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ドクターマルスと365日 第5話 ドクター一行、海へ行くの巻き

「おーい、海行くぞ海!」

 それはあまりに突然過ぎた。
 薄暗く陰湿な雰囲気の漂う地下の研究室には似つかわしくない陽気な声。
 それは最近入り浸っているいつもの男の声だった。

「海ってなにを突然?」

「海でありますですか?」

 その突然の作者の言葉にドクターとアリサはぽかんとしている。
 この内陸部のアークスシティには当然海など無い、となるとこの地方で海があるとしたら西海岸側になるだろう。

「海……天体の表面、及び表面の付近を覆う液体の層。濃度3%前後の塩を含むほか、マグネシウム、ヨウ素、アルミニウムなど多分な元素物質が溶け込み、地球の表面70%覆う……」

 アリサにとって海とは一体どんな壮大な想像をしているのだろうか?
 生命溢れる豊かな海? それとも光さえ届かない深海?
 いずれにせよアリサが海に心踊らせるのは確かであろう。

「アリサは海、行きたいよな?」

「はいでありますです♪ アリサは海へ行きたいでありますです!」

 アリサにとって海は未開の地、聞きはすれど見たことのない物にはなんにでも興味を示す彼女は直ぐ様、ニッコリうんと頷いた。

「ドクターはどうだ?」

「海であるか……もう何年も行ってない気がするあーるな……まぁ、たまには海へバカンスに行くのも一興あーるな」

 頬と突き、悩む仕草をするドクターマルスであったが、出てきた答えは意外に良好な物であった。
 ドクターマルスこと、丸栖優香にとって海に行ったのはもう昔の話。
 かつて大学に通っていた際に友人数名と行ったきりであったし、海というものが好きという程でもないが、たまには休みたいという本音もあった。

「おーし、それじゃ用意が済んだらさっさと行くぞ!」

「でも、どこに行くんだロボ?」

 作者が意気揚々と準備にかかると、アリサはふとした疑問を突きつけた。
 先程も言ったとおり、アークスシティに海など無い。海とはアークスシティから遥か西へと言った所にある巨大な西海岸だけだ。
 最も、ミレリア地方それ単体で日本の本州よりも大きな大陸は言葉だけ聞けば近そうでも実際には遥か遠くにある。

「バーバラシティだな、ドクターは知ってるだろ?」

「無論である」

 バーバラシティはアークスシティから北西へ200マイル進んだところにあるミレリア最大のリゾート地だ。
 かつては戦艦が立ち入る軍港であったが、50年前に戦争が終り、今や軍需が無いということもあり海を整備して、リゾート地としたのが始まりだ。

「しかし遠いあるなぁ……移動手段は確保しているのであるか?」

 移動手段がなければアークスからバーバラシティなど当然行けない。
 ドクターとしてはバイクの免許こそもっているが、車は運転できないので当然運べない。
 第一、ガソリン代を考えるとなんとも必要経費の多い手段であるためドクターとしてはオススメできない。
 とはいえ、歩いていけば何ヶ月かかるかもわからないだけにここは作者任せであった。

「ふ、この作者に抜かりはない。カモンユウキ!」

「……かったる」

 突然空間に裂け目が生じると、そこから登場するのは最近出番のなかったユウキだった。
 彼としては本当にかったるいのだろう、言葉だけでは飽きたらず表情も非常にかったるそうであった。
 
「久しぶりであーるな、ユウキよ」

「ああお久――」

「初めましてロボ♪」

「!? え……あ……えと、は、初めまして」

 普段表情も変えず、かったるいかったるいとばかりいう少年にも少年らしさはあるのだろうか?
 アリサににっこりと微笑掛けられたユウキは物珍しくもうろたえた様子であり、ぎこちない喋り方でアリサにあいさつをした。

 あまりに珍しい光景、作者には何度か見たこともあるがまだ付き合いの浅いドクターマルスにはあまりに意外な光景であった。

「ほお、ユウキにも少年らしさが残っていたあるか」

「相変わらずお前は美少女耐性が少ないな」

 そうなのである。ユウキは普段かったるいと言い何事にも興味を示さない無感動人間であるが、可愛い女の子を前にするとドキッとして調子が崩れることがあるのだ。
 特に初回のアリサの印象は可愛いだけでなく落としやかそうなイメージを受け、ユウキとしてはどストライクの女の子だけに、ドキドキ感はひとしおである。

「か、かったる……馬鹿言うなよ、初めて見る娘がいたから驚いただけだ」

「それにしては驚きすぎであーるな……ふっはっは」

 ドクターマルスはその様子を見て、何が面白いのか大笑いをしていた。
 よほどドクターもユウキに対するこれまでの先入観からもっと大人びた印象を受けていたのだろう。
 だが、実際にはそこらにいる15歳の少年たちとそんな大差のない感受性を持っているユウキは子供らしさだってもちろんある。
 普段はそれを隠してはいるが、こうやって時たま出してしまうところが、大人になりきれない少年だということだろう。

「バーバラシティにはユウキに送ってもらう、お前ら、準備だ準備!」

 パンッ! と手をたたき、作者はドクターたちに準備を急がせると、ドクターとアリサは困ったようにその場で考え込んだ。
 両者何を考えているかは別々だが、その疑問はある種問題だった。

「うーむ、水着なんてとうの昔に捨てちまったであーるからな」

「そもそもアリサは水着なんて持ってないロボよ?」

 海へ行っても水着なし……それは由々しき問題だった。
 アリサはともかくとしてもドクターなんかは白衣(夏物)を着ているだけに海には全く似つかわしくはない。
 これは困った問題だと作者もうーんと頭を捻らせていると、当たり前のようにユウキがツッコミを入れた。

「いや、海水浴場だったら当たり前に水着屋位あるだろう? 向こうで買えば?」

 その発言に皆ポンッ! と感心したように手を叩いた。
 いや、普通に気づこうよとユウキは心の中で思ったが、人というのはどういうものかひとつの問題を目の前に出されるとそれに集中して周りが見えなくなるらしい。

「それじゃ、手ぶらでもいいわけか」

「そうであるな、向こうで買うある」

「アリサ、海初めてロボ♪」

 そのいう方針で決まると一行はユウキが作った次元トンネルの先へと進み、一行バーバラ入りをするのだった。





「……暑ぅ」

 最初に夏定番の言葉を言ったのはユウキだった。
 それもその筈彼の格好はいわゆるルビサファ男主人公の仕様。
 露出度の極めて少ない格好であり、暑苦しいことこの上なかった。

「……そんな格好していれば当たり前である、さっさと着替えろである」

「無駄だ、ユウキはポケサファの主人公故にある呪いがかかっている」

「呪いロボか?」

 それはまた物騒なと思うドクターだったが、作者の次の言葉を聞いたときにはなんともどうでもいいことだと思うことだろう。

「ユウキはポケサファ主人公だから、ルビサファ時代の主人公の格好以外できない呪いがかかっているのだ!」

「はぁ……エメラルドの俺が羨ましい」

 そうなのである、エメラルドとの差別のためなのか、ユウキは暑苦しいルビサファ男主人公の格好以外できないのだ!
 それゆえに軽装の格好にはひどく憧れる物がある。
 まぁ、そこはかとなく主人公の宿命であろう。

「まぁ、気にするなユウキ、これからパールのヒカリも同様に辛い目にあう」

「キッサキにあのミニスカでいくのか……ご愁傷さまだな」

 ユウキは大量の汗を流しながら首をふるしか出来なかった。
 とりあえず、道端に立っているのは暑すぎるので一行は水着の売っている量販店に入るのだった。

「あ~、クーラーが涼しい」

「さて、水着を見てくるあーるか」

 店に入るとまず感じたのは異様な涼しさだった。
 外の暑さなどまるで嘘のよう、そう感じるほどに中と外の温度差は激しくユウキも思わずゆるい顔をしてしまう。
 ドクターはアリサを連れて行くと直ぐ様女性用水着のコーナーへと向かった。

「……作者は買いにいかないのか?」

「男の水着選びに喜ぶ読者がどこにいる?」

 ……かったる、と本日何度目かの愚痴をこぼしたユウキは確かにと考えた。
 誰も男の着替えシーンなど興味もなければみたくもないだろう。
 そういう意味では女性シーンを写せと批判もくいそうだが、そこはしばらく待っていて欲しい。


 ……そして30分後。

「お待たせロボ~♪」

 30分後、休憩室で休んでいた作者たちの前にドクターたちが帰ってくる。
 初めていつもの召し物以外を着たことに上機嫌のアリサに対して、ドクターマルスは気恥ずかしいのかもじもじしながらアリサの後ろをぎこちなく歩く。
 どうやらふたりとも水着に着替えてやってきたようで、その様子に思わず作者も「おおっ」と唸った。
 ここら辺はFantasyのトモエで味わうことのできない役得だろう。
 最も向こうでは同一時間軸で羨ましい光景に会っているわけだが。

「パパ、似合うロボか?」

 アリサは水着をよほど見せびらかしたいのかその場で踊ろうように一回転、初めて着る別の召し物に気分は上々だ。

「……スクール水着?」

「ワンピースだな、日本ではスク水というの方が浸透しているが、こっちじゃこれも水着の一種だな」
「ちなみにここで作者のくだらない無駄知識、現在スクール水着と言う名前で日本に浸透している紺色のあの水着は1907年オーストラリアのアネット・ケラーマンにより考案された。彼女は当時の常識を打ち破りトップとボトムを一体化させ、余計な装飾を徹底的に省いた現在のワンピース型水着を考案。彼女はこれにより英仏海峡の横断に成功した。なお、肩周りや太ももが完全に露出したこのデザインは当時アメリカのボストンビーチで着用した際公然わいせつ罪として逮捕されるという事件もあった。これは当時女性のあり方には確かに非反するものであり、また男尊女卑の真っ只中であったということも関与する。しかし、この一見によりアメリカでの女性の立場上昇に対する貢献にも成り得た、現在では日本などでは学校などで正式採用される一般的な水着である、世界的にみればこれもファッションの一種であるということを熟知していただきたい」

 いじょ、と付け加えて説明を終える作者。
 正直今回はスマンと思っている、見づらいと思うが今回は我慢してくれ。
 作者の無駄知識シリーズはこれからも続きますので、また次回も生暖かい目で見てください。

「相変わらずオメーは無駄知識の塊だな」

「アメリカのSF作家アイザック・アシモフも言っている。人は無用な知識が増えることで快感を覚えることの出来る唯一の生き物だとな」

 呆れながらようやく前に出てきたドクターの格好は女性としては少々可愛らしすぎるというか、露出は少ないがデザインは派手な花柄のパレオだった。

「み、見るなである……はずかしいではないか」

「……無難な選択だな」

 ドクターらしいといえばそれまでだろうか。
 ドクターはやっぱり見られるのを感じると恥ずかしそうにもじもじとした。
 ドクターもやはり女性としての意識があるのか男性に見られると気になって仕方がない。
 正直水着を着ることも抵抗があり、本人は店の店員にもっと派手なビキニを推奨されたが作者に見られることを想像したさい、真っ赤になりパレオを選択したという。

「しかし、花柄のパレオはちょっと子供っぽくないか?」

 しかもそれよく見ると花は花でもチェリムの印刷されたパレオで余計に子供っぽかった。
 自覚しているのかドクターも恥ずかしそうであったが、仕方がないという顔でそっぽを向いてしまう。

「まぁいいや、それじゃ砂浜に行きましょうか」

 そういうわけなので、一行はいざバーバラシティの海へと直行する。



「海……懐かしいあるなぁ」

「そう言えばドクターマルスはどこの出身なんだ?」

「ん? フォルシティの出身であるが?」

「フォルシティってどこだ?」

 海に懐かしさを覚えたドクターはボソッと呟いたとき、気になったユウキがドクターマルスの出身を聞いた。
 すると出てきた言葉はフォルシティという作者も聞いたことのない地域が出てきたのだ。

「作者が忘れるなよ、フィオレ地方の一都市だ」

 思わず突っ込んだのはユウキだった。
 「ああ、忘れていた」とポンと叩く作者は実にどうでも良さそう。
 まぁ、実際にドクターマルスの出身地なんてこの作品には関係ないし、どうでもいいのは確かなのだが。

「フィオレってレンジャーユニオンがあるところだよな?」

「うむ、ポケモンレンジャーの総本山である」

 フィオレ地方は日本の一部であり、レンジャーユニオンが存在する地域だ。
 フィオレにはポケモンをモンスターボールに入れる風習がないためか、ポケモンバトルを行う風習もなく、ポケモンセンターもない。
 そういった少し特殊な環境で育ったためか、ドクターはこれまでポケモンに対して興味を示さなかったのだろう。

「お、そういえばむてきんぐは?」

 ふと、気づいたのは作者だった。
 そういえばむてきんぐことポリゴン2がいない。
 それを聞いたドクターは思い出したようにモンスターボールを取り出した。

「忘れていたである、でてこいむてきんぐ!」

「ポリ?」

 ポンッ! とボールから出てくるポリゴン2は実に久しぶりに外の空気を吸った。
 最近アリサの登場によりめっきり出番が少なくなっているむてきんぐは今日もボールの中で一休み……かと思っていたらまさかの登場に一体どうしたのかと周囲を伺った。

 だが、状況はいつものようにバトルの様子はなく、異様な程多い人混みで不思議に思った。

「おーし、むてきんぐ。しっかりと楽しもうぜ!」

「ポリ?」

 作者はむてきんぐを抱き抱えると海へと走った。

「ああっ! こらポケモンさらいーっ!」

「なんのかんのでパパもむてきんぐが好きロボね」




 ……時間というのはあまりに過ぎるのが早く、そして残酷であろう。
 遊び初めて一時間、ナンパされたりナンパされたり、ナンパされたりのドクターとアリサ。
 かったるいとつぶやいてばっかりの汗だく少年ユウキ。
 そして海辺で涼しみまくる作者とむてきんぐ。
 それはそれは幸せな時間だろう、だが幸せな時間というものにも終わりはやってくる。

「おーし! いくぞ優香!」

「だから優香言うな!」

「トース! ロボ!」

 砂浜で打ち上げられる水玉模様のビーチボール。
 サッとジャンプする作者、待ち構えるのは緊張した面持ちのドクターとむてきんぐ。

「必殺! ただのアタック!」

 アリサの打ち上げたビーチボールを見事に相手のネットの先に打ち込む作者。
 反応が間に合わず惜しくもボールは砂浜に突き刺さった。

「14-10! マッチポイント!」

 そしてそれを見守るのは審判しかやることのないユウキだった。
 そう、彼らがやっているのはビーチバレー、中々白熱したバトルを繰り広げていた。

「ふっふっふ、むてきんぐは中々厄介だがドクターは所詮頭脳派、敵ではないわ」

「でも、パパも十分どんくさいロボ」

「ふはははは! 優香に比べればマシよぉ!」

「だから優香言うな!!」

 すでに勝ち気の作者は平然とドクターの挑発を行う。
 イライラするドクターだが、これでも彼女もしっかりと楽しんでいる方だ。
 なんだかんだで、ドクターも変わってきたのだろう。

 ダークプリズンという組織の中では友人などおらず、彼女はいつも位地下の研究室に入り浸っていた。
 時折、完成させた試作ロボットを使い、街で破壊工作をする日々。
 このように楽しむ時間などあるはずもなかった。

 だが、トモエに敗れ、そして作者と出会ってから彼女の運命は一変した。
 今は毎日が充実している、それは確かだった。

「行くロボ!」

 アリサの美しい流線美は宙を舞い海老反ると太陽の光が反射して光のラインが浮き上がる。
 洗礼された動きから繰り出されるアリサの一撃は強力で、サーブでさえ取るのは難しい。
 必死で喰らいつくドクター、だがボールはドクターの腕に弾かれビーチコートの外へと飛び去る。

「あっ! やっちまったか!」

 ボールはそのまま海辺へと向かい、ある人物の頭にぶつかってしまった。

「あ、すまないであーる! ボール……を……?」

 慌ててボールの回収に行ったとき、ドクターは突然固まってしまう。
 それもその筈であろう、その人物は本来ならこの場にいるはずのない男なのだから。

「ああ大丈夫、今かえ……す……?」

 ボールを広い、笑顔で振り替えった男も固まった。
 男も思ったことだろう、何故ドクターがこの場にいるのかと。
 そう、その男はなんと。

「また汝かドクターマルス!」

 その場で一番目立つのは320センチの巨体を誇るアルセウスだろう。
 ドクターマルスを見つけると激しく威嚇するようにドクターを睨みつけた。


「なんでたまにはバカンスでアークスシティを離れてまでお前らと出会わなければならないのであーる!? トモエとアルセウス!」

 そう、その場にいたのはトモエたちであった。
 よく見ると後ろにはビキニを着た公式巨乳天然美女のシスターノーマとあの教会の子供たちまでいる始末。

「おい、これはどういうことだ作者?」

「予想GAYです、この海の作者の目を以てしても見抜けなんだ」

 これには本気で作者も予想外だった。
 本来向こうには作者とユウキが登場しない代わりに、こちらではトモエとアルセウスは登場しないように神が調整をおこなっているはずだった。
 神といえば勿論、作者のことだ。

 だが、作者にも手違いはあるのだろう、偶然にも同じ日付に海へと着てしまい、しかもバッタリとあってしまう始末。
 あ~あ、やべ……これどうしようと頭を抱えたのは作者だった。
 なんとしてもこの場は穏便かつ、自分たちが目立たないように切り抜けなければならない。

「まぁいいドクターマルス! ここで因縁に終止符を打ってやるよ!」

「ふん! その言葉そっくりお返しするであーる! アーリサ! やぁっておしまい!」

 直ぐ様戦闘態勢を整える両者、ドクターに呼ばれるとアリサは直ぐ様飛び出した。
 それはまるで弾丸のような速さでトモエの元に向かう。

「珍しく彼女、返事しなかったな」

「あん?」

 ユウキが不思議に思った、ドクターに返事することなく敵に向かう彼女。
 普段の彼女なら何かしら返事をしてから向かうはずだ、だが今回は気のせいかドクターが叫ぶより先に動き出したような……そう思ったとき、その行動の意味はすぐに判明した。

「ダーリン会いたかったロボーッ!」

 なんと、アリサはいきなりタックルするようにトモエに抱きついたのだ。
 勢い余りすぎて砂浜に倒れこむ男女、アリサは実に嬉しそうにトモエの胸に抱きついていた。

 その様子に信じられないという顔でいるのはドクターとアルセウスだ。
 とりわけドクターはまさに神に見放されたとでも言うかの如く悲壮な顔をしている。

「だ、だ、だ、ダーリーーーーン!? あ、アリサ!! 君はこの私を置いて恋の列車に乗って旅立つというのか! ああ、私は悲しい! でも、涙はいつか枯れ果ててしまう! そうあなたは私を置いて夢を追うのね!?」

「壊れたのか……ドクターマルス?」

 多分壊れたんだろうな……そう呟いたのは作者だった。
 ドクターは錯乱したかのように言葉を続け、その様子をトモエたちは不気味に思いながら見た。
 しばらくすると彼女は突然どこからともなくモンスターボールを取り出す。
 その際彼女の目が怪しく光ったことを付け加えておこう。

「やらせはせん! やらせはせんぞぉ!! 貴様なんぞに我が愛しのアリサをぜーーーったいにやらん! お前のような男に娘をやれるかーーっ!」

 突然、モンスターボールを投げるとそこから出てきたのは180ミリ反動砲だった。

「おまっ!? こんなところで撃ったら!?」

「だまらっしゃい!! 娘を穢した罪、その生命で償えであーーるっ!!」

 すでに気が確かでないドクターはアリサもみえていないだろう。
 アリサがいるにも関わらず容赦なく引き金を引いたとき、巨大な弾頭は無情にもトモエに向かう。
 だが、これにはトモエも瞬時に反応した。
 眼の色が白く変色すると、彼は超人的な動きで高速で飛ぶ弾頭を回避し、横から弾頭を蹴り上げたのだ。
 蹴り上げられた弾頭は空中で爆発、周囲の観光客たちが一瞬の閃光と凄まじい爆発に何が起こったのかと注目する。

「あの馬鹿っ! ユウキは周囲の沈静化!」

「あいよ、かったるい」

 初めてかもしれない、作者が冗談抜きで真面目な顔をしたのは。
 的確に場を収めるためにユウキを動かすと作者は直ぐ様ドクターの方に向かった。

「ちぃ! おのれ怨敵古戸無トモエめ!」

 歯ぎしりをしながら直ぐ様次のモンスターボールを取り出す。
 ドクター、ドクターお前はやりすぎだ。そう言わんがごとく作者は珍しく真面目な顔だった。
 音もなくドクターの背後に迫ると作者はそのドクターの細い首を。

「圓明流は極めると同時に折る!」

「かく――ヒュルッ!?」

 作者は一瞬にして裸絞めを行い、ドクターの頚動脈を抑えこむ。
 あっという間に頭に血が上らなくなったドクターは直ぐ様気絶。
 体から力がなくなると作者はドクターの首を引っ張り何事もなかったかのように去ろうとした。

 だが、いきなりの登場でいきなりの退場ではトモエとアルセウスも不思議でならないだろう。

「あ……あの、アンタは?」

 当然、出てくるであろう言葉だった。
 作者は溜息をついた、こうなるのが分かるから出て行きたくはなかった。
 たとえ偶像とはいえ、神は人の前に顕現してはならない。
 神は空想でなければならないから。
 だからこそ、彼は、作者は一定の仕事をこなすのみである。

「その質問に回答する義務はない、いくぞアリサ!」

「あ、パパ、はーいロボ! それじゃあまたあとでロボね、ダーリン!」

 作者がアリサを呼ぶと、アリサは嬉しそうに作者の腕に抱きついた。
 面倒だと思いながらも、事態の収集を行ないドクターを引きずる作者は、本来あるべき神の顔をしていただろう。
 神は等しく平等であり、そして等しく関与してはならない。
 今回それを破ってしまった。
 それには作者も自責の念はある。

 そして同時にそれは、後に悲劇を生むだろう……。




「う~、首が痛い」

「自業自得だ、バーバラシティでまで面倒を起こすな」

 晩飯時ホテルに帰ったドクター一行は自分の部屋で休んでいた。
 ユウキとアリサの姿はあらず、ゆっくりとした時が今流れていた。

「しかし、作者に関与されるとは思っていなかったであーる」

「……その点に関してはノーコメントだぞ」

 作者はふてくされるように、あるいは忘れるように首を回して外の優雅景色を眺めた。 ふ、と笑いドクターは作者の隣に座る。

「別に私は何も言わないであるよ」

 ドクターとしても今朝は少々やりすぎたと反省していた。
 悪の秘密結社ダークプリズンの幹部クラスが何を言うか、というのもあるが……今の彼女は非常に穏やかだ。
 作者チラリとドクターを見た。
 海で遊び、浴衣に着替えたドクターは美しかった。
 赤い髪が艶を得て輝き、整った長い髪は重力に負けて地上に垂れる。
 穏やかな、だが大人の女性の美しさを持つ瞳はとても綺麗だった。

「……あ~、さて私は風呂にはいるとするである」

 ドクターはそう言うと風呂場へと向かった。
 作者は一人になると、ふと考える。

「神が顕現している、それは偶像の神だ。自分でも自覚している……おれは操られている神だと」

 ……それでもだ。自分は神なんだ。
 今日、改めて実感した。
 ドクターと一緒にいることが自分にとって快感になっている。
 作者にとって最初はただお助け的にドクターマルスの前に現れただけだった。
 なのに、気がつけば当たり前のようにこの場に自分はいる。
 そう、この世界は居心地が良すぎるんだ。

「神様失格だな、ひとつ世界入り浸っちまうとは」

 だが自分は偶像の神だ。
 神といえども、それは本物の神が操る架空の神。
 たしかにその人物は元となる神を忠実に再現した人格の持ち主だが、それは決して=ではないのだ。
 だからこそ、今操る神も同じ気分だろう。
 この世界にいること(描くこと)が楽しいんだ。





 ……やがて時間は夜を迎え晩餐時。

「ん? ここは?」

 ドクターたちは予算の関係上ご飯の着くプランは取っていなかったため、彼女らは近くの飯屋に向かう途中だった。
 ある大広間からどんちゃん騒ぎが聞こえてくる。
 失礼と思いつつも覗き込むと、そこは教会ご一行の部屋だった。

「うっ! 酒臭っ! 日本酒の匂い!?」

「? おめーもしかして酒がダメなタイプあーるか?」

「ああダメだね! 俺はこう見えてもビールの酒気だけで酔えるほど酒に弱い! 酒は俺の天敵なんだ! 俺に近づけるんじゃねぇぇぇっ!!?」

 作者(私)にとって酒は大の苦手である。
 思い起こせばいくらでも出てくる酒の苦い歴史、作者にとって銃と酒は決して相いれぬ天敵なのだ。

 しかし、それを聞くとドクターはピコンと何か思いつく。

「アリサ、こっそり突入ある♪」

「はいロボ、ママ♪」

「あ……おい、かったる……」

 慌てて止めようとするユウキだが、二人は意気揚々と中に侵入していった。
 本来Fantasyに登場してはいけない二人は決してここには入ることができず、溜息だけついた。

「ユウキ、むてきんぐ……食いに行くか」

「ポ~リ~」

 むてきんぐは同情するしかなかった。
 今日は一晩中作者の愚痴に付き合うことになるのだろうか?
 だが、それも仕方が無いのかも知れない。
 彼はゆっくりと夜の繁華街へと入るのだった……。




テーマ : ポケモン
ジャンル : ゲーム

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Author:KaZuKiNa
KaZuKiNaといいます。
小説書いたり、ゲームプレイしたり。
あ、熱帯魚とかも飼ってます。
色々、自由気ままにやってます。

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