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ドクターマルスと365日 第6話 ドクターとユウキ

「う~……なんだか頭痛いあるね」

 海へ来て二日目のドクターマルスご一行。
 ドクターは海辺のテラスで潮風に当てられながらぐったりとしていた。
 まぁ、二日酔いという奴だろう。

「はい、ママ酔い止めロボ」

 心配そうに眺めていたアリサは酔い止めの薬と水を持ってくると、ドクターはそれを受け取り水と一緒に薬を飲み込んだ。
 少し気が楽になった気がする、あくまで気がだが。

「ありがとうであるアリサ、でもあんまり人前でママっていうのは勘弁ある」

 アリサにママと言われるのはドクターは別に嫌ではない。
 ただ、人前でそう言われるとどんだけ若作りなんだと思われそうで嫌だった。

「でも、パパは嫌がらないロボよ?」

「それは私が嫌である、ていうかあいつはどこ行ったである?」

 今朝ホテルで目を覚ますと、自室にいた。
 前日はこっそり教会ご一行の部屋に侵入して気がついたらどんちゃん騒ぎに巻き込まれて……そこから記憶は朝まで飛んだ。
 作者とユウキはこの時点で姿がなく、元々神出鬼没なふたりだけに探しはしなかったが正午まで全く姿を現さないのでさすがに少し気になっていた。

「やぁ、やぁやぁやぁ、ドクターマルス君、お久しぶりだね、だね?」

「う……この特徴的な喋り方は」

 ドクターマルスに冷や汗が走る。
 大体においてドクターマルスは人付き合いが悪く、どんな人間相手でも嫌な顔をするところがあるが、今回の相手は特別だ。

「おっ、お~? ドクター、この娘は誰かな、かな?」

 赤い燕尾服を着て、その上からマントを羽織った40代後半の初老男性。
 喋り方が異様に特徴的で、見た目も相まって一度見たら絶対に忘れられない。

「博士、この人だれロボ?」

「あ、これはこれは失礼、吾輩はデーラルと言う、そこにいるドクターマルスと同じダークプリズンの者だよ」

 そう言えばこの男とアリサは初対面だった。
 そう思うと説明するのも面倒だが、ドクターはこのデーラルの説明を始めた。

「ダークプリズンの幹部の一人、通称雷神のデーラル」

「ご説明ありがとう、ちなみにイスパニア出身だ」

「てめー英語使えるんだからスペイン語で言うなである、普通にスペインでいい」

「いや、しかし君とて母国をジャパンとはいわんだろう? 母国は母国の言葉で言うだろう? ろう?」

「はぁ……」

 だからめんどくさい、ドクターはただでさえ深い酔いの後遺症もありこんな面倒な性格の奴を相手するのはめんどうだと頭をテーブルに擦りつけてうなだれていた。

「む? 妙に疲れているね、るね?」

 疲れている……といえば疲れているだろう。
 ぶっちゃけ二日酔に加えて面倒な相手の応対だ、疲れがないといえば嘘になる。

「たまたま遊びにきたわけであるまい? さっさと要件言いやがれであーる」

 ドクターが素っ気無くそう言うと、突然ドクターのもたれるテーブルに書類の束が投げられる。
 疑問に思いながらも、重い腰を持ち上げて書類を手に取るとその内容をパラパラと確認した。
 気になったのかアリサも横から覗いてきた。

「……ほぉ、ダークプリズンの行動予定表であるか」

 それは最初のページでは今年下半期のダークプリズンの行動予定表であった。
 つまらないが一応確認しないわけにはいかないのでひとつひとつ確認するが特に内容の変化は上半期報告書の時点と違いはない。

「まぁ、要点としては二つほどあるがその両方それに書いてある、ある。では、吾輩は忙しいので行かせていただくよ、くよ?」

「さっさといきやがれである」

 オーデンはそう言うと踵を返して海辺の方へと向かっていった。
 姿が見えなくなるとドクターは陰険な顔をして。

「あの野郎こんな糞暑いところで燕尾服とはナンセンスなやろうである」

「博士に言えた義理じゃないロボ」

 たしかにオーデンの格好も真夏の太陽の上では暑苦しくて仕方がないが、ドクターもドクターでいつものように白衣を着ているので十分暑そうだ。

「……ん? 私とオーデンの野郎の作戦内容?」

 ドクターは1ページ1ページをしっかり確認していると、指令書の中頃に興味深い物を見つけた。

「どうしたロボ?」

「オーデンの野郎が今日このバーバラシティで作戦があるらしいである」

 その詳しい作戦内容は機密事項扱いであり、ドクタークラスの幹部格では閲覧不可の内容だった。
 元々ドクターもダークプリズンの幹部ではあるが、各位はオーデンの方が上位であるためこれは仕方がなかった。

(ふむ、バーバラシティはそれほど重要な場所ではないはずだが……まぁいいである)

 ただ、この指令書に書いてあったのはバーバラシティでオーデンの作戦行動に対するあらゆる手助け妨害を禁ずるものだった。
 つまり孤立させて放っておけということ。
 よほどセキュリティの高いミッションなのだとわかる。

「私たちはどうすればいいんですます?」

「アルセウスのプレートの回収が書いてあるあるな」

 アルセウスのプレート、数ヶ月前地球上空でダークプリズンの現人神マスタープリズンとアルセウスの戦いの際、敗れたアルセウスはプレートとともにミレリア地方アークスシティへと降下、プレートをすべて失い現在に至る。

「プレートの回収がダークプリズンに必要なのであるか?」

 気がつけば自身が深酔いだというのも忘れてドクターは真剣な面持ちで書類と面向かっていた。
 プレートの効力はすでに報告されているし、もちろんそれそのものが与える恩恵は大きい。
 しかし、アルセウスのプレートの影響力が大きすぎて、その周囲にまで影響を与えてしまう。
 正直、ダークプリズンが保持するにしても危険性は高いと言えた。
 とはいえ、たしかにアルセウスのこれ以上のパワーアップは危険極まりないといえる。
 しかし一度はあの現人神はアルセウスを倒している、それならば捨ておいても大した問題はないのではないのか?
 ふと、そんな風に考えていると、聞いたことのある声が突然響いてくる。

「絶対反対!! なんであいつらに頼まないと行けないんだ!!」

 ドクターはその声を聞いた瞬間、不機嫌さを顕にした。
 どうしてこういうタイミングで奴らは現れるのか、頭痛が痛くて仕方がないと言う様子でドクターはその声の主達を睨みつけた。

「おめーらうるせーである、つーか何しに来た?」

 その声の主達はトモエとアルセウスだった。
 そう、ついさっきまで考えていた相手だ。
 敵を目の前にして平然としていられる奴はいない、奴は敵……宿敵なのだ。
 だからこそドクターは険しい顔で彼らを迎えた。

「ダーリン、どうしたんだロボ?」

「ああ、今日はちょっとドクターたちに頼みがあってな」

 となりのアリサは気軽に話しかけるが、この関係はなにか間違っている。
 ドクターはさらに目を細めた。
 昨日の時点ならば怒り狂ってトモエに襲いかかっていただろうか?
 だが彼女も馬鹿じゃない、こんな場所で暴れることの無粋さも十分知っている。

「トモエ~、ついに頭が壊れたあーるか? なーんで、敵であるお前らの頼みなんぞ聞かないといけないんである?」

 ドクターはあえて嘲笑った。
 トモエたちの目的は分からないが、所詮は自分もダークプリズンの一員、あえて害なす者に対して義理を立てるつもりはない。

「トモエ、ドクター共に頼む必要などない! 行くぞ!」

 アルセウスも意見はあうのか、トモエの半袖の裾を口に咥えると引っ張っていた。

「まぁまぁ、聞けよドクター。これはドクターにも損な話ではないぜ?」

 しかし、トモエもまた中々に食い下がってくる。
 損な話ではない……という言葉を聞くとピクリとドクターの眉が動いた。
 利害関係を求めてきたか……中々面白い、ドクターはそう考えると少し聞く気になるのだった。
 その様子を見てか、トモエもドクターの表情から何かを感じ取り、更に言葉を続ける。
 「プレートが見つかったんだが取りに行けない。場所を教えるという報酬の代わりに、代価としてドクターの天才的科学力を貸して欲しい」

「ん? おいトモエプレートは……!」

 アルセウスが一瞬なにかを言おうとしたが、途中で口をふさいだ。

「……プレート、ねぇ」

 ……プレート、ついさっき与えられた自分の任務。
 これは好機なり、そう思えるが…。

「……断るある」

「ママ、どうしてロボ?」

 ドクターは手のひらを返して断った。
 さっき指令を効いていただけにアリサはどうしてなのか気になった。

「理由は簡単、誰が好きでトモエとアルセウスに力を貸すかであーる!」

 理由としては当然であった。
 だが、本質としてはあっているものの、細かいことを言えばもっと差異はあるだろう。
 まずひとつにドクターはオーデンが気にかかった。あいつに協力するのは癪だが今回ドクターたちはバカンスできたのだし、下手なことしたくはなかった。
 トモエたちにも積年の恨みはある、これも一因。

「ふん、こちらとしても頼りたくなど無いわ!」

 アルセウスも心底嫌と言う顔だ、よほどドクターたちに頼りたくないのかさっき以上に力を込めてトモエを引っ張った。

「第一、私がプレートを集めるのはお前らにパワーアップされると厄介だからであーる、お前らが集められないのならそれで結構!」

「え……でも指令書には……むぐっ!」

 ドクターは慌ててアリサの口をふさいだ。
 さすがに敵のトモエたちにこちらの作戦概要を伝えるわけには行かない。
 見ると、トモエはドクターの持っている書類に気づいたようで、なにかと覗こうとしている。
 ドクターは慌てて書類を裏返してテーブルに置いた。

「ほらほら、さっさとどっか行けであーる! 今日は見逃してやる!」

「ふん! 言われなくとて! いくぞトモエ」

「……仕方ない」

 ようやくトモエも諦めたようで、アルセウスに引っ張られてトモエはその場を去っていった。

「――ぷはぁ! ドクター本当にいいロボ?」

「癪である……なんか協力するのは癪である」

「……なんというか相変わらず天邪鬼だな」

 アリサの口から手を離すと、突然トモエたちが現れた方とは逆の方から聞き慣れた声が聞こえてきた。
 作者の片割れ、ユウキだ。

 結局のところはドクターの天邪鬼が原因なのは確かだろう。
 利害云々よりドクターにはそちらの方が大切であり、なんというか今は誰にも協力したくないという気分だった。

「ユウキさんはどこ行っていたロボ?」

「ん~、野暮用、ちなみに作者は今日一日は帰ってこれないかもしれないとさ」

「あいつ何やっているあるか」

 どうやら作者は出かけたらしい。
 どうでもいい相手だが、いざいないとなんだか寂しい気がして頭をポリポリ掻きながら空を見上げた。

「ふーん指令書ね」

 ユウキは、若干興味を持ったようでドクターがテーブルに置いた書類を覗き込んだ。

「お前でもみせられないあーるよ」

「そこまで野暮じゃないさ、で……今日はどうするんだい?」

「どうする……あるか」

 二日酔いもあり、あまり物事を考えたくなかった。
 大分気は楽になってきたけど、それでも考えたくないことはある。

「ママ、任務はどうするんですます?」

「かったりぃ~あるなぁ~……」

 本当にかったるそうであった。
 とはいえ、任務はこなさないと自分の居場所がない。

(ふぅん……)

 あまりに面倒そうな姿を見るとユウキはにやりと笑った。
 なにやら、このライアーキングよからぬことを思いついたらしく、早速頭を高速回転させる。

「やめとけやめとけ、俺らバカンスに来てんだし、お前が任務についてもどうせ失敗だ」
「なんであると?」

 ドクターがユウキに食いつく。
 あまりの予想通り反応にユウキは演技含めながらも微笑した。
 そのあまりに人を馬鹿にしたような顔にはドクターもムッとしてしまう。

「おめー本当にムカつくガキだなぁ」

「どうぞどうぞ♪ そんな言葉では痛くも痒くもないし♪」

「アリサ! スパロボ四号機の準備を! 吾輩任務につくある!」

 わかりやすいというかなんというか、ドクターは自分馬鹿にされるとすぐに行動に出た。
 ユウキもユウキだが、ドクターもドクターであるというところだろう。
 だが、アリサは嬉しそうに敬礼して直ぐ様海へと向かった。

「ユウキ! 私が出来る女だということ教えてやるである!」

 ビシッ! と人差し指をユウキにつきつけるとドクターはトモエを探して歩き出すのだった。




「さて……トモエは……いたであるな」

 トモエを探して10数分、ドクターはすぐにトモエたちを見つけた。
 もとよりテラスにはでかすぎるアルセウスの姿を探せばすぐに見つかる。
 ドクターはモンスターボールからむてきんぐを繰り出すと、足を止めてしばし考える。
 最初は普通に声をかけようかと思ったが、それは癪だとムテキングを出し、いやしかしこれはいくらなんでもと否定的に考えながら結局答えはやっちゃう方向に向くのだ。

「むてきんぐ、『でんじほう』」

「ポリ~」

 むてきんぐに『でんじほう』を命令するとそれはトモエたちに向けて放たれた。
 トモエたちは直ぐ様ドクターたちの攻撃に気づいて立ち上がり、回避する。

 そのまま一人と一匹は戦闘態勢を整えながらドクターマルス立ちを睨みつけた。

「不意打ちとはやる気らしいな……昨日は決着がつかずうやむやだったが、ここで決着をつけたいのか?」

 トモエはニヤリと笑った。
 八方塞がりの状態にどんどんとストレスはたまり、イラついていたのだろう、因縁掛けられたと思い少し気が紛らわせそうだと喜んでいるようにも見える。
 だが、ドクターマルスは戦う気など無い、そのため非常に面倒くさそうにトモエたちを見た。

「落ち着け、これはいわゆる挨拶代わりというやつであーる」

「挨拶だと? ふん……一体何を考えているんだドクター?」

 アルセウスは鼻で笑いドクターの様子をみる。
 ドクターとしては敵に素直にあいさつすることが出来なかっただけで、後は普段どおりだった。
 だが、それだけに殺気のないドクター達の様子にはトモエたちも違和感を感じてしまう。

「……協力してやるである」

「は?」

 それはとても小さな呟きだった。
 あまりにも今更協力するなどと言うのが気恥ずかしくドクターも声量が小さかったのだ。
 思わずトモエが聞き返すと、ドクターは顔を真赤に染めて叫んだ。

「だから! 協力してやると言っているであーる!」

「協力? そいつぁありがたいが一体どういう風の吹き回しだ?」

 トモエたちからすれば、急に掌を返したのだ、信じられないのも無理はない。
 だが、ユウキに馬鹿にされたドクターとしては絶対に見返してやりたい。
 しかし海底洞窟の場所は分からないのだからここはトモエに協力するしか無かった。

「……ふん、お前らには関係の無いことであーる。ほれ、こちらの気が変わらないウチに付いて来いである」

 ドクターは一瞬目を細めると、すぐに踵を返してトモエたちに背中を向け、歩き出した。
 今更ながらトモエたちに協力するのは気がひける。
 だが任務もあるのでそうは言ってられないのだ。

 トモエたちは訝しげにしながらも素直にその後ろを付いていくのだった。



「あ、ダーリーン! こっちロボーッ!」

 予定通り海岸へと行くと、準備を終えたアリサがドクターたちを見つけて手を振っていた。
 最初に声を掛けたのがトモエだというのはドクターにも癪に触ったがいちいち起こっていられない。
 とりあえず積年の恨みはまた今度果たせばいいとして巨大ロボットの前に立つと振り返り説明を行った。

「スーパーウルトラデラックスハイパーメガトンロボ四号機、別名水陸両用スバロボ、であーる」

 ドクターマルス自慢の巨大ロボットだ。
 その姿は一見愛嬌もありそうなバケツのようなデザイン。
 足は細いが走行面では問題はない、さらに腹部には大量の砲門を持ち、両腕は巨大ドリルとなっていた。

「こいつで行けば海の底どころか地球のコアまで到達してやるであーる」

「おい、ドクター……たしかにこいつなら海底に行けるだろうが洞窟はこんな巨体入らないぞ?」

 ドクターはそう聞くと、まぁ当然かと思った。
 さすがに今回の巨大ロボットは50メートルもあるサイズだ、そんな大きな洞窟があったら洞窟だと認識もしないだろう。

 万が一と思い、仕入れてきた酸素ボンベを懐から取り出すとそれをトモエたちに渡した。

「ふむ、ポケモンレンジャーも使っている小型ボンベ貸してやるである、入口付近に着いたら勝手にしやがれ」

「でも、ドクターたちはどうするんだ? 俺たちだけじゃプレートをゲットしちゃうぜ?」

「ふん、アリサとむてきんぐに向かわすである」

 ドクターはそう言うとコクピットへと乗り込む。
 機体の電源を入れて、ロボットを立ち上げようとすると。

「あ!おい! 俺達はどうすれば!?」

 どうすれば、というのはどうやって洞窟へ迎ということだろう。
 ドクターは上部ハッチを閉めながら。

「足にでもしがみついてろである!」

 ドクターはそう言うと巨大ロボットを動かして海へと向かった。
 ロボットは海へと入ると足を使うのをやめて、背中に背負ったバックアップのスラスターで水中を進んでいく。
 ほどなくして、洞窟らしきものは見つかった。

(ここで当たっているあるか?)

 ドクターは機体を止めてトモエたちの様子をみると、トモエたちは洞窟に向けて泳ぎだした。
 どうやら当たっているらしい。
 ドクターはアリサたちを見送るとさっさと帰投しようと思ったが、そんな時に限って。
 ビー! ビー ビー!

 突然警報が巨大ロボットのコクピット内に鳴り響く。
 何が起こったのかと思うと、機体が後ろからなにかに絡みつかれて動けなくなるのだった。

「い、一体なにが起こっているあーる!?」

 警報がうるさくなく、足の一本が折られた。
 絶体絶命かと思っていると、突然機体の後ろ側から大量のテッポウオの集団が泳いできてアリサたちを飲み込んで洞窟へと入っていった。

「あ、アリサ!? こ、このぉ!」

 ドクターは機体を激しく動かして後ろにいるなにかを引き剥がした。
 するとそこにはあまりに巨大なオクタンがいたのだ。
 一体何事かと思ったが、オクタンが絡み付いていたとは予想外。
 というより、これほど大きなオクタンそのものが予想外だろう。

 なんせそのオクタン、50メートルちかくの超巨大オクタンなのだから。

(一刻も早くアリサを救いたいであるが……くっ!)

 ドクターはオクタンに向けて火器類のセーフティロックを解除した。
 操縦桿のトリガーに手をかけて、スイッチを押し込むと、腹部に備えられた砲門が火を吹いた。
 大量のナパーム弾、魚雷、サブロック。
 大量の火器が巨大オクタンを襲う。
 だが、巨大オクタンはまるで必死にあがくドクターをあざ笑うように高速で泳いでそれらを回避してみせた。
 
 深く沈みこみ、オクタンは何かを狙う。
 何を狙おうと今度は後ろはとらせない、接近してくるのならこの巨大ドリルで一撃粉砕するのみ。
 ドクターは息を飲んだ。

 一拍静かな空気が流れた中、オクタンはドクターの巨大ロボットに急速接近した。

「こんのぉ! やらせはせんである!」

 瞬時に反応したドクターはその巨大ドリルを振りかぶった。

 次の瞬間、オクタンは黒い塊を吐いた。
 オクタンの『オクタンほう』だ、ダメージは大きくないがドクターの巨大ロボが揺れた。

「ちぃ! 目くらましなどぉっ!」

 『オクタンほう』はまるで煙幕なって水中を黒く染め上げる。
 何も見えないが、ドクターはドリルを振りかぶった。
 高速回転するドリルは水流を生み、渦潮を起こす。
 一瞬で墨は払われ、視界は確保されたがその先にはオクタンはいない。

 直後、またもやドクターの巨大ロボットが揺れた。

「しまった!? また後ろ!?」

 オクタンに一瞬の隙を突かれてまた背後を取られてしまった。
 身動きがとれず、ドクターは必死に操縦桿を動かそうとするが、あまりに強靭な力に巨大ロボットの体はビクともしない。

「動け! 動けであーる!!」

 必死に動かし、抗おうとする。
 だが、突如ロボットの右腕が折られた。
 柔らかい関節部分を攻撃されると、頑丈な鋼鉄の体もあまりに脆い。

 直後爆発、どうやらオクタンの放った『はかいこうせん』がゼロ距離で放たれたようだった。

 ビー! ビー! ビー!

 激しく警告音がなる。
 さっきの爆発のダメージで機体の電力が不足して大半の機能を停止しようとしていた。
 やばい、おまけにコクピット内に海水が侵入を初めていた。

「や、やばいである!? このままでは!?」

 あまりに絶体絶命の事態についにドクターも生命に危機を感じた。
 そんな時、突然頭に声が響いてくる。

『ドクター、そのまま機体を出ろ』

「ユウキ!? どこから!?」

 突然ユウキの声が響いてきたのだ。
 どんな原理かはわからないが、ドクターは根っからの性分か今の状態も考えずに考察を始めてしまう。
 だが、そんな様子をユウキも感じてか。

『生きてりゃ後で説明してやる、だから早く外に出ろ!』

「くっ! 何をする気か知らないあるが、ちゃんと責任とれあるよ!」

 ドクターはそう言うとコクピットハッチを開けて、海の中に出た。
 口を手で多い、目を細めて海中に出ると、そこには見たこともないポケモンがいた。
 いや、資料で見たことがある……そうそれは。

(海の王者……カイオーガ!?)

 なんと、目の前にカイオーガがいた。
 オクタンと比べるとずいぶん小さく見えるカイオーガだが、ドクターから見れば遥かに大きい、そしてこのカイオーガいいも知れぬプレッシャーを放っていた。

 カイオーガはゆっくりとドクターの真下に潜ると一気に浮上を始めた。

 バッシャァァン! と音を立てて海面から飛び上がると、そこはさっきまでの晴れ模様は嘘のようだと嵐が起きていた。
 ふいに、ドクターの体が浮遊感を覚える。

 当然だろう、カイオーガにドクターの体ははね上げられたのだから。

「て……うそぉぉって!?」

 すぐに自由落下を始めるドクター、空中では為す術がないがじたばたと暴れていると突然なにか自分の体を持ち上げられた。

「タリ~」

 チルタリスだった、ユウキのポケモンだろうか?
 チルタリスが足にドクターの服をひっかけて嵐の空を飛ぶ。

 その様は、街の中に佇むユウキも見ていた。

「よし……ドクターは救えたな……しかし、あんなオクタンがいるとは世の中広いな」

「まるでダイオウイカですねマスター」

 ユウキの隣にはサーナイトが佇んでいた。
 メスのような風貌だがオスのサーナイトは静かにその超エネルギーを使う。

「カイオーガ、あんなのに暴れられたら面倒だ、叩き伏せろ」

 ユウキがそう言うと、サーナイトを介して遠くのカイオーガにテレパシーが送られた。
『よかろう! 眷属ごときに遅れはとらん!』

 宙を浮いたカイオーガはそのまま頭から水中へと潜る。
 そこには邪魔をされたというような表情のオクタンが待ち構えていた。
 カイオーガと比べて五倍近い巨体……だが、その戦闘は一方的だろう。

 オクタンはその柔軟な体をつかってカイオーガに絡みつこうとするが、カイオーガは海流を操りオクタンの自由を奪って足の一本に噛み付いた。
 まるで引きちぎりそうな強靭な顎で噛み付かれるとオクタンも痛みを感じて激しく暴れた。
 そのままカイオーガは噛み付いたまま海面へと上がるとオクタンを空中へとぶん投げる。
 巨大オクタンの体が宙を舞った。
 そこに繰り出されるのは。

 ピッシャァァン!!

「オーークーーーッ!?!?!?」

 カイオーガの操る『かみなり』だ。
 『かみなり』がオクタンを直撃する。
 一瞬して何億ボルトもの凶悪な電圧をその体に帯びたオクタンは気を失ったのかダラリとして海中へと沈んでいった。

 その様はユウキも見ていた。
 グッジョブと回収へと向かおうとするが、直後ユウキの体が動かなくなる。

「……昼行灯のくせにどういうつもりだ?」

「……かったる、なんの真似だ」

 動けないユウキの後ろに一人の男が立った。
 作者だ、いなくなっていた作者は険しい顔をしてユウキの後ろにたったのだ。

「俺達はNPCだ、余計な手出しは無用」

「……知ったこっちゃ無いね、あのままじゃドクターは死んでいた、それを助けて何が悪い」

「うぬぼれるなユウキ! お前の行為はNPCの権限を超えている!」

「ち……」

 ユウキは舌打ちした。
 本来ユウキも作者もこの世界にいていい存在じゃない。
 だからこそ、この世界の調和と秩序を護るために不干渉で無ければならないのだ。
 だが、ユウキには納得できないこともある。
 少なくとも、彼には救える命を見捨てるなんてことは絶対にできない。

「もどるぞユウキ、これ以上は調和のバランスを崩す」

 作者がそう言うと、ユウキと作者の姿がすけ始めた。
 ユウキの連れてきたポケモンたちも体はゆっくりと解けるようにその世界から姿を消してしまう。


「……なんだったであるか?」

 チルタリスに釣れられて、陸地へと下ろされたドクターはカイオーガと巨大オクタンの戦いを呆然としながらみていた。
 気がつくと空は晴れて、戦いは終わった。
 そういえば、ユウキはどうしたのだろうか?

 ドクターは海岸を走りまわり、ユウキの姿を探したがユウキの姿は見つからなかった。
 当然だ、ユウキはもうこの世界にはいないのだから。

「……アリサ、無事であるか?」

 やがてユウキをさがすのに諦めたドクターはアリサとむてきんぐの身を案じた。
 祈るなんて真似はしたくなかったが、今回ばかりは神に祈らざるをえない。

 ……やがて、トモエたちは帰ってくるだろう。
 だがその姿はきっと満身創痍だろう。
 彼女はただ、待つことしかできなかった。

テーマ : ポケモン
ジャンル : ゲーム

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KaZuKiNa

Author:KaZuKiNa
KaZuKiNaといいます。
小説書いたり、ゲームプレイしたり。
あ、熱帯魚とかも飼ってます。
色々、自由気ままにやってます。

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