がり、洞窟の奥を眺めた。
 洞窟の奥はランプの光も届かないほど長い通路の様相を呈している。

「アリサは大丈夫か?」

「大丈夫ロボ、アリサは頑丈だから」

 ……健気に笑っている。
 本当なら不安で張り裂けそうなはずなのにトモエを心配させないように彼女は自分の気持を抑えているんだ。
 若干無理したような顔で笑うアリサからトモエは薄々そう感じた。
 ドクターたちは無事だろうか、いや、きっと無事だろう。
 俺達が助かったのならどうように飲み込まれたアルセウスたちも無事のはずだし、ドクターは殺しても死なないような奴だから無事に決まっている。
 そう思うと、トモエはようやく動き気力が湧いた。
 とにかくこの場にいても意味が無い。
 まずは動くべきだろう。

「行こうアリサ、ドクター達は無事さ。まずはここがどこなのか調べよう」

「あ……うんロボ♪」

 大丈夫、という言葉を聞くと自分で自分に言い聞かせるよりは安心したのか、少しアリサの顔が和らいだ。
 トモエはアリサの腕を取ると立ち上がらせる。
 携帯ランプを持ち、洞窟の奥へと向けるとゆっくりと歩き出した。

「ダーリン、ありがとうロボ」

「別にいいよ、気にすんな」

 人の心を持ったロボット……それは一体なんなのだろうか?
 アリサは喜ぶ心もあるし、怒る心もある、不安も安心も……あるのだ。
 普通の女の子まるで大差のない不思議なロボット、アリサ。
 普段は陽気でやや暴れ気味の彼女も今ばかりはおとなしくしている。

 普段はそうして欲しいと思うトモエもいざとなると、少しそれが心配であった。
 だからこそ、彼女を元気ずかせようとあれこれ頑張ってしまうのだろう。



「……洞窟かと思っていたが……こいつはもしかすると神殿かなにかなのか?」

 アリサとともにランプの光を頼りに進む気がつけば狭く、圧迫感のあった洞窟とは打って変わり広々とした神殿のような内部へと姿を変えていった。
 見たことのない意匠、奇妙というか……人智の及ばないような訳の分からないデザインの彫刻に、見ているだけで吐き気が起きそうな不気味な壁画がトモエたちの前に現れた。

 一体誰が考えたらこんなおぞましい物が生み出せるのかと逆に感心する。
 まるでこれは……そう、邪悪な神殿って感じだろう。

「……相当年季の篭った神殿ロボね」

 特に印象は受けなかったのか、周りの様子を見ても顔色一つ変えないアリサは興味がなさそうにそう言った。
 古い……そう言えばたしかにこの神殿は相当の年季が篭っていそうだった。
 彫刻も壁画もすでに風化しているのかボロボロであったが、もともとそういう意匠を持って作られたというのが分かるくらいに狂気と熱気を持ってその場に佇み続けている。
 これは人間が作ったものなのか……そもそも何を祀っている、何を描いている?
 何一つわからない奇妙な神殿であることは変わりがない。

「見ているだけで吐き気がするな、アリサは大丈夫なのか?」

「何がロボ?」

 なんともないらしい。
 さすがというべきなのか、当然というべきなのかまだまだアリサには人間的情緒はどこか欠陥を見せている。
 とはいえ、この状況に飲まれないアリサは頼もしいと言えるだろう。
 少なくともトモエはまじまじと神殿の様子を見ているだけで、胸糞悪くなり、吐き気を催しているのだから。

「……一体どこまで奥があるんだ?」

 トモエはうんざりとしながらも今更道をもどるわけにもいかず仕方なく神殿の奥へと向かった。

 カツン、カツン――と、トモエとアリサの足音が神殿内部に響き渡る。
 いくつもの廊下と部屋を通り抜けていくと、やがてトモエたちは神殿の中心部と思われる場所へ着こうとしていた。

 ナグル、グベルベェ、アゲルラアァァ、ナグル、ルルイエ、ゲベルベェ……。

「なんだ……呪文か?」

 それは、世にも奇妙な声だった。
 とても人の発する声とは思えず、それはまるで獣の慟哭だ。
 いや、獣どこからまるで悪魔だ。

 そんな恐ろしげな声で発せられる怪しげな呪文が神殿の奥から聞こえてきたのだ。
 トモエとアリサは神殿内部の柱の裏に隠れて、中心を見るとそこには祭壇があった。
 まるでドクターの巨大ロボも入りそうなほどでかい空間に巨大な祭壇の間がある。
 祭壇の上には何やら蛸のような化物の彫刻が祀られており、その下には漆黒のローブを纏った無数の何かが、呪いのような呪文を唱えている。

 テングルゥ、ナグル、グベルベェ、ナグル、ルルイエ、グルバァァァ……。

「何語ロボか?」

「知るかよ、ていうかあいつら一体何者だ?」

 トモエたちの存在には気づいていないようで、一心不乱に蛸みたいな彫刻に祈りを捧げ続ける謎の集団。
 生臭い潮の香りその場には充満し、腐った魚が出す瘴気がまるで眼に見えるかのようだった。

 ――狂っている、そう、まるでそれは悪魔を召喚するサバトの儀式のようだった。

「グルルル……ッ!」

「ん? 唸り声?」

 突然だった、真後ろから本物の獣のような唸り声が聞こえてきたのだ。
 恐る恐る後ろを振り返るとそこには。

「グルルゥ……レーーン!!!」

「うわぁ!? レントラー!? なんでこんなところに!?」

 なんとそれは激しくトモエたちを威嚇するレントラーだった。
 思わず周囲の状況も忘れて大声を叫んでしまったトモエは慌ててその場を飛び退いた。
 次の瞬間、レントラーの強靭な四肢が宙を舞い、少し前までいた場所にレントラーの鋭い爪が襲いかかる。

 だが、この行動は更に事態を悪化させかねない危険性をはらんでいた。

 ニンゲン!? マタニンゲン!?

 ローブを着た何かは呪文を止め、一斉に振り返った。
 漆黒のローブの先は表情すら映さず、ただボンヤリと赤い瞳が暗闇の奥から光っている。

「う……やばいか、もしかして?」

「絶体絶命ロボ?」

 背中を合わせてレントラーと謎の集団に対峙するトモエとアリサ。

「レーンッ!!」

 雷を纏い飛びかかるレントラー、その牙は雷撃を放ち、噛み付かれようものなら天国に一瞬で行けそうな危険性を持っている。
 だが、トモエたちは大して恐怖はない、とりわけアリサにおいてはそんな感情は皆無だ。

「邪魔ロボ」

 ドカァ! と明らかに普通の打撃音ではない一撃をアリサはレントラーに対し、回し蹴りで放つ。
 1メートルを超えるレントラーの体はいとも簡単に宙を舞い、地面にたたきつけられたのだ。

「お前が味方だと頼もしいわ、アリサ」

 普段こんなのを敵に回さないといけないかと思うとげんなりする反面、いざ味方だと思うとこれほど頼りになる奴はいない。
 トモエは少なからず安心した。

 だが、まだ危険は終わったわけではない。

 ニンゲン、コロセ……コロセ……!
 コロセ、コロセ、コロセ、コロセ、コロセ!

 まるで地獄から響く亡者共怨念のごとく言葉発せられ、謎の集団はトモエたちに迫る。
 コロセコロセと謎の集団は言葉を発し、場の殺気は一秒ごとに増していく。
 その殺気が最高潮に達したとき、彼ら突然飛び掛ってきた。

「う、うそだろっ!?」

 それは人間からすれば規格外。
 4メートルはあろうかという位に大ジャンプをすると、奇妙な粘着性のある液体を撒き散らせてトモエに襲いかかる。
 やばいと思い、アルの力を使おうとした瞬間。

 突然、飛び交ったソレに対して横から無数の『スピードスター』が襲いかかった。
 ローブを、体を切り刻まれて空中を錐揉みしながら落ちる謎のソレ、そしてどこからともなく『スピードスター』を放ったそれを見たときトモエは叫んだ。

「アル! 無事だったのか!」

「当たり前だ契約者よ!」

 白い体毛に覆われた巨体が宙を舞う。
 突然両者の仲裁に入るかのようにアルセウスがトモエの前に降り立ったのだ。

「ポリ~」

「むてきんぐも無事だったロボね♪」

 どうやらポリゴン2はアルセウスと一緒にいたらしく、アルセウスの背中にチョコンと座り無事アリサと再会を果たす。

 ポケモン? ミタコトノナイポケモン?

 突然の奇襲にローブを着たソレ達の動きは止まった。
 失神したと思われる『スピードスター』を受けたソレを見たときトモエは驚愕する。

「人間じゃねぇな……亜人種とでもいえばいいのか?」

 そいつは魚の顔をしていたのだ。
 体を見ても魚鱗を持ち、人と同じような体格をしているのに明らかに人のそれとは違う。
 言ってみりゃ、化物だ。

「……ディープ・ワンズだよ、だよ。彼らは」

 上空から、この化物共とは異なる人間の言葉を発する声が聞こえた。
 トモエ達は上を見るとそこには浮遊するジバコイルの背中に乗る初老の男の姿があった。
 奇妙な喋り方、特徴的な燕尾服にマント、それはトモエたちは知らないが、まさしくダークプリズンの幹部デーラルだ。

「貴様、何者だ!?」

「あ、いや、いやいや。お初目お目にかかる、吾輩はデーラル、まぁなんだ? 君たちが憎くて憎くて仕方がない、ダークプリズンで幹部をやっているものだよ」

「ダークプリズンの幹部!?」

 トモエは驚いた。
 なぜダークプリズンがこのような怪しげなところにいるのか?
 いや、それより幹部?
 幹部クラスがなぜこんな危険なところに?

(指令書……? もしかしてこいつのことと何か関わりあるのか?)

 トモエは海辺での出来事を思い出す。
 その時ドクターは確かになにかの書類を見ていた。
 その書類とこの事態には何か関わりがあるのか?

「おいアリサ、あのおっさんのこと知っているのか?」

「知っているけど知らないロボ」

 曖昧な言い方だった。
 アリサがこの場で嘘を付くとは思えず、その曖昧な言い方も何か意味はあるのだろうが今は考えられない。
 ……というより、考える時間がなさげというべきか。
 その男と対峙したときトモエは動くことができなかったのだ。

 笑っているのに威圧的な目、口元の微笑みも妖しく、そして恐ろしい。

「アリサ君、こちらには邪魔をしないように伝えたはずだが、だが?」

「しかし指令書にはプレートの回収任務が書かれていたロボ、アリサは任務を優先しただけロボ」

 ダークプリズンと関わりのないトモエとアルには分からない会話が繰り広げられる。
 どうにも親しげというわけではなく、どちらかというと陰険なイメージを受ける両者。
 しかし、どうにも余裕を崩さないデーラルという男はニヤリと笑うと、「納得納得」と言って手を叩いた。
 どこまで人をおちょくる気だ、そうとさえ感じさせるデーラルは目を細めるとまるであざ笑うかのように蛸の化物の彫刻に視線を向けた。

「いやぁ、悪かった悪かった。プレートはあそこにあるものなぁ」

「なに……ッ!?」

 よく見るとそこには確かに彫刻の頭にプレートが置いてある。
 だが、なにか様子がおかしいんだ。
 プレートが放つぼんやりとした輝きがない。
 偽物には見えないが、まるで何かが違う。

「本物のしずくプレート!? だが、力が弱い?」

 そう、そのプレートは確かに本物のようだが、今まで見てきたプレートと比べるとあまりに放っている力が弱いのだ。
 今までアルセウスが不思議に思っていた要因、それは未だわからないがそこに確かにプレートはある。

「おいデーラルとやら! テメェこんな化物どもと結託して何をやろうってんだ!?」

 トモエは血気盛んに叫んだ。
 マスタープリズンほどの驚異は感じ無いものの、それでもドクターマルスとは明らかに違う圧迫感。
 それを押し殺すようにトモエはデーラルを睨みつけた。

「別に結託などしていないよ、ただ吾輩は、これから起きる現実をみたいだけだよ、だよ?」

「現実だと……ッ!?」

 アルが訝しげに言葉を返すと、突然その場に地震が起きる。
 ここは海底のはず、今地震が起きたらやばいんじゃないのか?
 そう、恐怖したとき突然祭壇が崩れ始めた。

「さぁ、君たちも見たまえ! 彼らがディープ・ワンズの信奉する神の復活だ!」

「神だと!?」

 祭壇がどんどん崩れていく、地震とともに。
 そしてディープ・ワンズは歓喜する。
 呪いのような祝詞(のりと)を発し、神の降臨を待つ。
 崩れる祭壇のひび割れの中から赤くて太い足が出てくる。
 でかい……とんでもなくでかいというのがわかった。

 オオ、ダゴンサマ、ダゴンサマダ!

「ダゴン……?」

 ディープ・ワンズはそれをダゴンだという。

「ダゴン、古代パレスチナにおいてペリシテ人が信奉する神、語源はヘブライ語の魚と穀物に由来するとされている。現在においては邪神の一体として扱われる」

 冷静に解説するのはアリサだった。
 ダゴンといえば、旧約聖書やあの死霊密本にも登場する海の化物だ。
 もちろん、空想上の存在、だが……そんなものが本当に存在するのか?

 やがて、祭壇は完全に崩れ落ちると、瓦礫を払いのけてその場にその神は姿を表す。
 広場いっぱいの巨体、赤い体の軟体生物。
 それはまさしく。

「ダゴンて……巨大オクタン!? て、外にもいなかったか!?」

「あれをダゴンだとすると、おそらく外でママに襲いかかったのはハイドラだロボ」

 ハイドラ、ダゴンの妻として語られるメスのダゴンだ。
 確かにそう考えるならばつじつまがあう、だがオクタンが神っていうのはナンセンスだ。

 オオ、ダゴンサマ! イマコソワレラノフクシュウヲ!
 ニンゲンドモカラワレラノウミヲ!

 その場に顕現した彼らの神の姿に彼らは歓喜した。
 だがそれは本当に神なのか?
 いくら大きくてもそれはオクタン、ポケモンなのだ。
 たしかにオクタンとしては規格外すぎるサイズではあるが、やはりポケモンに違いはない。

「とりあえず、ここはプレート回収が先だ! その後に巨大オクタンとあのおっさんはどうにかするぞ、アル!」

「わかっている!」

 トモエは瞬時に力を引き出し、空高くと飛び上がった。
 目指すはオクタンの頭上にチョコンと乗ったプレート。
 トモエの手が伸びる、プレートへと。

 だが、暫く静止していたオクタンは突然泣き叫ぶように吠えた。

「~~~~~~~~~~~ッ!!!!!」

 それは言葉にはできない鳴き声。
 図太いようにも感じ、また甲高いようにも感じるその声に神殿が震えた。
 突如、崩落は始まった。

「なっ!? しまった!?」

 空も飛べないのに飛び出したトモエは空中ではどうすることもできない。
 オクタンが暴れ、崩落が始まるとまっさきにトモエは巨大な岩盤の崩落にたたきつけられた。

「がはっ――!?」

「いかん! トモエェ!」

「危ないロボ! 海の水が流れ込んでいるロボ!」

 崩落は同時に海底に作られた神殿に大量の海水を落としていく。
 圧倒的な圧力でそこにいるものは抑え付けられる。
 その間オクタンはなにかをもとめるように大暴れした。
 その暴れ方は半端ではなく、ある者はその強靭な足に踏み潰され、地面は掘り起こされ、崩落は加速する。
 絶体絶命……である。

「ふっはっはっは、これがディープ・ワンズの神か、オクタンとは無粋だがまぁいい……神の正体も知れた、それでは私はこれで失礼するとしよう、よう!」

 神の正体を見て大きく笑ったデーラルは地面に倒れているレントラー、そして自身の乗っているジバコイルをボールに戻すと懐から何かを取り出した。
 それはロープであり、それを体に巻きつけると突然デーラルの姿はその場から消え去る。

「ちっ! あなぬけのヒモとは準備のいい奴め!」

 アルはデーラルが逃げ去るのに舌打ちをするが、この絶体絶命の事態をどうするべきか考える。

「アリサ、むてきんぐよ、協力してくれるか?」

「当然ロボ、ダーリン助けるロボよ」

「ポリ~」

 二人は頷く。
 ここは協力しなければ共倒れ確実だ。

「アリサはトモエを! むてきんぐは己と往くぞ!」

「ポリ!」

 アルセウスは『じゅうりょく』を使い、自身の体重を減らして巨大オクタンに飛びかかる。
 だがオクタンもそれに反応して迎撃に入る。

 オクタンの太い足がアルセウスを襲う。
 だがアルセウスは空気を蹴って、無理やり軌道修正をした。
 そして直後、おなじみのむてきんぐの『でんじほう』がオクタンを襲う。

「オオオオオオオオオオオ!」

 泣き叫ぶようなオクタンの鳴き声、でか過ぎて『でんじほう』一発ではまるで聞いているようには見えない。

「ええい! 少しはおとなしくせんか!!」

 アルセウスは『しんそく』を使い、オクタンに体からぶつかるが、オクタンの柔軟な体が相手では大したダメージが与えられない。
 直後またオクタンの足が横から襲いかかってきた。

「くうっ!?」

 今度は避けきれずアルセウスは吹き飛び、神殿の壁面に背中から打ち付けられた。
 激しい衝撃がアルセウスの体に走る。
 死んでしまうかと思えるほどの激しいダメージに意識は朦朧としそうだったが、彼女は歯を食いしばり立ち上がる。
 すでに海水はかなり侵入し、アルセウスの腰ほどまでに迫っていた。
 急がなければ全員水没してしまう。

「が……は……だ、大丈夫かアル?」

 程なくしてトモエもアリサの手によって救出された。
 頭から血を流し、戦うだけの体力も残っていないであろうトモエだが、必死に立ち上がりアルセウスの心配をしていた。
 その様子を見たアルは少しだけ元気が戻った気がした。
 満身創痍のトモエに心配されるようではまだまだだと。

「オオオオオオオッ!!」

 オクタンの口に集められるエネルギー、それは通常のオクタンが放つそれと比べて何倍の威力差があるのだろうか?
 10倍、いや100倍、それ以上かも知れない。
 そんな危険度が高すぎるエネルギーはまるで虫けらどもをひねり殺すかのように放たれた。
 オクタンの『はかいこうせん』だ。

「うわぁぁぁぁぁっ!?」

 神殿が爆発に飲まれる。
 アルセウスは必死に堪えた。
 アリサとポリゴン2もなんとか直撃は免れ無事のようだが、最後の一撃で神殿が完全に崩壊し、一同は全員が海の中へと沈んだ。

 アルはトモエを探した。
 見当たらない、上、下、周囲……どこを探しても見当たらない。

(トモエ……どこだ……ッ!?)

 突然、赤いモノがアルセウスの顔面を横切った。
 本来ならばすぐに見えなくなるはずのトモエの血が、水面へと登る。
 確信した、トモエは下にいる。
 だが、このままでは命が危ない。

 そう思いアルセウスは直ぐ様トモエを助けようとした。
 だが、オクタンはアルセウスに襲いかかる。
 大きな口を開くと、なんでもない……オクタンはアルセウスを丸呑みにしたのだ。

 これでジ・エンドなのか……そう思われた瞬間だった。

「己の……己の邪魔をするなぁぁぁぁっ!!」

 普段戦いにおいて激情を見せないアルセウスとは思えない怒りの叫びだっただろう。
 ここが海中だということも忘れて、オクタンの体内だということも忘れてアルセウスが叫んだ時、突然オクタンの穴という穴から光が溢れる。
 直後オクタンの内部で大爆発が起こると、オクタンは気絶したように口をぱっくり開いて海底へと沈んでいく。

 『さばきのつぶて』だ、滅多に使わない『さばきのつぶて』をアルセウスはオクタンの内部で使い、体内で莫大なエネルギーをうけきれずに巨大オクタンはノックアウト。

 アルセウスはオクタンの口から飛び出ると直ぐ様トモエを追った。



(――意識が保てない、やばいな……こいつは……死んだかな?)

 トモエはぼーとしながら海底へと沈んでいった。
 痛みはなく、代わりに意識も薄い。
 頭から海中を登る血を見ていると、自分の命があと僅かなのがわかった。

 ……ふと、一条の光が海底へと走った。
 最初は太陽の光かと思ったが、それは違った。
 白い体毛の巨体、アルセウスだ。

 アルセウスがトモエへと急速に近づく。
 まるで泣いているような顔をしてアルセウスはトモエの体を抱きかかえた。
 何も感じることができないはずのトモエが、たったひとつだけ感じたものがあった。

(温かい……アルの温もり……?)

 ただ、暖かかった。
 アルは目の前に漂ってきたしずくプレートを体内に取り込むと、水タイプへと変化する。
 体は青色になり、水中での活動に適応する。

「トモエ、死ぬな……っ!」

 アルセウスは必死にトモエを抱えて海面を急いだ。

 バシャァッ! と水しぶきを上げ、久しぶりの空気を吸うとアルセウスはすぐにトモエを見る。
 トモエは大量の血を失いぐったりとしていた。

「トモエ……トモエ? しっかり、おい……しっかりしろよ?」

 アルの必死に呼びかけ、だがトモエは反応しない。
 いや、できないというのが正しいのかも知れない。
 アルの脳裏に最悪の事態が浮かぶ。

「いや、いやだ……トモエ、死ぬな、死なないでくれ、トモエ!!」

「う、うるせぇ……生きてるよバァカ」

 僅かに動いた、アルの悲痛の叫びにトモエが反応をした。
 アルはその声を聞くと、大粒の涙を流して泣いた。
 トモエは生きている、まだ己を置いてけぼりにはしていないのだと。

「アル……プレートは?」

「ああ、回収したさ」

 アルは首をブルブル振って涙を止めると、トモエに微笑みかけた。
 苦しい戦いだった、いつもより格段に。
 だが、プレートも回収しなんとかお互い無事だった。
 終わりよければ結果よし……ということでいいだろう。





「ふーむ、意外や意外。まさかあのオクタンを倒すとは、いや、いやいやさすがはさすが、アルセウスということろかな?」
「ふむ、しかしそれより気になるのはハイドラを倒したアレはなんだったのだ? カイオーガなどこの海に、このミレリア地方に生息するはずがない、だとするとどこからかトレーナーが持ち込んだというのか? ふーむ」

 ……しかし、忘れてはならない。
 彼らの前に立っているのは強大な悪、ダークプリズンなのだから。
 彼らの戦いはまだ、終りを見せないだろう。

 オーデンはジバコイルに乗りながら考えた。
 神殿での戦いとは別にドクターが戦ったハイドラとされる個体のオクタンを倒した存在。
 それはドクターではありえない、むしろドクターマルスを助けた謎の影。
 そこにいたオクタンを遥かに凌駕した圧倒的海の存在カイオーガ。
 ことによるとダークプリズンにおいてトモエたち以上に驚異になりえるかも知れない存在にオーデンも戸惑は隠せなかった。

「ふむ、まぁいい。この件は我らが現人神に伝えて終了としよう」

 オーデンはそう言うとダークプリズンの本拠地アークスシティへと帰っていく。

 夕日挿し込むバーバラシティ、そこでは人知れず激闘があった。
 だが、この激闘もまだ戦いの序曲に過ぎない。

テーマ : ポケモン
ジャンル : ゲーム

ドクターマルスと365日 第5話 ドクター一行、海へ行くの巻き

「おーい、海行くぞ海!」

 それはあまりに突然過ぎた。
 薄暗く陰湿な雰囲気の漂う地下の研究室には似つかわしくない陽気な声。
 それは最近入り浸っているいつもの男の声だった。

「海ってなにを突然?」

「海でありますですか?」

 その突然の作者の言葉にドクターとアリサはぽかんとしている。
 この内陸部のアークスシティには当然海など無い、となるとこの地方で海があるとしたら西海岸側になるだろう。

「海……天体の表面、及び表面の付近を覆う液体の層。濃度3%前後の塩を含むほか、マグネシウム、ヨウ素、アルミニウムなど多分な元素物質が溶け込み、地球の表面70%覆う……」

 アリサにとって海とは一体どんな壮大な想像をしているのだろうか?
 生命溢れる豊かな海? それとも光さえ届かない深海?
 いずれにせよアリサが海に心踊らせるのは確かであろう。

「アリサは海、行きたいよな?」

「はいでありますです♪ アリサは海へ行きたいでありますです!」

 アリサにとって海は未開の地、聞きはすれど見たことのない物にはなんにでも興味を示す彼女は直ぐ様、ニッコリうんと頷いた。

「ドクターはどうだ?」

「海であるか……もう何年も行ってない気がするあーるな……まぁ、たまには海へバカンスに行くのも一興あーるな」

 頬と突き、悩む仕草をするドクターマルスであったが、出てきた答えは意外に良好な物であった。
 ドクターマルスこと、丸栖優香にとって海に行ったのはもう昔の話。
 かつて大学に通っていた際に友人数名と行ったきりであったし、海というものが好きという程でもないが、たまには休みたいという本音もあった。

「おーし、それじゃ用意が済んだらさっさと行くぞ!」

「でも、どこに行くんだロボ?」

 作者が意気揚々と準備にかかると、アリサはふとした疑問を突きつけた。
 先程も言ったとおり、アークスシティに海など無い。海とはアークスシティから遥か西へと言った所にある巨大な西海岸だけだ。
 最も、ミレリア地方それ単体で日本の本州よりも大きな大陸は言葉だけ聞けば近そうでも実際には遥か遠くにある。

「バーバラシティだな、ドクターは知ってるだろ?」

「無論である」

 バーバラシティはアークスシティから北西へ200マイル進んだところにあるミレリア最大のリゾート地だ。
 かつては戦艦が立ち入る軍港であったが、50年前に戦争が終り、今や軍需が無いということもあり海を整備して、リゾート地としたのが始まりだ。

「しかし遠いあるなぁ……移動手段は確保しているのであるか?」

 移動手段がなければアークスからバーバラシティなど当然行けない。
 ドクターとしてはバイクの免許こそもっているが、車は運転できないので当然運べない。
 第一、ガソリン代を考えるとなんとも必要経費の多い手段であるためドクターとしてはオススメできない。
 とはいえ、歩いていけば何ヶ月かかるかもわからないだけにここは作者任せであった。

「ふ、この作者に抜かりはない。カモンユウキ!」

「……かったる」

 突然空間に裂け目が生じると、そこから登場するのは最近出番のなかったユウキだった。
 彼としては本当にかったるいのだろう、言葉だけでは飽きたらず表情も非常にかったるそうであった。
 
「久しぶりであーるな、ユウキよ」

「ああお久――」

「初めましてロボ♪」

「!? え……あ……えと、は、初めまして」

 普段表情も変えず、かったるいかったるいとばかりいう少年にも少年らしさはあるのだろうか?
 アリサににっこりと微笑掛けられたユウキは物珍しくもうろたえた様子であり、ぎこちない喋り方でアリサにあいさつをした。

 あまりに珍しい光景、作者には何度か見たこともあるがまだ付き合いの浅いドクターマルスにはあまりに意外な光景であった。

「ほお、ユウキにも少年らしさが残っていたあるか」

「相変わらずお前は美少女耐性が少ないな」

 そうなのである。ユウキは普段かったるいと言い何事にも興味を示さない無感動人間であるが、可愛い女の子を前にするとドキッとして調子が崩れることがあるのだ。
 特に初回のアリサの印象は可愛いだけでなく落としやかそうなイメージを受け、ユウキとしてはどストライクの女の子だけに、ドキドキ感はひとしおである。

「か、かったる……馬鹿言うなよ、初めて見る娘がいたから驚いただけだ」

「それにしては驚きすぎであーるな……ふっはっは」

 ドクターマルスはその様子を見て、何が面白いのか大笑いをしていた。
 よほどドクターもユウキに対するこれまでの先入観からもっと大人びた印象を受けていたのだろう。
 だが、実際にはそこらにいる15歳の少年たちとそんな大差のない感受性を持っているユウキは子供らしさだってもちろんある。
 普段はそれを隠してはいるが、こうやって時たま出してしまうところが、大人になりきれない少年だということだろう。

「バーバラシティにはユウキに送ってもらう、お前ら、準備だ準備!」

 パンッ! と手をたたき、作者はドクターたちに準備を急がせると、ドクターとアリサは困ったようにその場で考え込んだ。
 両者何を考えているかは別々だが、その疑問はある種問題だった。

「うーむ、水着なんてとうの昔に捨てちまったであーるからな」

「そもそもアリサは水着なんて持ってないロボよ?」

 海へ行っても水着なし……それは由々しき問題だった。
 アリサはともかくとしてもドクターなんかは白衣(夏物)を着ているだけに海には全く似つかわしくはない。
 これは困った問題だと作者もうーんと頭を捻らせていると、当たり前のようにユウキがツッコミを入れた。

「いや、海水浴場だったら当たり前に水着屋位あるだろう? 向こうで買えば?」

 その発言に皆ポンッ! と感心したように手を叩いた。
 いや、普通に気づこうよとユウキは心の中で思ったが、人というのはどういうものかひとつの問題を目の前に出されるとそれに集中して周りが見えなくなるらしい。

「それじゃ、手ぶらでもいいわけか」

「そうであるな、向こうで買うある」

「アリサ、海初めてロボ♪」

 そのいう方針で決まると一行はユウキが作った次元トンネルの先へと進み、一行バーバラ入りをするのだった。





「……暑ぅ」

 最初に夏定番の言葉を言ったのはユウキだった。
 それもその筈彼の格好はいわゆるルビサファ男主人公の仕様。
 露出度の極めて少ない格好であり、暑苦しいことこの上なかった。

「……そんな格好していれば当たり前である、さっさと着替えろである」

「無駄だ、ユウキはポケサファの主人公故にある呪いがかかっている」

「呪いロボか?」

 それはまた物騒なと思うドクターだったが、作者の次の言葉を聞いたときにはなんともどうでもいいことだと思うことだろう。

「ユウキはポケサファ主人公だから、ルビサファ時代の主人公の格好以外できない呪いがかかっているのだ!」

「はぁ……エメラルドの俺が羨ましい」

 そうなのである、エメラルドとの差別のためなのか、ユウキは暑苦しいルビサファ男主人公の格好以外できないのだ!
 それゆえに軽装の格好にはひどく憧れる物がある。
 まぁ、そこはかとなく主人公の宿命であろう。

「まぁ、気にするなユウキ、これからパールのヒカリも同様に辛い目にあう」

「キッサキにあのミニスカでいくのか……ご愁傷さまだな」

 ユウキは大量の汗を流しながら首をふるしか出来なかった。
 とりあえず、道端に立っているのは暑すぎるので一行は水着の売っている量販店に入るのだった。

「あ~、クーラーが涼しい」

「さて、水着を見てくるあーるか」

 店に入るとまず感じたのは異様な涼しさだった。
 外の暑さなどまるで嘘のよう、そう感じるほどに中と外の温度差は激しくユウキも思わずゆるい顔をしてしまう。
 ドクターはアリサを連れて行くと直ぐ様女性用水着のコーナーへと向かった。

「……作者は買いにいかないのか?」

「男の水着選びに喜ぶ読者がどこにいる?」

 ……かったる、と本日何度目かの愚痴をこぼしたユウキは確かにと考えた。
 誰も男の着替えシーンなど興味もなければみたくもないだろう。
 そういう意味では女性シーンを写せと批判もくいそうだが、そこはしばらく待っていて欲しい。


 ……そして30分後。

「お待たせロボ~♪」

 30分後、休憩室で休んでいた作者たちの前にドクターたちが帰ってくる。
 初めていつもの召し物以外を着たことに上機嫌のアリサに対して、ドクターマルスは気恥ずかしいのかもじもじしながらアリサの後ろをぎこちなく歩く。
 どうやらふたりとも水着に着替えてやってきたようで、その様子に思わず作者も「おおっ」と唸った。
 ここら辺はFantasyのトモエで味わうことのできない役得だろう。
 最も向こうでは同一時間軸で羨ましい光景に会っているわけだが。

「パパ、似合うロボか?」

 アリサは水着をよほど見せびらかしたいのかその場で踊ろうように一回転、初めて着る別の召し物に気分は上々だ。

「……スクール水着?」

「ワンピースだな、日本ではスク水というの方が浸透しているが、こっちじゃこれも水着の一種だな」
「ちなみにここで作者のくだらない無駄知識、現在スクール水着と言う名前で日本に浸透している紺色のあの水着は1907年オーストラリアのアネット・ケラーマンにより考案された。彼女は当時の常識を打ち破りトップとボトムを一体化させ、余計な装飾を徹底的に省いた現在のワンピース型水着を考案。彼女はこれにより英仏海峡の横断に成功した。なお、肩周りや太ももが完全に露出したこのデザインは当時アメリカのボストンビーチで着用した際公然わいせつ罪として逮捕されるという事件もあった。これは当時女性のあり方には確かに非反するものであり、また男尊女卑の真っ只中であったということも関与する。しかし、この一見によりアメリカでの女性の立場上昇に対する貢献にも成り得た、現在では日本などでは学校などで正式採用される一般的な水着である、世界的にみればこれもファッションの一種であるということを熟知していただきたい」

 いじょ、と付け加えて説明を終える作者。
 正直今回はスマンと思っている、見づらいと思うが今回は我慢してくれ。
 作者の無駄知識シリーズはこれからも続きますので、また次回も生暖かい目で見てください。

「相変わらずオメーは無駄知識の塊だな」

「アメリカのSF作家アイザック・アシモフも言っている。人は無用な知識が増えることで快感を覚えることの出来る唯一の生き物だとな」

 呆れながらようやく前に出てきたドクターの格好は女性としては少々可愛らしすぎるというか、露出は少ないがデザインは派手な花柄のパレオだった。

「み、見るなである……はずかしいではないか」

「……無難な選択だな」

 ドクターらしいといえばそれまでだろうか。
 ドクターはやっぱり見られるのを感じると恥ずかしそうにもじもじとした。
 ドクターもやはり女性としての意識があるのか男性に見られると気になって仕方がない。
 正直水着を着ることも抵抗があり、本人は店の店員にもっと派手なビキニを推奨されたが作者に見られることを想像したさい、真っ赤になりパレオを選択したという。

「しかし、花柄のパレオはちょっと子供っぽくないか?」

 しかもそれよく見ると花は花でもチェリムの印刷されたパレオで余計に子供っぽかった。
 自覚しているのかドクターも恥ずかしそうであったが、仕方がないという顔でそっぽを向いてしまう。

「まぁいいや、それじゃ砂浜に行きましょうか」

 そういうわけなので、一行はいざバーバラシティの海へと直行する。



「海……懐かしいあるなぁ」

「そう言えばドクターマルスはどこの出身なんだ?」

「ん? フォルシティの出身であるが?」

「フォルシティってどこだ?」

 海に懐かしさを覚えたドクターはボソッと呟いたとき、気になったユウキがドクターマルスの出身を聞いた。
 すると出てきた言葉はフォルシティという作者も聞いたことのない地域が出てきたのだ。

「作者が忘れるなよ、フィオレ地方の一都市だ」

 思わず突っ込んだのはユウキだった。
 「ああ、忘れていた」とポンと叩く作者は実にどうでも良さそう。
 まぁ、実際にドクターマルスの出身地なんてこの作品には関係ないし、どうでもいいのは確かなのだが。

「フィオレってレンジャーユニオンがあるところだよな?」

「うむ、ポケモンレンジャーの総本山である」

 フィオレ地方は日本の一部であり、レンジャーユニオンが存在する地域だ。
 フィオレにはポケモンをモンスターボールに入れる風習がないためか、ポケモンバトルを行う風習もなく、ポケモンセンターもない。
 そういった少し特殊な環境で育ったためか、ドクターはこれまでポケモンに対して興味を示さなかったのだろう。

「お、そういえばむてきんぐは?」

 ふと、気づいたのは作者だった。
 そういえばむてきんぐことポリゴン2がいない。
 それを聞いたドクターは思い出したようにモンスターボールを取り出した。

「忘れていたである、でてこいむてきんぐ!」

「ポリ?」

 ポンッ! とボールから出てくるポリゴン2は実に久しぶりに外の空気を吸った。
 最近アリサの登場によりめっきり出番が少なくなっているむてきんぐは今日もボールの中で一休み……かと思っていたらまさかの登場に一体どうしたのかと周囲を伺った。

 だが、状況はいつものようにバトルの様子はなく、異様な程多い人混みで不思議に思った。

「おーし、むてきんぐ。しっかりと楽しもうぜ!」

「ポリ?」

 作者はむてきんぐを抱き抱えると海へと走った。

「ああっ! こらポケモンさらいーっ!」

「なんのかんのでパパもむてきんぐが好きロボね」




 ……時間というのはあまりに過ぎるのが早く、そして残酷であろう。
 遊び初めて一時間、ナンパされたりナンパされたり、ナンパされたりのドクターとアリサ。
 かったるいとつぶやいてばっかりの汗だく少年ユウキ。
 そして海辺で涼しみまくる作者とむてきんぐ。
 それはそれは幸せな時間だろう、だが幸せな時間というものにも終わりはやってくる。

「おーし! いくぞ優香!」

「だから優香言うな!」

「トース! ロボ!」

 砂浜で打ち上げられる水玉模様のビーチボール。
 サッとジャンプする作者、待ち構えるのは緊張した面持ちのドクターとむてきんぐ。

「必殺! ただのアタック!」

 アリサの打ち上げたビーチボールを見事に相手のネットの先に打ち込む作者。
 反応が間に合わず惜しくもボールは砂浜に突き刺さった。

「14-10! マッチポイント!」

 そしてそれを見守るのは審判しかやることのないユウキだった。
 そう、彼らがやっているのはビーチバレー、中々白熱したバトルを繰り広げていた。

「ふっふっふ、むてきんぐは中々厄介だがドクターは所詮頭脳派、敵ではないわ」

「でも、パパも十分どんくさいロボ」

「ふはははは! 優香に比べればマシよぉ!」

「だから優香言うな!!」

 すでに勝ち気の作者は平然とドクターの挑発を行う。
 イライラするドクターだが、これでも彼女もしっかりと楽しんでいる方だ。
 なんだかんだで、ドクターも変わってきたのだろう。

 ダークプリズンという組織の中では友人などおらず、彼女はいつも位地下の研究室に入り浸っていた。
 時折、完成させた試作ロボットを使い、街で破壊工作をする日々。
 このように楽しむ時間などあるはずもなかった。

 だが、トモエに敗れ、そして作者と出会ってから彼女の運命は一変した。
 今は毎日が充実している、それは確かだった。

「行くロボ!」

 アリサの美しい流線美は宙を舞い海老反ると太陽の光が反射して光のラインが浮き上がる。
 洗礼された動きから繰り出されるアリサの一撃は強力で、サーブでさえ取るのは難しい。
 必死で喰らいつくドクター、だがボールはドクターの腕に弾かれビーチコートの外へと飛び去る。

「あっ! やっちまったか!」

 ボールはそのまま海辺へと向かい、ある人物の頭にぶつかってしまった。

「あ、すまないであーる! ボール……を……?」

 慌ててボールの回収に行ったとき、ドクターは突然固まってしまう。
 それもその筈であろう、その人物は本来ならこの場にいるはずのない男なのだから。

「ああ大丈夫、今かえ……す……?」

 ボールを広い、笑顔で振り替えった男も固まった。
 男も思ったことだろう、何故ドクターがこの場にいるのかと。
 そう、その男はなんと。

「また汝かドクターマルス!」

 その場で一番目立つのは320センチの巨体を誇るアルセウスだろう。
 ドクターマルスを見つけると激しく威嚇するようにドクターを睨みつけた。


「なんでたまにはバカンスでアークスシティを離れてまでお前らと出会わなければならないのであーる!? トモエとアルセウス!」

 そう、その場にいたのはトモエたちであった。
 よく見ると後ろにはビキニを着た公式巨乳天然美女のシスターノーマとあの教会の子供たちまでいる始末。

「おい、これはどういうことだ作者?」

「予想GAYです、この海の作者の目を以てしても見抜けなんだ」

 これには本気で作者も予想外だった。
 本来向こうには作者とユウキが登場しない代わりに、こちらではトモエとアルセウスは登場しないように神が調整をおこなっているはずだった。
 神といえば勿論、作者のことだ。

 だが、作者にも手違いはあるのだろう、偶然にも同じ日付に海へと着てしまい、しかもバッタリとあってしまう始末。
 あ~あ、やべ……これどうしようと頭を抱えたのは作者だった。
 なんとしてもこの場は穏便かつ、自分たちが目立たないように切り抜けなければならない。

「まぁいいドクターマルス! ここで因縁に終止符を打ってやるよ!」

「ふん! その言葉そっくりお返しするであーる! アーリサ! やぁっておしまい!」

 直ぐ様戦闘態勢を整える両者、ドクターに呼ばれるとアリサは直ぐ様飛び出した。
 それはまるで弾丸のような速さでトモエの元に向かう。

「珍しく彼女、返事しなかったな」

「あん?」

 ユウキが不思議に思った、ドクターに返事することなく敵に向かう彼女。
 普段の彼女なら何かしら返事をしてから向かうはずだ、だが今回は気のせいかドクターが叫ぶより先に動き出したような……そう思ったとき、その行動の意味はすぐに判明した。

「ダーリン会いたかったロボーッ!」

 なんと、アリサはいきなりタックルするようにトモエに抱きついたのだ。
 勢い余りすぎて砂浜に倒れこむ男女、アリサは実に嬉しそうにトモエの胸に抱きついていた。

 その様子に信じられないという顔でいるのはドクターとアルセウスだ。
 とりわけドクターはまさに神に見放されたとでも言うかの如く悲壮な顔をしている。

「だ、だ、だ、ダーリーーーーン!? あ、アリサ!! 君はこの私を置いて恋の列車に乗って旅立つというのか! ああ、私は悲しい! でも、涙はいつか枯れ果ててしまう! そうあなたは私を置いて夢を追うのね!?」

「壊れたのか……ドクターマルス?」

 多分壊れたんだろうな……そう呟いたのは作者だった。
 ドクターは錯乱したかのように言葉を続け、その様子をトモエたちは不気味に思いながら見た。
 しばらくすると彼女は突然どこからともなくモンスターボールを取り出す。
 その際彼女の目が怪しく光ったことを付け加えておこう。

「やらせはせん! やらせはせんぞぉ!! 貴様なんぞに我が愛しのアリサをぜーーーったいにやらん! お前のような男に娘をやれるかーーっ!」

 突然、モンスターボールを投げるとそこから出てきたのは180ミリ反動砲だった。

「おまっ!? こんなところで撃ったら!?」

「だまらっしゃい!! 娘を穢した罪、その生命で償えであーーるっ!!」

 すでに気が確かでないドクターはアリサもみえていないだろう。
 アリサがいるにも関わらず容赦なく引き金を引いたとき、巨大な弾頭は無情にもトモエに向かう。
 だが、これにはトモエも瞬時に反応した。
 眼の色が白く変色すると、彼は超人的な動きで高速で飛ぶ弾頭を回避し、横から弾頭を蹴り上げたのだ。
 蹴り上げられた弾頭は空中で爆発、周囲の観光客たちが一瞬の閃光と凄まじい爆発に何が起こったのかと注目する。

「あの馬鹿っ! ユウキは周囲の沈静化!」

「あいよ、かったるい」

 初めてかもしれない、作者が冗談抜きで真面目な顔をしたのは。
 的確に場を収めるためにユウキを動かすと作者は直ぐ様ドクターの方に向かった。

「ちぃ! おのれ怨敵古戸無トモエめ!」

 歯ぎしりをしながら直ぐ様次のモンスターボールを取り出す。
 ドクター、ドクターお前はやりすぎだ。そう言わんがごとく作者は珍しく真面目な顔だった。
 音もなくドクターの背後に迫ると作者はそのドクターの細い首を。

「圓明流は極めると同時に折る!」

「かく――ヒュルッ!?」

 作者は一瞬にして裸絞めを行い、ドクターの頚動脈を抑えこむ。
 あっという間に頭に血が上らなくなったドクターは直ぐ様気絶。
 体から力がなくなると作者はドクターの首を引っ張り何事もなかったかのように去ろうとした。

 だが、いきなりの登場でいきなりの退場ではトモエとアルセウスも不思議でならないだろう。

「あ……あの、アンタは?」

 当然、出てくるであろう言葉だった。
 作者は溜息をついた、こうなるのが分かるから出て行きたくはなかった。
 たとえ偶像とはいえ、神は人の前に顕現してはならない。
 神は空想でなければならないから。
 だからこそ、彼は、作者は一定の仕事をこなすのみである。

「その質問に回答する義務はない、いくぞアリサ!」

「あ、パパ、はーいロボ! それじゃあまたあとでロボね、ダーリン!」

 作者がアリサを呼ぶと、アリサは嬉しそうに作者の腕に抱きついた。
 面倒だと思いながらも、事態の収集を行ないドクターを引きずる作者は、本来あるべき神の顔をしていただろう。
 神は等しく平等であり、そして等しく関与してはならない。
 今回それを破ってしまった。
 それには作者も自責の念はある。

 そして同時にそれは、後に悲劇を生むだろう……。




「う~、首が痛い」

「自業自得だ、バーバラシティでまで面倒を起こすな」

 晩飯時ホテルに帰ったドクター一行は自分の部屋で休んでいた。
 ユウキとアリサの姿はあらず、ゆっくりとした時が今流れていた。

「しかし、作者に関与されるとは思っていなかったであーる」

「……その点に関してはノーコメントだぞ」

 作者はふてくされるように、あるいは忘れるように首を回して外の優雅景色を眺めた。 ふ、と笑いドクターは作者の隣に座る。

「別に私は何も言わないであるよ」

 ドクターとしても今朝は少々やりすぎたと反省していた。
 悪の秘密結社ダークプリズンの幹部クラスが何を言うか、というのもあるが……今の彼女は非常に穏やかだ。
 作者チラリとドクターを見た。
 海で遊び、浴衣に着替えたドクターは美しかった。
 赤い髪が艶を得て輝き、整った長い髪は重力に負けて地上に垂れる。
 穏やかな、だが大人の女性の美しさを持つ瞳はとても綺麗だった。

「……あ~、さて私は風呂にはいるとするである」

 ドクターはそう言うと風呂場へと向かった。
 作者は一人になると、ふと考える。

「神が顕現している、それは偶像の神だ。自分でも自覚している……おれは操られている神だと」

 ……それでもだ。自分は神なんだ。
 今日、改めて実感した。
 ドクターと一緒にいることが自分にとって快感になっている。
 作者にとって最初はただお助け的にドクターマルスの前に現れただけだった。
 なのに、気がつけば当たり前のようにこの場に自分はいる。
 そう、この世界は居心地が良すぎるんだ。

「神様失格だな、ひとつ世界入り浸っちまうとは」

 だが自分は偶像の神だ。
 神といえども、それは本物の神が操る架空の神。
 たしかにその人物は元となる神を忠実に再現した人格の持ち主だが、それは決して=ではないのだ。
 だからこそ、今操る神も同じ気分だろう。
 この世界にいること(描くこと)が楽しいんだ。





 ……やがて時間は夜を迎え晩餐時。

「ん? ここは?」

 ドクターたちは予算の関係上ご飯の着くプランは取っていなかったため、彼女らは近くの飯屋に向かう途中だった。
 ある大広間からどんちゃん騒ぎが聞こえてくる。
 失礼と思いつつも覗き込むと、そこは教会ご一行の部屋だった。

「うっ! 酒臭っ! 日本酒の匂い!?」

「? おめーもしかして酒がダメなタイプあーるか?」

「ああダメだね! 俺はこう見えてもビールの酒気だけで酔えるほど酒に弱い! 酒は俺の天敵なんだ! 俺に近づけるんじゃねぇぇぇっ!!?」

 作者(私)にとって酒は大の苦手である。
 思い起こせばいくらでも出てくる酒の苦い歴史、作者にとって銃と酒は決して相いれぬ天敵なのだ。

 しかし、それを聞くとドクターはピコンと何か思いつく。

「アリサ、こっそり突入ある♪」

「はいロボ、ママ♪」

「あ……おい、かったる……」

 慌てて止めようとするユウキだが、二人は意気揚々と中に侵入していった。
 本来Fantasyに登場してはいけない二人は決してここには入ることができず、溜息だけついた。

「ユウキ、むてきんぐ……食いに行くか」

「ポ~リ~」

 むてきんぐは同情するしかなかった。
 今日は一晩中作者の愚痴に付き合うことになるのだろうか?
 だが、それも仕方が無いのかも知れない。
 彼はゆっくりと夜の繁華街へと入るのだった……。




テーマ : ポケモン
ジャンル : ゲーム

ドクターマルスと365日の目次

無いと不便だと気づいた。
というわけで目次

無印版

ポケットモンスター オリジナル小説 Fantasy 特別編

Fantasy 第6.5話 なぜドクターはいきなり強くなったのか?


ドクターマルスと365日

第1話 ドクターと作者

第2話 人造人間現わる!

第3話 それはコメント返しのようなもの

第4話 日本では七夕、本編では特に関係なし

第5話 ドクター一行、海へ行くの巻き

第6話 ドクターとユウキ

第7話


登場人物紹介

ドクターマルス

本名丸栖優香、日本人。
日本人女性で、悪の秘密結社ダークプリズンに所属する天才科学者。
ダークプリズンではそこそこ立場は偉いらしいが、皆には無視されている。(だからアレほど、キャラ性は自重しろと……)
日々、作者の謀略に苦しむ苦労人。


作者
本名?KaZuKiNaまたはKaZuKi、もしくは単にKiNa。
本作品におけるカオスの権化、作者権限を用いて様々な嫌がらせ行為をドクターに行う。
作者の癖にアリサにデレられると簡単にノックアウトされるメンタルの弱いヤツ。
ちなみに、彼さえも筆者という神に操られる人形だということは忘れてはいけない。


ユウキ

本名相良ユウキ。
別名『言視触聴の遊幻人』または『FCのスキマ』。
こっちでは無名、ホームページの方では有名人のポケサファの主人公。
口癖は『かったるい』で必要がない場合は極端なまでに空気に徹する。
まさに『空気になる程度の能力』ということだろう。
神剣白夜を用いたスキマ能力はポケサファというよりFC学園よりの能力。
多分出番は少ない。


むてきんぐ

ポリゴン2。
ドクターマルスが初めてゲットしたポケモンで、作者とユウキにいびられたことで、条件付きではあるがアルセウスと戦えるレベルにまで強くなった。
レベルアップが早いってレベルじゃない、もうアバンの使徒と対峙するハドラーレベルの意識が必要。
得意技は『トライアタック』なのだが、マスターの性で『でんじほう』ばかり使わされる。
しっかりとした性格の持ち主で、ドクターに大しての懐き度はすでにカンストしている模様。
運が悪いのはお約束。


アリサ

正式名称スーパーウルトラデラックスハイパーメガトンロボ4号機。
筆者のお気に入り、アリサかわいいよアリサ。
ドクターをママと言い、作者をパパと言ったことで、両者の関係をこじらせた張本人、本人に悪気無し。
割と非常識で、何やりだすかわからず、空気が読めないシーンも多い。
でも可愛いから許す、アリサかわいいよマジで。
本人自身は無邪気なもので何事も挑戦的で、善悪の区別は薄いよう。
日々ドクターを心配させる不安な娘、可愛いから仕方ないね。
余談だが、説明が一番長い。

テーマ : ポケモン
ジャンル : ゲーム

吸血鬼はUVカットをするのか?

Fatansy最新話のコメントにこんなものがありました。

UVカットが基本なヴァンパイア・・・オカルトマニアの夢を見事にぶち壊してますねw


ええ……見事にぶち壊しますが、ぶち壊したのは私が最初ではないのですよ?
さて、ヴァンパイアといっても現在の日本には大量にそれを確認できますが(下記画像参照)。

全員わかるかな?

左からDIO様、アルカード、アルクェイド、アーカード、シオン、スレイヤー、デミトリ、ドラキュラ伯爵、レミリアと並んでますが、一応全員吸血鬼ですね。

詳細な設定は個々に調べてもらえれば幸いです。


吸血鬼といえば、太陽の光に弱い、これが基本ですよね。

テメーは俺を怒らせた、敗因はそれだけだ。

吸血鬼に縁の深いジョースター家の承太郎様もこうおっしゃっています。
まぁ、DIO様の死因はどうかんがえてもスタープラチナに殴られた体が粉々になったせいな気がするけど……。

あとは不老不死であり、人間を超える超パワーをもっていることでしょう。
後の設定はまちまちです、変身能力があったり、人を魅了したりとか色々ですね。

さて、問題のUVカット疑惑ですが



上記のニコニコ動画の0:50位からご確認ください。
どうやら、吸血鬼さんはUVカットで昼間もOKのようです。
科学の力って凄いですね

テーマ : ポケモン
ジャンル : ゲーム

コメント返しです。

今回は単なる前回貰ったコメントの返しです。
なので、おもしろ要素はもう2~3時間待ってください。
それと、Fantasy更新したのにドクターマルスと365日が更新されていないのは仕様です。
こいつは半日から~一日程度待っていただきたい。

というわけでコメント返しです。

toふぃのさん

ふぃのさん、お久しぶりです!
最近あんまり見れてなかったんで、隠れ家の方も一緒に拝見させていただきました。
私もファロさんのが見れないのが辛いです……はい、特にFantasyとファロさんのクロスオーバー企画はまさかの凍結ですからね……ほんとうに残念です。

たしかに今は本当の意味で自己満足レベルの作品が軒を連ねていますね。
まぁ、かく言う私も小説を書く理由って言ったら自己満足なんですけどね。(苦笑)
でも、できれば小説の手引きを少しくらいは見て欲しいです。
そのウチ新人向けの教授コーナーで設けるか?
ええ、古参の方々はやはりみなさん切迫していますね、受験の人やそれでなくても夏休み前の試験の人なども多いですからね。

ポケットモンスター -ORIGINAL EDITION-は自由に更新したらいいと思いますよ?
私は気長にまっております。
それでは、コメントありがとうございました。


toぞなさん

ぞなさん本当にお久しぶりです!
ていうか、コメント頂けるなんて思っていませんでしたよ!
来週広島だそうですが、隣の県ですね、電車で30分あれば行ける場所というのが怖い……。
風見鶏さんの作品って拝見したことないんですよね、くらみんぐさんもか。
北埜すいむは注目ですね!
私は月蝕のファンでした、まだくものすは見てませんね。

荒らしってやぱりまだ完全には消えてないんですか。
私も気を付けないと……それではコメントありがとうございました!



さて……お二人方が気になっていることがあるようなので、ここで解説したいと思います。

評価投票数の割り出しですか……これは確定事項ではありません。
あくまで高確率と割り出した物を予測として立てているだけです。

まず、はじめにですが、評価が出たら常に状況の進展をチェックしつづけます。
これはウチのように再評価を認めている場合は再考の上で評価が変化するかのせいもありますが大体きにしません。

ていうか……評価っていうのは☆の総和÷人数なわけで、+-の最終値を見て、+0.06増えるというのはどれだけ割ればいいでしょうか?

3.80→3.83というのが、最終前と現在の状態です。

こうなると、数が増えるということはもちろん評価が4以上ということになります。

例えば+5の評価が得られたとします。
その際の変化は3.80→3.83(0.03)ということですから、ここから非常に面倒ですが……手作業で探ります!

10人と最初に仮定、10人で3.80はでるか?
でますね、総和が38なら10で割れば3.8です。
ですが、次の11人に変化したとき0.03だけ増えるのか……ここは否です。
これを計算して地道に数を割り出していくと。

現在の評価者総数23人。
総☆数88個
88÷23=3.826(四捨五入を行われるので3.83)と、なるのです。
だから、次は3.71 3.75 3.79 3.83 3.88の5つのうちどれかがでれば、今回の実証は概ね正解と言う答えを得れます。

ですが、あくまでこれは仮定計算ですので、本当に正しいという証拠はありません!

とにかく、この計算には長い研究と、数学が好きでもないとできません。
まぁ、私は好きですけどね。


以上、評価者数割り出しのご教授でした、ご清聴してくれた方はありがとうございます。

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ポケ徹のお話

久しぶりということで(すっかり忘れていたせいで)ポケモン徹底攻略……略してポケ徹のノベルの方をザラッとかくにんしてきました。

消えた人多いなぁ……注目作家としてはキズナとリオの糠る海ルミさんが消えたのは痛い……いたすぎる。
他にも、我がブロとも羽鳥あお様こと、長観葵様が消息不明、ブログの方も更新止まっているし心配だ……。

さて、暗い話はここまでにして、ここからは今のポケ徹のお話。

ドルフィノ氏、森羅氏とおなじみ大人気作家はいつもどおりなのは嬉しいが、ドルフィノ氏はしばらく更新が停滞している、痛いの森羅氏の受験だ。
これでは私のマイフェイバリットのひとつである生あるものの生きる世界の新作が読めない。
まぁ都合によりお知らせと同時に人気投票もやるようです。私はアクア団の彼女と紅蓮殿に一票いれました。

後は、新たな大人気作家坑火石氏の登場か。

やはり旧来の大人気作家達が書いた超作に比べると見劣りは感じました。しかし間違いなく大人気入りも納得の力作を書くいい作家だと思いましね、抗火石氏は間違いなく注目株です! 気になる人は『影と一緒に』

それと、もう一つ注目株が、これは私が知っている限りの作品だと滅妖―メツヨウ―という作品の作者だったのですが、新たにラプみょんの名前で帰ってきました。
ええ、元大人気作家です、すでに読んだ人もいますか? 現在は気まぐれライブラリーという作品を書いていますよ。

ええ、実力は間違いなく大人気クラスです。
ただ、現在は短編ということもあり、小説としてはちょっとどうかなと思うことも。
いや、間違いなくすごい作家ですよ、私となんて比べるまでもないほどに!

ヒールジュペッタのニューノ氏や、ねばー・ぎぶあっぷ!の時計草氏などおなじみの方々も頑張っているようなので嬉しい思いです。

ちょっと気になるのは金色クロソジーの巨匠の一人、イノキ氏ですよね、最近ポケ徹にきてないのかな? 金色クロソジーの続きが気になります。

あと、忘れてはいけないのはぞなさんですよね、代表作は『手紙 ~貴方に幸せ届けます~』ですよね、でも最近書いてないみたい、これもざんねんだよね。

そして最後はポケ徹のある意味首領(ドン)と思われるぴかり氏か……ぴかり氏は今どうしているのかな?
ああ、そういえば桃色ピカチュウのゲームの体験版が出るらしいですよ。制作はじう氏で、RPGツクールで作ったみたいですね、ぜひプレイしてみたいですね。


さて、ここまで語ったのは私が認める、良作作家の方々です、興味があればぜひ探してみてくださいませ。
問題は次代を担う新人たちでしょうか。

かなりの作品の新作を観させていただきましたが、正直落胆しました。
ここまで、質の悪い作品ばかりが出てくる暗黒時代は今まであっただろうか!?

ええ、とにかくひどいんです。
あらすじがない、作品の内容がない。
作ったのにあらすじも何もなく、放置されている作品も。
とても小説どころか、よくわからない内容の物もあります。
正直、ポケ徹の技術力は下がるところまで下がったのだなと実感しました。
目を離しのはたった4ヶ月なのに……なんてこったい。


しかし、私KaZuKiNaは負けませんよ! 私は頑張る作家は応援する! ポケ徹作家の技術力が足りないのならば、私はみなさんに向上を呼びかけましょう! 支援しましょう!

とはいえ、新作も悪いばかりではありません、ちゃんとした良作もあります。
その中で注目したいのは玉蜜氏のライムライトの毒薬でしょうかね?

新作作家には古参も多いですが、今回はあくまで新人です。
そういう意味では玉蜜氏は抜きん出ていると思います。
でも、糠る海ルミさんとか、羽鳥あおさんとか処女作ののっけから神作のにおいプンプンだったし、そこまでの金卵には思えないんだよねぇ……。

うん……というか半年前ってぱなかったよねぇ、ポケ徹クオリティ。

あの頃は名作が大量に集い、読者の私としては非常に心踊りました。
ついでに言うと、半年前は私がFantasyを書き始めた頃ですね。
あの頃は終わる作品、始まる作品でどれも華があった。

それに比べると今はまさに暗黒街道まっしぐらという印象さえ受けてしまいます。
ただし、あの頃は荒らしに執拗さがパナかった、具体的なことはドルフィノ氏とかよく知っていると思う、見てる限りだとぴかり氏も影響うけていたよな……まぁ、あの首領はそんな程度ではビクともしなから首領(ドン)なのだが。

そういう意味では、荒らしも今は沈静化したように思えます。
半年前は(正確にはもっと前かららしいですが)、荒らしが平然と評価を荒らしまわり、大人気作品入りした次の瞬間には評価がガタ落ちとか普通でしたからね。
かくいう私も被害者です、でも計算したところ21人の人が評価をしてくらたみたいなんですよね、最もその半分は荒らしの疑いありですが。

そういった苦行の中でもびくともせずに立ちふさがったのがまさに現在のポケ徹の古参作品たちなのですよ。実際に読んでみればわかりますが、誰もが納得出来る名作たちばかりです。

さぁ……それでは今日はここまで、古い人も新しいひとも、奮って活躍を期待したいですね。

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ドクターマルスと365日 第4話 日本では七夕、本編では特に関係なし


 そこは薄暗いどこかの地下。
 怪しい薬品、怪しい機材が大量に置かれたどこかの研究室。
 まるで光を嫌うかのように存在する場所には……あまりに似つかわしくない物が今置かれている。
 そして、その物の前では楽しそうに準備をする一人の女がいた。
 そう……ドクターマルスこと丸栖優香だ。

「ふんふ~ん♪ やっぱり日本人としては文化を大切にしたいであるな♪」

「……七夕か、よく笹なんて手に入ったな」

 そう、地下の研究室にはあまりに似つかわしくないもの、それは夏の風物詩七夕だった。
 研究室にずんっ! と威圧感たっぷりに置かれた笹は、悪の秘密結社の研究室にはあまりに似つかわしくはない。
 しかし、とうの用意した本人は実に楽しそうだった。

「中国からこの日のために輸入したである」

「つーか、七夕はもう過ぎたぞ?」

 そう、今日は7月8日……七夕は7月7日なのだ。
 作者は不思議そうに笹を眺めていると、ドクターマルスは「チッチッチ」と人差し指を振り、用意した理由を話し始めた。

「お前、日本とアメリカ西海岸の時差はしっているあるか?」

「? 17時間差だな……」

「つまりそう! このミレリア地方ではまだ7月7日なのであーる!!」

 そうなのである、ミレリア地方はまだ7月7日、七夕なのだ。
 意外と文化を大切にするのかドクターマルスはこの日のために短冊も用意してある。
 一体何を願うつもりなのか?

(ちなみに、この国に七夕の文化はないけどな)

 ドクターマルスは七夕ということで、願掛けを行う。
 それは一体どんな願いか?
 気になった作者はというと、ついそれを覗いてみる……すると。

『早く作者が消えてくれますように、出来れば彦星程度に自重してくれますように』

「ちょ!? おま! これはひどくない!? つまり俺に一年に1回しか出てくるなというのか!?」

 当然これには作者も大激怒。
 とうのドクターマルスはというと、何を当たり前なことをという顔で。

「出来れば二度と顔もみたいくないであーるな」

「ていうか、言っとくけど太陽暦での7月7日って梅雨だよ!? 知っているムダ知識!? 7日に雨が降ると彦星と織姫の逢瀬が叶わない涙なんだよ! ちなみにこの日に降る雨のことを催涙雨っていうのはその性だね!」

「無駄知識すぎるあーるな、今年は幸い晴れたあるが(降った地域の人はご愁傷さま)」

「つまりお前は! ほとんど出てくるなと!? ひどすぎるわ!」

 無駄知識まで披露して、ダダをこねる作者にいい加減鬱陶しく思うドクターマルスは耳を塞ぎ、聞こえないと主張する。

「あれ? そういえばアリサはどこあるか?」

「聞けよ! 人の話!」




 ……さて、そんなコントのような会話が繰り広げられる地下の研究室とは打って変わり地上のアークスシティでは……?


「街……人々が生活を営む生活圏コロニー」

 アリサは街を散策していた。
 それは自分の見聞を広めるためか、顔にはまるで楽しそうには見えなかったが、彼女はこれはこれで楽しんでいるつもりだった。

 街には情報では知っていても、実際には見たことも聞いたこともないもので溢れている。
 それは見て、触って初めて分かる。
 何もかもが新しく、同時に驚きの連続。
 だが、アリサにはそれがどういった感情なのかが全く分からない。
 まだ産まれて日の経たないアリサには喜怒哀楽といった感情がわからないのだ。
 それはロボットだからなのか? そんなことはない……彼女は立派に自分の感情を表現することができる。
 でも……彼女にはそれが理解出来ないのだ。
 それはまるで……赤子のように。


「……服、身につける衣類、ころも」

 ふと、彼女の目の前にはショーガラスの先にあるマネキンの着た洋服が目に入ってきた。
 そこはショッピングモールであり、このようなショーウインドウは軒を連ねたように並んでいる。
 それなのに何故か止まってしまった服。
 それはお世辞に可愛い服というわけではない。
 だが、何故かアリサの目を留めてしまった、罪深い服。

(洋服……アリサにはこの服意外は着ることができない)

 ふと、アリサは自分格好を見た。
 帽子も服もみんなドクターマルスが……ママが用意してくれた物。
 それはもちろん大切だし、とても嬉しい物だった。
 でも、アリサにはこの服意外の物を着ることはできない。

 いや、着ること自体は可能だ。
 だが、普通の服では彼女の性能を十分に発揮することが出来ない。
 彼女にとって服は、自分を飾るためのものではない、自分のスペックをフルに活かすと共に、自分の身を護る重要な鎧なのだ。
 このような衣服では大胆な動きができないし、防御力も皆無に等しい。

 それなのに、アリサはそれから目を離せなかった。

「おっ! 君かわいいねぇ! これから俺らとお茶でもどう!?」

 気がつくと、彼女の周りに三人ほど若い男が集まっていた。
 それぞれ、カジュアルな格好であり、いわゆる今時の若者とでもいおうか?

「茶……チャの葉を飲料用に加工したもの。また、その飲料」

 それはまた見たこともなければ聞いたこともない代物。
 興味はある、だけどそれはアリサには受け付けない物。
 なぜなら彼女はロボットだから、ロボットは物など食べない。

 アリサは特に気にせずにショーウインドウに目を戻した。
 だが、その姿に若者たちは見逃さない。

「よぉ、無視してんじゃねぇよ嬢ちゃん!」

 ふと、肩を引っ張られる。
 その乱暴な行為にはアリサの防衛意思が働く。

「ちょっと、俺らにつきあうだけで――」

 ゴキッ!

 それはとても生々しくて恐ろしい音だった。
 まるで触るなと言わんがごとく、アリサは自分を引っ張る男の腕をまるで木の棒を折るかの如く簡単に折ってしまったのだ。
 アリサからすればちょっと力を入れただけのこと、なんと脆い人間か、その程度にしか感じない。

 だが、折られた男は悲鳴を上げてのたうち回った。
 その様子をみて、残り二人は突然鋭利な刃を光らせるナイフを取り出した。
 それはおおよそ現実的にはとても理性に欠いた行為であろう。
 だが、仕方が無いのかもしれない……彼らはすでに理性などないのだから。

「てめぇ! 仲間に何しやがる!」

「……消えろロボ」

「うるせぇガキィ!」

 男のひとり、太ったスキンヘッドがナイフを物思いに振った。
 それはアリサの首を狙い、アリサも避けられるにも関わらず避けようともせずに受けた。
 勝ったのは言うまでもない、アリサだ。
 なんと振り上げられたナイフはアリサの首をはねるどころか、逆に折れてしまったのだ。
「なっ!?」

 その見た目は華奢な女の子にしか見えないアリサだが、曲りなりにもドクターマルスの造った人造人間なのだ、この程度のナイフで傷つくはずもない。
 だが、男たちにはそんなことはわからない。
 そして、同時にその行為がこの後、阿鼻叫喚の地獄絵図を生み出すことになるのだ。

「警告はしたロボ、だがそれでもそちらに戦闘意思があると判断、戦術レベルを上昇」

「ば、化物!?」

 男たちには信じられないのだ、この少女がロボットだとわからない以上、これは化物以外何者にも見えない。
 アリサはこの後、男たちを見も無残な状態にするだろう。
 しかし、それは自業自得なのだ。
 このような理性の欠いた行為に走った男たちも悪い。

 だが、社会は彼らを護るだろう。
 それが警察の義務なのだから。

「こら止めんか! 喧嘩はやめなさい!」

 突然介入してくる警察、二人おり片方は面倒そうにしていたが、街で喧嘩があるとあれば放っておくこともできずに介入した形となった。

「た、助けてくれ! こ、この女普通じゃねぇ!」

 男たちは直ぐ様警察に助けを乞うた。
 だが、現場を確認していない警察にはむしろおかしいのは男達に見えた。

「話は署で聞くであります、ほらそこの少女も!」

「……敵増援出現、銃火器の所持を確認、戦術レベルをBからAにアップ」

「……は?」

 それはふとしたきっかけだった。
 警察の間抜けな言葉、そして放たれるアリサの冷酷な言葉。
 アリサの指が腰に装着された二丁のマグナム銃に掛けられた。

 ガァァァァァン!!

 銃声は盛大に響いたことだろう。
 突然銃の乱射を行うアリサに、男達も警察も阿鼻叫喚。
 その音を聞き、その様子を見た一般市民もさながらパニックを起こし、その場から一斉に去っていってしまう。

「た、大変だ! すぐに増援をよべぇぇ!」

 一瞬……そう、一瞬の出来事だ。
 一瞬で普段は人が多すぎる位のショッピングモールから人という人が消え失せたのだ。

(静かになったロボ)

 人がいなくなったことを確認したアリサは銃を元の場所に戻すと、また何事も無かったかのようにショーウインドウに目を向けた。

「……服?」

「……あ」

 ふと、真後ろに気配を感じた。
 それは以前にも感じた気配。
 そう、そこにいたのは……。

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久しぶりに更新

というわけなんで、久しぶりにFantasyを更新しました。
まぁ、こんなブログ見に来るやつぁ滅多にいないだろうが、とりあえず興味がある方はどうぞ♪
ドクターマルスと365日は近日以内に公開したいと思います。




Fantasy

第9話休息 ―date―




 アークスシティの早朝は、この街で唯一の静かな時間。
 多くの住民がまだこの時間は寝床で安らかに朝陽を待ち、一部の人間は太陽が登り始めたこの時間にも関わらず動き回る。

 それは例えば新聞配達、たとえば運送会社、そして例えば……。

「ふっふっふっふ……っ! タルタロス、無理せずついてこいよっ!」

 早朝、車も少なく人ごみも無いこの時間帯はこうやってジョギング、あるいはランニングをする者も多い。
 その一人がこのトモエであり、そして一緒に走るアルセウスとイーブイであった。

「どうもー、おはようございまーす!」

 何度かすれ違い様、彼らと同じくランニングをするジャージ姿のスポーツマンたちに挨拶するときのトモエは爽やかだった。
 常日頃、彼らは常に危機の中にいる。それは戦う度に脅威性を増すドクターマルスの存在に俄に危惧を始めたトモエとアルセウスだった。

 今だ彼らはダークプリズンの主要人物はドクターマルスの他は、ダークプリズンの御大将マスタープリズン以外に知りえない。
 マスタープリズンの破格の強さはその身に感じ、圧倒的な絶望感にさえ感じた。
 もし、ドクターマルスもこのまま際限なく強くなっていったら……?

 最初は笑えた強さもこうまで強くなると馬鹿にはできない。
 そして、数多くいるはずのダークプリズンの構成員、マスタープリズン程の強さは無いにしてもドクターマルスを凌ぐ強豪たちとているはずだ。
 トモエたちには負けは許されない。
 負ければそれは死を意味するだろう、ダークプリズンには人の倫理観など通用しない。死など……奴らからすればただの娯楽だ。
 だからこそ、アルセウスは許せない、トモエは憤りを感じる。

 彼らは強くなることを怠ったつもりはない、常日頃精進し、アルセウスとの特訓も欠かしたつもりはない。
 だがトモエにもそれは楽な事では無かった。

 アルセウスが要求する特訓の内容はどれも人間の観念からすれば常軌を逸した馬鹿げた特訓であり、辛いと感じることはあっても楽しいと感じることはない。

 そのせいだろうか? イーブイと一緒に訓練するということもあってか、イーブイに出来る範囲の訓練しか彼らは今していない。
 この時間、しずかにアルセウスらと一緒にランニングをするこの時間は、彼の訓練の中では楽しいと思える時間だった。

「おし、じゃあ教会についたらいつものように休憩いれるか」

 アルセウスとイーブイはコクリと頷いた。
 ミレリア地方では7月に入り、すでに春服では暑く、夏服に変え始めたトモエはそれでも暑さのためか、汗を流してアークスの街を走る。




 『がんせきプレート』の入手からすでに二週間、ドクターマルスたちにも動きはなく、また彼らにも動きがない静寂の期間。
 アルセウスもここ最近は不機嫌に空ばかりを眺めていた。

 アルセウスは焦っているのだ。
 終始見くびっていたドクターマルスの強さ……その驚くべき成長に。
 もし今のドクターマルスの強さですら、ダークプリズンにとっては末席だとしたら?
 だとすると、彼女が持つダークプリズンへの見積もりは大幅に変えなければならない。
 そして、彼女の力の源たるプレートはすでに3枚を手に入れるに至ったかが残り13枚は音沙汰が無い。

「――おい、アル……アル!」

 ふと、突然だった。
 ボーッとこれからのことを考えているとトモエが大声でアルセウスを呼んでいた。

「一体どうしたんだ、契約者よ」

「どうしたじゃないだろ、教会についたぞ?」

 そう言われて慌てて周りを見渡すと、そこはいつもの見窄らしい教会の前だった。
 白い塀は塗装が剥がれ、屋根はボロボロ、でも庭の花壇だけはいつも元気いっぱいに咲き乱れる花々に迎えられた教会。
 トモエは教会の扉を開くといつものように中に入り、慌ててアルセウスもその後を追った。
 3.2メートルある巨体には小さなドアをいつものように体を屈めて入る姿は誰から見ても窮屈そうだった。





「おーい! いくぞータルタロス!」

 トモエたちが教会で一息入れて、いつものように朝食を頂くと食後、ここ最近日課になっていることが始まる。
 コリンがテニスボール大のゴムボールを持ってタルタロスを呼ぶと、タルタロスは「ブイッ!」と鳴き声を上げて、構える。

「そーれ!」

 コリンが勢いよくボールを投げると、タルタロスは冷静にボールを見て空中キャッチ。
 まるで犬のように上手に口に咥えると尻尾を大きく振ってコリンの元に帰る。
 無事キャッチするとコリンはタルタロスの頭を毛並みがクシャクシャになるほど撫でて褒めてあげた。
 するとタルタロスも嬉しいのか目を細めて喜んだ。

「……うまいこと考えた訓練法だな」

 その様子を見て感心したようにしゃべったのは休憩中のアルだった。
 内容は単なる動物とじゃれるような遊びだ。
 だが、どうして中々これがタルタロスには良い訓練になる。

「片目しかないから高速で動くボールを正確に捉えるのは極めて難しい。だがこの方法ならば子供たちもタルタロスも楽しみながら知らず知らずに訓練になる、まさに一石二鳥だな」

「だな、コリンたちも楽しんでいるしな」

 恐らくタルタロスには訓練だと思ってこんなボール遊びはやっていないだろう。
 文字通り、これは誰の目から見ても遊びなんだ。

 だが、優秀なドッグブリーダーの育てた犬だって元はこんな遊びみたいなもので鍛えられて、誰もが一目するようになるのだし案外馬鹿にはできない。

「おーし! じゃあ今度はもっと遠くに投げるぞー! いっくぞーっ!?」

 コリンはそう言うと大きく振りかぶる。
 ここは河川敷、十分な広さがあり野球やサッカーだってできる。
 だが、トモエには少し不安があった。
 コリンが思いっきり投げると、それはトモエの予感的中。
 コリンのボールは勢い余って川の方へと投げられたのだ。
 タルタロスはというと周りがみえていないのかボールを捉えて一気に走る。
 だが、突如足は水の中へと突入するのだった。
 慌てるタルタロスにトモエは真っ先に駆けた。

「まずい! 大丈夫かタルタロス!」

「ブーイーッ!?」

 川はそんなに大した深さではないが、子供のイーブイのタルタロスには十分溺れられる深さだった。
 ましてまだタルタロスは泳ぐことができず、水に入ることを苦手としている。
 バシャバシャと水をその前足で叩くも、虚しく体は沈み込む。
 幸い寸前のところでトモエに助けられたが、これはタルタロスには忘れられない思いになっただろう。

「ごめーん! タルタロス大丈夫?」

 コリンは慌ててタルタロスの元へと駆けた。
 タルタロスはというと、トモエの胸の中で大泣きしていた。

「やれやれ、茶チビの奴その泣き癖は何時まで経っても治らんな……」

 呆れたように川に入ったボールを拾うと、トモエたちに元に歩み寄りアルはそう言った。

「そう言うなよアル、タルタロスは子供なんだから」

 トモエはというとそう言って大事にタルタロスをあやしていた。
 それを見てアルはムスッとする。
 大体が、アルはトモエがタルタロスに構っていると機嫌が悪い顔をするが今回もそのようだった。

「濡れた体を拭いて……あと、包帯を変えないとな」

 トモエはそう言うと、予め持っていたタオルでタルタロスの体を拭いた。
 事前に包帯を取り、風邪をひかないように多少過保護気味に拭き終わると包帯を懐から取り出そうとする。
 夏場になり、暑くなってきたのでタルタロスの包帯の交換も頻繁になり常備しているのだ。

「? あれ?」

 しかし、そこでトモエが頭に?を浮かべる。
 懐から包帯が出てこないのだ。

「包帯が無いぞ……おかしいな?」

「持ってき忘れたのか?」

 アルがそう聞くとトモエは首を振る。
 トモエはランニングをしていた時点では包帯は懐にあったという。
 いつから無くなったかは分からないがどこかで落としたようだった。

「……しょうがない、アパートの方にストックがあるからそれを取ってくるか。アルはコリンとタルタロスを頼むな」

「うむ、わかった」

 トモエはタルタロスをアルに預けると急いでアパートに向かうことにした。
 これも訓練かとトモエはアルセウスから頂いた力を僅かに使いながらアパートへと向かった。




 ……その帰りだった。
 行きは何事も無くアパートに付き、家の鍵も問題なく持っており、包帯の入手も容易だった。
 後は教会で待っているであろうアルたちの元へと帰るだけ……それだけだった。

「……? なんであの辺りだけ人だかりが無いんだ?」

 普段は人混みで満足に歩くこともできないほど、ごった煮のショッピングモールに人だかりがぽっかり開いた場所があった。
 一体何事かと思い、近寄るとショーウインドウをぼんやりと眺める一人の少女を見つける。

 ……訂正、少女じゃなくてロボットだ。

「あの娘……たしかアリサって言ったけか? 何やっているんだ?」

 ショーウインドウの先をボーっと眺めている一人の少女……的なロボットは何をしているのだろうか?
 気がつくとトモエはその場が妙にガラ空きなのを忘れて少女の後ろからショーウインドウの中を覗いていた。

「服?」

「……あ」

 突然トモエが後ろに立つといくらなんでもアリサはトモエに気付いた。

「あ……よ、よう」

 トモエは前回の戦いの戦慄を思い出す。
 以前、この少女にどんだけ苦労させられたことか。
 そう考えると油断の出来ない相手だった。
 何せあのドクターが作ったロボットだから……そう付け加えるべきだろう。

「古戸無朋恵、ドクターマルス攻撃目標優先ランクSSS、発見次第即攻撃……」

「ッ!?」

 少女がなにか思い出したように呟くその言葉は一言でいうと危険しかなかった。
 思わず身構えるトモエだったが、しかしアリサは特に動きを見せない。

「……しかし、今は勤務時間外なので優先順位から外れるロボ」

 そう言ってアリサは再びクルリとショーウインドウの方向くのだった。
 はぁ? と気の抜けたような声を上げるトモエは不思議そうにアリサを眺めた。
 やっぱりというかなんというか……あのドクターが造っただけに一癖も二癖もあるロボットだった。
 だけど……。

(こうやって後ろ姿を眺めていると……やっぱり普通の女の子にしか見えないよなぁ)

 普通に可愛いと思う。
 やっぱり未だにロボットだとは思えない。

「? アリサに何か用があるロボか?」

 ふと、視線に気づいたのかアリサが振り向く。
 ロボットでも視線は気になるのか、トモエも少し戸惑う。

「あ……えと、アリサは服に興味があるのか?」

 戸惑ながら出てきた言葉はそれだった。
 われながら陳腐ともトモエは思ったが、それ以上の言葉が出てこなかったのも事実だ。
 幸いにもアリサは特に気にしてはいないようだったのが幸いだろう。

「別に」

 いや、むしろアリサは特にトモエには興味がないのだろうか?
 ただ簡単に一言で片付けてまたショーウインドウに目を向ける。

「ただ……」

「え?」

 ふと、おしまいかと思った言葉に続きが出てくる。
 突然の言葉に呆然とするトモエ、アリサは淡々と喋った。

「アリサにとってこの世界は情報では知っていても、実際には見るのも聞くのも初めての物ばかりロボ……だから気になったんだロボ」

「……そういうの、興味があるって言わないか?」

「興味があるんじゃないロボ、気になっただけロボ」

 ……意外と意地っ張りなのか、意見は変えようとはしないアリサ。
 しかし、その言葉を聞いているとトモエは少しアリサの見方が変わった気がした。

「結構可愛いところあるんだな」

「え?」

 アリサが驚いたように振り返る。
 ロボットでも褒め言葉を言われたら照れるのか?
 俺はアリサが見ている服の値札を見てみる。
 もし買える値段ならプレゼントしてあげようかと思ったからだ。

 しかし、その値段を見たとき驚愕する。

「ッ!? おま……アリサ、お前すごい値段の服見ているな……」

 それは一見すると普通の洋服だった。
 ところが値段は明らかに0の数がおかしい。
 ぼったくっているような値段だった。

「アリサ……お前この服欲しいのか?」

「欲しい? アリサは……」

 プレゼント出来る値段ではないが、聞いてみるとアリサの答えは……。
 しかし、その時。

「いたぞ! ここだっ! 貴様等動くなっ!?」

「……はい?」

 突然だった。
 一斉に俺達を包囲する警察。
 突きつけられる無数のピストル。
 その数50名近く、防弾装備も完璧のご様子。
 アノ、ボクイッタイナニヲシマシタ?

「あの、アリサさん? あなた一体なにをしたんですか?」

 思わず敬語になるトモエ、今それ位テンパッていた。
 警察は何やら緊張した面持ちでこちらに銃を突きつけている。

「特に覚えがないロボ」

「覚えがなくてなんで警察に取り囲まれないといけないんだよ……」

 アリサは思い出そうとはしているようだが覚えがないという。
 だが、この様子どう考えてもおかしい。
 まぁ、司法の敵たるダークプリズンのアリサが街にいる時点で警察はくるのかもしれないが、いくらなんでも異常じゃないか?
 ドクターマルスの時はこんなに騒がれなかったぞ?

「あ、あの……これは一体どういう――」

 俺はとりあえず警察に銃を突きつけられる理由が無いので事情を説明してもらおうとするがそんな事するより先にアリサは。

「銃火器多数を確認、危険度上昇、迎撃に移りますです」

「ちょっ!? まっ――!?」

 突然アリサは腰に装備している50口径マグナム二丁を抜くと、有無言わさず乱射し始めた。

「うわぁぁっ!? 撃ってきたぞ!?」
「怯むなぁ! 撃ち返せっ!」

 世の中はどれだけの理不尽が詰まっていると言うのか?
 少なくとも今トモエは、この上ない理不尽さを存分に噛み締めていた。
 ……訂正、このような理不尽は噛み締めるものではない。

「だぁぁぁぁぁっ! なんてことをしてくれるんだよっ!?」

 これは一体どういうことだろうか?
 トモエには今、あのアルセウスと出会った時並の理不尽さを感じていた。
 俺は社会にしっかりと貢献している善良な一市民……なのにどうして警察に撃たれなければならないのか!? トモエは嘆くしかなかった。

 警察は今、間違いなくこの古戸無トモエをアリサの仲間と見なし、ためらいなく撃ってきている。
 警察の手に持たれた、血の通わない鉄の塊から放たれる火のような熱さを持った鉛玉は容赦のない弾幕を張り、トモエとアリサを襲うのだ。
 冗談じゃない、その一言に尽きるだろう今の現状は。

 ここから先は一つでも選択肢を間違えたら即死亡に繋がる!
 そう容易に感じさせてくれる現状は、幸か不幸かトモエに精神を冷静にさせた。

 こんなくだらないことに使うのはアルに申し訳ないか?
 否、今は命の危機なのだ! 四の五の言える状態ではない!
 銃弾が一発目の前を通り過ぎる、彼はそれを僅かに動いて回避した。
 そう、その瞬間彼の『世界の見え方が変わった』。

「白昼堂々撃ちあうんじゃねぇ! この馬鹿っ!」

「にゃっ!?」

 トモエはアリサの首根っこを掴むと引っ張り上げ、抱き上げるとそのまま一目散にその場から逃げるのだった。

「あっ! 待て! テロリスト2名、北へと逃走! テロリストは強力な火器を所持している! 慎重に当たれ!」

 テ・ロ・リ・ス・ト・二・名?
 トモエは泣くしかなかった。
 こちとら毎日をちょっと一般人より低い生活水準で生きているだけのまっとうな市民だというのに、テロリスト扱い。
 もうトモエには一体何を恨んで、何を嘆けばいいかさえさっぱりわからない。





「――はぁ……はぁ……ここまでくれば大丈夫だろ?」

 トモエは常人では考えられないほどの速度で走りぬけ、気がつけば街の北の端の辺りまでやってきていた。
 そこには警察の目は見られず、ようやく一息を着いたトモエはその時、アリサの様子に気がついた。

「…………」

 目を見開き、口をポカンと開けて固まるアリサ。
 一体どうしたのかとトモエは良くわからなかったが、突然アリサを目を輝かせるのだった。

「銃撃戦のさなかアリサを抱きかかえて逃亡……これって愛ロボッ!?」

「……はぁ?」

 今度はトモエがポカンと口を開く番だった。
 トモエの体から降りたアリサはまるで恋する乙女のように目を輝かせて、とんでもない言葉を発したのだ。
 トモエには理解不能、理解不能。
 というか至極正常な判断が出来る人間ならば誰が理解できようか?

「愛って……あのなぁ? あのまま撃ち合っていたら危ないだろうが」

「それは大丈夫ロボ、アリサは銃弾ごときではビクともしないロボ」

「オメーの心配じゃねぇ、警察のみなさんが怪我したら俺の社会生命は完全に絶たれるの! ていうか今の状態ですらやばいわ!」

 恐らく警察は今も血眼になってトモエとアリサを探していることだろう。
 いつもいつも飽きもせず運命っていうのはトモエに不幸をもたらし続けるが今回は特別に不幸ではないだろうか?
 だが、肝心の当事者であるアリサはむしろ幸せそうな顔だった。
 どんよりと不幸顔のトモエとは真逆に幸せ全開のアリサはまさに対照的であり、なんでこうなったとトモエは今更ながら疑問に思った。

「そうか、トモエはアリサが好きなんだロボね……でも、哀しいロボ。アリサとトモエは所詮敵同士……互いが愛を語ろうともそれは叶わぬ愛なんだロボ……」

 全力全開妄想マックス……アリサの口から語られる聞く人が聞く人ならばとんでもない誤解を招きそうな言動の数々に、トモエは冷静な判断が取れなかった。
 どうしてこうなった? もう何度目かさえわからない同じ言葉が彼の頭の中で何度も繰り返される。

「トモエ……ううんダーリンごめんなさいロボ! アリサは敵だからダーリンの愛に応えられないんだロボ」

「ロボットの癖にお前の頭の中は桃色か? どこをどう捻ったらそういう答えに行き着くんだ?」

 トモエは呆れていた。はっきりと呆れていた。
 そのやる気のない口調からもわかるほどに呆れているのだ。
 いつのまにやら自分の立場は彼女の中ではトモエという一人の人物からダーリンにまでランクアップしてしまったらしい。
 あまりの展開の速さについていけず、またどうでもいい状態にもはやどうすればいいのかさえ分かるわけがない。

「でも……それでもダーリンがアリサを好きだって言ってくれるのなら……アリサは……ポッ」

 何故か赤面するアリサ。ロボなのに……と思わず突っ込みたくなるがそこはかとなくスルーしてしまうトモエだった。
 そもそもあのドクターマルスは一体どういう思考を持ってこんな破天荒なロボットを造ったのであろうか?
 今目の前にいるロボットは、正しく恋する少女そのもの。

 そりゃ確かに、アリサは可愛いと思ったし、むしろロボットである方が不思議とさえ思った。
 そう思ったが……やっぱりこれはないな、そうトモエは実感していた。

「あのさアリサ?」

 だんだんと思考が回復してきたトモエは、いい加減弁解をしようとするがすでに時は遅しというか……。彼女の暴走はもはや誰にも止められない。

「駄目ロボ! それ以上言わないで! アリサは罪深いロボットなんだロボ! あなたを愛に仇で報いてしまうロボ!」

「……突っ込むべきなのか?」

 昔漫画で見た光景では恋する乙女は無敵だった。
 今のアリサはまさにそれ、この恋するロボットはもう誰にも止められないこと請け合いなのだろう。
 つまり、弁解の猶予はないということだろう。
 ……どこまで行っても不幸なのだな……トモエは溜息を漏らすしか無かった。

「たく……もういいよ、盛大に誤解してくれ、俺はいく」

 いい加減帰らないとアルたちが心配する、そう思ったトモエはアリサの説得を諦めて教会に帰ろうとした。
 だが体を前に進めようとしても前に進まない、というかトモエの腕がギュッといつの間にかつかまれていた。

「……ダーリン」

 頬を赤らめて、涙目の少女。
 ここまでならばまさに絵に書いたような乙女だろう。
 だが、忘れてはならないが彼女は敵でありロボット。
 そもそもロボットに恋愛感情なんてあるのか? そんなどうでもい疑問さえ今のトモエには浮かぶ始末であった。

「えと……この手は何かな?」

 何かもの言いたげにトモエを見て、何も語らないアリサはギュッとトモエの手を握っていた。
 これは……誘っているのか? 彼女は自分を誘っているのか?
 トモエは帰るに帰られず、また動くに動けなかった。

 数分の沈黙、互いにどうすればいいのか分からない状態が続くと、気がつくと不穏な空気に気がついた。

「……!? 警察か?」

 現在トモエ達がいるのはまさに路地裏。警察は表通りを忙しく走り回っていた。

「ッ! アリサとダーリンの甘いロマンスを邪魔する敵役ロボッ!?」

「激しく突っ込みたいけど、どうせ聞かないだろうから突っ込まないよ……ていうか、どうするものか?」

 周囲を歩く警察の数は次第に増えていっているような気がした。
 このままでは発見されてあらぬ容疑で捕まるのは明々白々。なんとしてもこの場は切り抜けなければならない。
 トモエはどうすればその場を切り抜けられるか周囲を見回し必死に探した。
 ふと、その時ひとつ目に映ったものがある。

「映画館か……よし、アリサ一旦あそこに隠れるぞ」

「デートロボかっ!? 初めてロボ……ああ、アリサまだおめかししてないロボ……どうしようロボ~……」

 恋は盲目とはよく言ったものだ。
 トモエはアリサの腕を引っ張ると警察の目をかいくぐって映画館の中へと入っていく。
 アリサはというと、本当にロボットとは思えない満面の笑顔を浮かべて、嬉しそうに手を引かれて映画館に入るのだった。
 その様は事情を知らない人間からは誰から見ても幸せそうなカップルにみえただろう、アリサだけを見れば。





「……かなぁり適当に選んで入ってしまったが、よりにもよってB級ロマンスとは。まぁいいか……終わるまで隠れていたら警察も諦めるだろ」

 トモエは後悔していた。
 われながらかなり適当に選んだ結果が、チープな内容のB級ロマンスの映画だったのだ。
 余程人気がないのか、座っている観客の数もまばらでむしろ空席の方が目立つ始末。
 内容もありきたりであり、目新しさも無ければちっとも面白くもない内容。
 だが、トモエにはある意味冗談ではないように感じた。

(その気もないのにアリサとB級ロマンスじみたことしているんだから洒落にならないよなぁ……)

 しかし、見ていてつまらない。薄暗い環境につまらない映画はたまらなく眠気を誘う。
 実際のところぐーすか眠っている観客も見受けられる。
 お世辞にいい映画館じゃないなとトモエは感じつつも、隠れるだけなら丁度いいかと思い、横に座るアリサを見る。

「…………」

 アリサはというと、まるでショーウインドウを覗いていた時のように無表情で、だけど映画を熱心に見ている。
 いや、彼女の場合は観察なのかもしれない。
 彼女にとってはまだまだ世界は新しい事だらけ、だからこそ色々な物を知りたいのだろう。
 そういう意味ではどんな映画でも、映画館に入るということはアリサにはいい経験なのかもしれない。

「……? どうしたロボ、ダーリン」

 ふと、トモエの視線に気がついたアリサはトモエに振り向いた。
 「ああ、いいよ前を向いといて」と言うと、アリサは直ぐ様映画を見ることにする。
 トモエはそのままアリサに話始めた。

「面白いか? 映画は」

 面白いか……それは何も知らない機械人形には愚直なことなのかもしれない。
 アリサは表情を変えず、視線も変えず冷たい言葉で言ったのは、否定する言葉だった。
 ただ簡単に「別に」と、それだけだ。

「――から」

 ふと、アリサの表情が変わった気がした。
 口元が動き、小さな声で何かがつぶやかれた。

「なんって……?」

 トモエが聞き直す。
 直後、映画から大音量が館内に響く、クライマックスシーンか何かだろうか?
 しかしトモエには大して興味もなく、むしろアリサの方が興味があったため、それは大して意味のない雑音に過ぎない。
 映画の大音量とかぶるように放たれるアリサの小さな言葉。

「…………から」




 …………。




「……アリサ、か」

 映画が終わった後、アリサは突然トモエに別れを告げてどこかへと走り去っていった。
 彼女には彼女の事情があり、トモエにはトモエの事情がある。
 出逢いがあれば、別れもある。

 ただトモエの心境は最初は早く離れたいと思っていたものが、もう少し位付き合ってあげてもよかったか……と、知らぬ間に変わっていた。
 映画館であった出来事、あんまりにも陳腐すぎて映画の内容なんぞ欠片も覚えていない。
 ただ、神経を研ぎ澄まして聞いたアリサの言葉。


 ――アリサは、面白いと感じる方法を知らないから。

 産まれたばかりのロボットは赤子と同じ、何も知らないんだ。
 だからこそアリサは何が面白くて、何が哀しくて、何が楽しくて、何に怒ればいいのかがわからないんだ。
 本来ならば子供がその成長の中で覚えていく当たり前の感情、でも彼女は産まれた時から大人であり、子供だった。
 でも大丈夫、時は必ず彼女を恋する乙女から立派な大人へと成長させるだろう。

「……世の中ってそりゃ辛いことが9割だよ、でもなぁ残り1割の幸せを感じられないなんて……9割の不幸を否定するより不幸だぞ?」

 トモエは日々が理不尽の連続だ。
 仕事が入らなければご飯は食べられないし、電気も使えない、お風呂にも入られない。
 アルセウスと付き合っていれば面倒なことなんていくらでも起きる。
 アリサと出逢えば今日のような有様。
 頭をさげることなんてしょっちゅうだし、理不尽なことなんてとにかく多い。
 もしかしたら大人になるっていうことがそもそも理不尽であり、理不尽であり続けることなのかもしれない。

 それでもトモエは思う、理不尽の中にある幸せが自分の幸せなんだと。
 幸せを知るのは辛いことも知ることになる。
 それでもトモエはアリサに思う。

「次会ったら、面白いってことくらいは教えてやりたいな」

 トモエはすでに平穏を取り戻したアークスシティで夕日挿し込む時間、静かに教会へと帰った。
 今日もまたドタバタしたが、これはこれで楽しかったのかもしれない。
 そう思うと笑いも浮かべられる。



「――で、一体どんな事情があれば汝はこんな時間に帰ってくるのだ、契約者よ?」

 ……そして教会、トモエを迎えたのはカンカン顔のアル達であった。
 聞けば、いつまでたってもトモエが帰ってこないから心配になったノーマは一人飛び出し、そのノーマが帰ってこずにいるためコリンたち子供たちが泣き出し、挙句の果てに相乗効果でタルタロスまで癇癪を引き起こす始末。
 そして御免被るのは当然の如く子守りをするアルセウスなわけだ。
 いくらあやしてもあやしても、子供たちは泣き止まず次第にアルセウスにもストレスが溜まっていく。
 しかしストレスのはけ口はおらず、どんどん怒りはやがて理不尽へと変わっていったのだろう。
 当然、トモエが帰ってこようものならその怒りに似た理不尽の矛先はトモエに向く。

 属に言うこれが理不尽というものだ。
 自分がどうにかしようとしても、周りがそれ以上のことをやってのけてしまう。

「ああああああああっ! やっぱり理不尽なのかよぉっ!?」

「あ! 逃げるなトモエー!!」

 幸せな余韻などどこ吹く風。
 教会に戻ればまた、問題に問題、大問題!
 世の中なんて9割が不幸で出来ている。
 トモエも結局は盛大に理不尽を噛み締めるのだろう。
 だが、アークスシティは今日もいつもどおり、平穏だった。

テーマ : ポケモン
ジャンル : ゲーム

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プロフィール

KaZuKiNa

Author:KaZuKiNa
KaZuKiNaといいます。
小説書いたり、ゲームプレイしたり。
あ、熱帯魚とかも飼ってます。
色々、自由気ままにやってます。

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